燃え盛る炎
「あと、弁護士事務所で噂になったのは障害をもってしまったことで依頼者が断ってしまったケースがあったみたいなんですよ。所長はそれでもどうにかいさせようとしていたようですけど、過去のことが浮かび上がってしまってかばいきれなくなって解雇したようですよ。」
「そうなんですね。大手企業の顧問弁護士をしていたとなるとかなりの痛手になったんじゃないですか?」
「思うんですよ。それから卜部良助という名前を聞かないとなると弁護士という資格を使わずに生きているとしか思えないんですよ。障害があることが事実なら公にならないことを選んでいるとしか思えないんです。」
黒岩は以前いた弁護士事務所に対してのことをぽろぽろと漏らしている。徳利に入っていた酒がなくなったのか、彼はおかみさんに言ってお気に入りの銘柄を入れてもらっているようだった。彼は新しい徳利が入ってうれしそうにしているようだった。黒岩は元検事ということもあって刑事事件の裁判を担当することはなく、ただ民事をしていたことが嫌だったのだろうか。それとも検事でいることも悩んだじゃないのかと思ってしまった。黒岩は飲んで話しているうちに酔っぱらってきたのだろうか、表情としても和やかになってきた。
「加賀美さん、そうです。日楽新聞にのっけて下さいよ。うちのさえない事務所ですけど。」
「構いませんよ。黒岩さんから改めて連絡をくださったら構いません。今の状況を考慮すると何言われるか困りますから。」
加賀美は一段階待つことの重要性を感じた。弁護士として仕事が少なくなってきてしまっているので、相談者を上げたいのだろうと思った。警視庁にいったことも柄でもないということはたびたび来ないということになるのだ。そういうことになると、現在は大きな企業の顧問弁護士をしているのだろうか。
「今は何の事件を担当しているんですか?」
「それはですね。ブラックリストの容疑者として顧問をしている会社の社長が疑われたのでそれで向かったんですよ。取り調べは任意ですよねっていうだけですよ。取り調べをするときは同席を求めるくらいしかできません。」
その相手の行動まで監視をしているわけでもないので、かばいきれないことも多いのだというのだ。警察の動きとしてもあくまでも候補としかなっておらず、刑事は口をつぐむことも多かったのだという。処刑台とブラックリストを未解決事件のままにしてはならないという警視庁全体のものがあるのだという。刑事には士気が下がってしまっている感じが否めなかったと彼はぼやいた。




