無念と誇り
「姉貴はさ、捜査一課の監視対象なの?」
「ならないと思うわ。だって、いくら人員を割いてもサーバーのこともあってね。特定もできないのに勝手に決めつけて縛り付けるわけにもできないだろうから。まぁ、動いているだけじゃないかしら。」
警視庁捜査一課は所轄も含めて大きな団体になったとしても人すら見つけられないままなのだという。犯人に対するめぼしもつかない状態らしい。弁護士事務所とか関係者は最初のころには向かっていて今更向かってもしょうがないと思っているらしい。
「捜査一課の人達は士気が下がってしまっているのよね。たまたま行くこともあるから思うのよ。組織のためとか言っているわりには何もしていないのよ。だから、お父さんは交番を好んだのよ。その時にあった対応が求められることもよかったのかもしれない。」
「親父らしいな。捜査一課に声をかけられても断っていたっていう話だから。」
金城にとっても誇りなのだと思った。その父親を殺した卜部を許すとも思えないが下手な行動はしないだろう。長年、警視庁記者クラブに配属になっていて警察の動きは嫌というほど知っているのだ。動くとすれば法律を知り、欺く人間なのかとも思ってしまった。
「たまたま聞いたんですけど、弁護士じゃないかと俺は思うんですよ。」
「それは何処かで思っているじゃないかしら。刑事が弁護士に話を聞くときに守秘義務とのせめぎ合いになるでしょうし、弁護士に会うことを嫌がる刑事だっているの。皮肉を言われて終わるだけとか暇なのかといわれて嫌になるわ。」
刑事にとって弁護士という職は当たりが強かったりするので、そこまで聞けなかったりするのだろうと思ってしまった。おいしい定食を食べ終えたのだ。昼休みといっても時間もそこまでなかった。
「姉貴、昼休み終わるやないの?」
「そうね。戻るわ。」
正美はそう言っていなくなった。警視庁の経理担当になったと聞いたときは反対したのだろうか。父と同じところになるのだ。
「金城さんはお姉さん思いなんですね。」
「そうやない。おふくろも最近、なくなってしもて、たった2人の家族になったや。せめて、助け合って生きていかないといけないんや。」
誇りを胸に警察官になった父親の無念を晴らす必要もなくなったのだとも付け加えた。裁判になればそこで言えることも限られる。判断ができるものでもない。ただ待つしかないのだ。そこで新聞社に入って同じような人に会えばわかるのではないかと思った。