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落掌  作者: 実嵐
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偽りの代理

金城は定食屋で少し黙ってみていた。加賀美はそこでわかることもあるのではないかとも思った。金城が卜部について調べていないとも思えなかった。きっと調べたのだろう。

「金城さんは卜部恭介について調べたんですか?」

「あぁ、調べたで。社会部に配属が決まって他の事件調べながらや。・・・まぁ、卜部も父親にかなり雑な扱いを受け取ったわ。」

金城が聞き込みにいったのは当時、卜部家が住んでいた自宅近くだった。週刊誌も取り上げたりもしていたが、何処か不自然に思って聞き込みを始めたのだ。卜部の日常とは散々だったともいえる。

「卜部の父親はな、区議会議員だったんや。とは言っても祖父の経歴を受け継いだだけや。2世だとか言って言われていたらしい。息子が2人生まれたことを喜んでいたのは最初だけやったいう話や。」

区議会議員になったのも祖父の後押しがあったからで、周りから望まれていなかったことを卜部は知っていたのだ。卜部の兄は勉強ができるが、卜部自身はどちらかというとスポーツができたのだ。卜部の父親は卜部商事という会社の社長を務めていて兼任しながらとなっていた。

「卜部恭介が小学生のころにな、いじめが起きるんや。そのいじめをしていたんが、卜部の兄や。それを卜部がやったとして父親がいじめられていた子に謝らせたんやよ。」

卜部の父親は卜部恭介がやったことにして、教師も黙認していたのだという。だが、いじめを受けていた子供は謝って来た相手が違うことは当事者でわかっているうえにいじめは収まらなかった。いじめが続いても怒られるのは恭介だけだった。兄は怒られることなく過ぎていくのだ。

「一番大きな事件は中学生の時や。恭介が受けたがった高校を父親が反対したんや。恭介は当時、野球をしていていい成績もあったから文武両道の学校に行こうとしたら父親から怒られたらしい。それで言われたのは野球部があっても弱小の高校に入れさせようとしたんや。その上、兄が回りに風潮したんやからな。」

卜部の兄は恭介にとってはよく思えなかっただろう。逆らわない兄を見てきっと同じ道を進むと思ったに違いない。

「それで受験に失敗すれば怒るんやさかい、卜部恭介にとってはたまったもんやないで。」

引きこもりを誘発したのは父親であることも確定している。卜部の母親はきっと何も言えなかったのだろう。その兄は弁護士となって大手の事務所に入っていたが、卜部恭介の事件が起きたうえに障害が残るからだになってしまって事務所を解雇されて今はどうなっているかはわからないと彼は言った。真実を日楽新聞は載せたのだ。余計に卜部の兄を雇いたがらないようにもなったのだ。

「卜部恭介の兄の名前は?」

「卜部良助。まぁ、この2人が会うとも思えん。」

彼は告げるように言った。卜部にとって残酷な人生を過ごしていたのだろう。逃げ場があったのだろうかと思った。金城正美のように少しでも逃げ場があったのか。

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