証を探す
須藤哲司という男性はすがっているように思えた。警察であっただけではと思ってしまえる。これを加賀美が全てを抱えるには少しばかり重いようにも感じてしまう。加賀美が悩むようにしていると羽鳥が他の部下に指示を終えて気になったのかこちらに現れた。
「どうかしたのか?」
「いえ、諏訪さんから渡された資料の中に入っていて当時の部長に行かせてもらえなかったとか言ってました。だから、どんな内容なのかと思ったんです。すると、処刑台について書かれているんです。・・・部長は聞いたことがありませんか?須藤哲司という名前を。」
羽鳥は手にもっていたコーヒーカップを加賀美の机に置いて手紙を受け取ってまじまじと見た。達筆な字を見ている限り、真面目な人だったのではと思ってしまうほどだった。
「聞いたことはあるな。諏訪は部長にこぼしたらダメだって言われたから黙っていても解決しないし、処刑台というサイトで起きた事件はヒーローのように取り扱われてしまって警察も手に負えなくなってしまったんだよ。」
須藤はその当時は定年前というところだったこともあって社会部に漏れるほどの人だった。羽鳥に相談された名前だったのだ。諏訪は社会部だけでとどめるのも忍びないとも思うようにもなっていた。文化部と装って会う計画もあったが、誰か上司に漏らしてしまってあっけなく終わってしまった。
「だから、諏訪は加賀美に託したんだよ。お前なら気になっていくんじゃないかってね。」
「俺はそんなすごい人間じゃないですし、たまたま連載になって受けたネタがあったに過ぎないんですよ。それでも評価してくれる人がいるってうれしい限りです。」
加賀美が言い終わると彼はコーヒーカップをもって加賀美の肩をたたいて去っていった。彼による励ましであることはわかっている。手紙を眺めた。熱心な刑事だったじゃないかと思った。諏訪に迫ったということは警察は話したところで動かないとわかっているということになる。隣にいた同僚が声をかけてきた。
「なんだ。お前、社会部に行って最前線で動くっていうのか。いいご身分だな。」
「お前こそ、皮肉を言う時間があるということは暇だと嘆いていることになるんだ。くだらないことを漏らす前に進めるほうがいいじゃないか。俺の後釜にすらなれなかったんだろう。」
同僚はわかりやすいのだ。自分の都合がいいと皮肉を言うことはないのだが、皮肉を言うのは何かしら抜擢にされなかった証なのだ。