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落掌  作者: 実嵐
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乾いた心

幸之助が寺の住職を継ぐために何かをしていたことを詳しくは聞いていない。それでも全うすることが意味を成すことを教えてくれているようでもあった。

「卜部光明のこともマスコミは騒いでいるんですか?」

「えぇ、まさか息子の被害者のように扱われた人間が人を殺していたとなると目の色変えますよね。だって、区議会議員をしていたうえに裏取引をして拳銃の密売にも加担していたことも出てきています。笑えないんですよ。」

卜部の悪事は日ごとに明らかになっている。そこでかかわっている議員の名も警察に声がかかっているのだという。荻元光の事務所を先に探っていることもあってか、いろんなところに保存してあったデータが上がってきているのだ。隠し口座があってそこで国会議員の名前も挙がっているので否定をしているらしいのだが、全く効果をなしていないのだという。

「此処で最後の時まで全うしますよ。加賀美さん。」

「黒岩さん、何時俺たちが会えていたら貴方の殺人という行為を止めれていたでしょうね。」

彼はアクリル板から見にくい角度で下を向いた。彼はきっと仲が良かった友人の死をみなそこまで悲しまなかったのだろう。景色の一部のようにしか思えなかったのだろうか。

「そんなことを言われたのは初めてです。あいつだってパソコンの技術をもっていてもクラスメートはあしらった態度しかしなかったんです。いじめの標的にされたのは、ただ教室の角でパソコンの本を読んでいることを面白がったというよりかは遊び半分の出来事が始まりなんです。」

その彼は目立った行動は嫌がった。そのクラスのリーダー的な存在の人物が目に付けていたのだろう。いじめが悪化していくうちに彼は黒岩に愚痴を漏らすかのように言うようになった。

「学校にも来なくなっていましたし、時々家にいっては会いに行ったんです。無理に来なくてもいいからって言ったんです。」

それでもそのリーダーは家までくるようになった時には家を飛び出して商業施設に逃げ込んだのだ。それでも迫ってくる恐怖に耐えきれなくなってしまって自殺をしてしまったのだ。彼が残したメモにはいじめの主犯格や今までされたことがはっきりと書き残されてあった。学校はそれを握りつぶした。残ったのは彼が残した黒岩にあてたメモだった。

「俺は何もできなかったと思いました。父親のことも母親のことも何もできていないのに・・・、その声を上げても聞いてくれないとわかっていたので処刑台というサイトを作ったんですよね。」

寂しい言葉に悲しき現実をわかっていたとしても救えていない心を眺めるしか加賀美にはできなかった。


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