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落掌  作者: 実嵐
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主のあるもの

その場は騒然となってしまう瞬間はあったが、あくまでも形ばかりで取り繕っている人達になだめられていることも何となくわかっているのか、彼は家を出て行った。

「これでよかったんですよ。此処はただでさえ立場もあって痛い目を受けたりしやすいのに、あの子が当主になってしまったら笑われてしまうと思ったんです。この土地を人知れず売ろうとしたことは本人は忘れてしまったのかもしれないですが・・・。此処にいる人達にしてみれば傲慢な態度を取ったと思われるだけですから。」

彼女の言葉からは金の言葉は挙がって来ないが、きっと息子の提案を受け入れたほうが手に入る額が多かったのかもしれない。だが、何も告げずに実行することで大ごとになったのを見て息子に手を引いてもらうことを選んで見た目で納得してもらうとしているのがかすかに見えた。仁はそっと大きな庭のほうを見た。どっしりと構えた松の木のように堂々としていないのだと思った。みなに納得してもらうための形ばかりの芝居なのだと思うしかなかった。仁の着物が少しだけ足元を擦った。

「貴方はそうやって人の批判を取り除いてきたんですね。だけど、いずればれますよ。」

「こら、仁。いらないことは言わないほうがいいぞ。」

「いいんですよ。仁さんが言っているのが正しいんですから。直人を当主にする話は主人が死ぬとなった時に親戚に頼みこんで用立ててもらったんです。あの子も勝手に土地開発なんかに此処らあたりの土地を売り渡す計画なんて立てません。その計画を受けて許可をしたのは死んだ主人なんです。」

彼女は懺悔するかのようにぽつぽつと語り始めた。知り合いに土地開発の会社をしている人がいたのだ。その時に全くといって土地開発するような土地を見つけることができず、金が出来なくて借金をしていることを聞きつけたのだ。

「あの人もお人よしですからね。自分の土地が活用されるのならと渡したんです。・・・その渡した土地の部分が全て人が住んでいるところで空き地が含まれていなかったんです。それであんなことになったんです。」

地主はきっと大騒ぎになったのを知って焦ったのだろう。知り合いにやっぱりやめてほしいと懇願してやめてもらったものの誰が計画を立てたのかということが噂が浮かんでしまったのだ。それを取り消すために息子に悪人の役をしてもらうことで火消しに走ったのだ。それで今に至るわけなのだ。彼女の中にも罪悪感に押しつぶされそうになった時期が長かったのだという。

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