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落掌  作者: 実嵐
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決意と責任

「社会部になったのは申請をしたからですか?」

「俺か。いや、違うんや。会社の配慮にすぎん。親父の事件を知らんわけがないけんね。嘘を言うつもりもない分、事件が起これば寄り添い、事実を明かすのが使命やと思ってるんや。せやから、警視庁の記者クラブにいても大丈夫なんよ。周りの人間が壊れていなければやけどな。」

金城はそう言って笑った。寂しい笑顔ではなくて、心からの笑顔であるようにも思えたのだ。おかみさんはその姿を見て心からほっとしたのか、ほほえみを返していた。加賀美には思うところがあった。処刑台やブラックリストのサイトが生まれたのはきっと何かの思惑があったのだろうから。ジャッジマンに疑いをかけたところできっと証拠も挙がっているわけでもないのだ。

「加賀美、いいか。お前には期限付きなんや。その時までに解決するとも言えへん事件に巻き込まれてしまった可能性がある。後悔が残る結果になった時は俺が責任をもって解決するまで追う。」

「いいんですか?」

「構わん。俺には親父の事件で救われたんや。姉貴も口では言わへんけど、立ち止まった時にお前の親父に会いに行ったんや。何処かで喜んでくれて助けを呼んでも答えてくれるってわかっとるからや。せやないと、やっていけないものがあるんや。人って単純で複雑な生き物やし、助け合わな生きていけへんからな。」

小さな恩返しやと彼は言った。金城正一はきっと事件の時に交番から飛び出して行って卜部恭介を見たときに思ったではないのだろうかと。救うべきで助けを呼んでいるのではないかと。事件を起こしたのが分かっているのでそれすらも止めたかったのではと思ってしまう。人の気持ちを量り知るのにも限りがあるが、それすらもしないとうまくいかないのだ。嘘をついてまで守るべきものすら間違える政治家も現れてしまっている。声を上げても無視をして独裁を目指しているのではないかと思ってしまう。人の死より重いものも軽いものもないのだ。わからないのならと問いかけることもできないのだ。手を伸ばして叫んだとしても残っているのは小さなこだまをする声だけだとしたらむなしいだろう。小さな叫び声も聞いてもらわないと救えない命があるとすれば守るように動かないとダメなのだと思ってしまうのだ。

「まぁ、気張らずにやっていき。俺も情報を流す。」

「有難うございます。」

「仲がいいことはいいことだわ。ちっぽけな祝いをしていいかい?」

おかみさんが聴くのでうなずくと彼女は豪勢な料理を出してきた。確かに小さな祝いだが、決意として残っているのだろうから。

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