ゆくべき場所
黒岩に会ってから数年が経った。拘置所での出来事を時折手紙で送ってくるようにもなっていた。彼に待ち受けているのは裁判しかない。数年たった今でも裁判を開かれるのに時間がかかる現実がある。加賀美は実家の寺で庭を眺めていた。
「仁、依頼を受けたぞ。」
「何処ですか?」
「別に親子なんだから、敬語を使わなくてもいい。特に今は家なんだから気にしない。」
幸之助はそっと横に座って同じように庭を見つめた。修行といっても大きな修行が終わっていることもあってか、幸之助は安心しきっているようにも思った。彼が被害者遺族や加害者に会っていた意味が分かった気がしたのだ。
「この近所の地主だ。その地主の息子が扱いにくいことで有名だ。有名な企業で働いていることも関わっているんだろうな、偉そうなんだよ。地主は優しかったこともあってかかわって来たこともあるが少なくなってしまうな・・・。」
地主の息子は金に細かく言ってくる上に少しでも不都合が起こると脅すような口調で言ってくるのだという。周りの人は霹靂しているので放っていることもある。氏子も幸之助に漏らす言葉の大きさが分かっていることもあってこの葬式をもってかかわらないと心に決めているのだという。
「祭りがあると伝えても地主はきても、その息子は現れないんだ。まぁ、仕事があるから仕方ないにしろ、大きな顔をして帰ってくるばかりでろくな事をしようとしないんだ。土地開発みたいな企業に声をかけてこの地区を勝手に開発しようとしていたことがばれて人知れず追い出されたときもあったような人だ。」
金に目がくらんだだけだとその場では言っていたらしいが、不動産屋に聞いてみたところその息子が持ち掛けてきた話で反発を食らうこともわからずに頼んだとも言って平謝りをしていなくなっていたのだ。
「だから、その人が継ぐようなら出て行くとも言っている人もいるさ。けど、一人息子っていうこともあって手立てもないわけだ。この辺ももしかしたら変わっていくことを求められているのかもしれないな。」
時代の流れにともっていくことを背負っていくと耐えられないものが起きてくるのだ。放り出された人も巻き込もうとするならじっくり巻き込んでいくのが正しいと思うのだ。
「最終的な決断は俺に任せるっていうことか?」
「この寺だけの話だ。誰もが残ってほしいといわれる寺にはなったが、それでも立ち行かなくなってくる日も来るんだ。逃れられないものがあるんだよ。逃げたとしても・・・。」
幸之助はそう言って静かに言った後に隣からいなくなった。