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落掌  作者: 実嵐
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入り混じる声

「卜部はおぼちゃまとして周りが扱うよりかは兄のほうを扱っているようにしか感じへんかったな。それくらいしかないやろしな。」

「卜部恭介は殺されるために出てきたとすれば弁護士すらも信用していない感じに見えますね。無駄に信頼していないようにも見えるんですよね。卜部にとって無期懲役というのは不服だったんでしょうし。弁護士に言いくるめられて裁判をやったとすれば出てきて殺されるのがいいと思っているのでしょう。」

加賀美はそう言って漏らした。卜部にとって兄の良助が迎えに来ることがあるとも思えないのだ。模範囚としていたとしても刑務所でとどまっているよりも死ぬときを待っているのだとしたら出るのがいいのだ。

「今日は、お客さんが来ませんね。」

「そりゃ都合にもよりますよ。こういうのは水物だとわかってますから。」

バイトをしている若者もいない感じがある。家族を口説いてまで探した店なのだ。それをやめるとも思えないのだ。彼にも経験が足りないものがあったりするのだろう。

「バイトの子は?」

「彼はコーヒー豆を見てもらっているんですよ。海外まで行けるお金も持ち合わせていないこともあって近場のコーヒー豆を扱う店に行って仕入れることで少し学んでもらっているんです。彼は将来は世界で認められるバリスタになりたいとか最近、言ってましたよ。」

ふと、窓を見ると少し雲に赤く染まっているのだ。かなり長居をさせてもらったのだと思った。須藤にコーヒーの代金を払って2人は出て行った。此処までくると行く当てまでは決まっていないのだ。金城は知り合いの人がやっている居酒屋に行くかといってきた。加賀美はそのまま、受け入れた。新聞社からも近いこともあってよく通っているのだという。

「社会部の連中にはチェーン店の居酒屋によく行くんや。居場所がばれるのが厄介やからな。」

細道に行くとビルや家に囲まれているようになっているようになってしまっている現実を知るのだ。心の狭さを感じるのもやむ負えないとも言い切れないこともかすかにあるのだ。金城は足を止めずに歩いている。きっと幼き頃に受けた衝撃もあったのだろう。警察に入らずに新聞社の記者として追うのにも理由があるような気がした。彼が足を止めた場所は古びた、町からも置いていかれてしまった感じがにじんでいた。引き戸の独特な音が鳴った。

「いらっしゃい。あら、伯君が会社の人を連れてくるなんて珍しいね。」

そういっているのはおかみさんなのか、カウンターの中で料理に囲まれている。

「よくわかったんな。彼は最近社会部に異動になって来た加賀美仁や。姉貴も俺も昔、世話になった人の息子やさかい。いいかなとおもてな。」

金城はそう言って奥のテーブル席に座った。

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