明るい闇
黒岩に会った数日後だった。日楽新聞はやけに慌てた様子だったのだ。卜部恭介がなくなったということが入ったからだ。加賀美は卜部恭介の死がなかったら来なかったが、死んだとなると来ざる負えなくなってしまう。諏訪が物々しい雰囲気で言った。
「警視庁が明かしたのは殺されたということだけだ。ブラックリストでジャッジマンからの脅迫状はただの何かの前触れかと焦っていて卜部恭介の警護がなくなっていたという話だ。金城は警視庁の会見に張り付いておけ。」
「はい。」
「お前には疑いがかかっていないことは承知だ。」
ジャッジマンと名乗る人からの脅迫状はただのだまし道具として扱ったとすればと考えてしまうのだ。金城は自分の席に座って会見に向けての準備をしているようだった。諏訪の顔色が変わらないのは事件の発展しないことに加えて、事件だけが積み重なっていくことなのだ。
「加賀美。」
「はい、どうしました?」
「お前は黒岩隆吾という弁護士の取材をしろ。卜部良助のいた弁護士事務所にいたとなると取材中に漏らす可能性もある。いた事務所には恩恵はないがな。・・・卜部良助のいた事務所を当てて接触しろ。」
諏訪が言っているのはブラックリストの事件だけの角度だけではなく、卜部の事件を見ることで見えてくるものが浮かび上がってくるのではないかとなってくる。卜部良助と検索をかけたところで小学生の時のいじめがひどかったことでいじめていた子が自殺してしまったことくらいだ。
「彼とコンタクトを取れるようにしてみます。小さな事務所だといっていたので名前を知らせるためにはいいと許可してくれるかと思います。」
加賀美は休憩スペースへと向かった。誰もが仕事中ということもあってあまり人もいない。名刺入れに入っている黒岩隆吾と書かれた名刺の事務所の電話をかけた。緊張のほうが先走ってしまうのだ。
「もしもし。」
「こちら黒岩法律事務所です。」
事務所の中にある事務的な言葉があふれているように思った。
「日楽新聞の記者をしています。加賀美仁といいます。黒岩先生を呼んでいただけませんか?」
「わかりました。少々お待ちください。」
若い男性の少し甲高い声が残った。小さな事務所でパラリーガルを雇っていないとなると事務をしているのだろうか。それとも最近入った人なのだろうかと思ってしまう。それか弁護士を目指している学生なのかもしれないと思ってもしまう。電話口で少しガチャガチャと音が鳴った。
「もしもし、変わりました。黒岩隆吾です。」
「初めまして、日楽新聞の記者をしています。加賀美仁です。」
「あぁ~加賀美さんですか。取材の話なら乗りますよ。事務所も新しい話が持ち上がっていないので・・・。」
「そうですか。日程についてはスケジュールを出してください。」
「わかりました。」
黒岩の明るい声と酔っていたとしても覚えている能力を驚いた。