明かす調べもの
加賀美は新聞社を出た後にすぐに須藤に連絡をした。喫茶店であるのでしまっている可能性も悪しからずという状況だったからだ。須藤はすぐに出てくれて突然の取材に快く許可をしてくれた。須藤が営んでいる喫茶店は警視庁の近くにある。レトロのような趣と新しいような要素が混ざっているようだ。ドアを開けるとからからと音が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
「すいません。日楽新聞の加賀美といいます。須藤さんをお願いします。」
バイトらしき若者がすたすたと歩いていた。大学生を雇うほどの店なのだと思った。バイトの子がカウンターに座ってほしいといわれたので座った。店内はガラガラというようにも見えるし、そこそこいるともいえるような感じだった。
「何を飲まれますか?」
「おすすめのコーヒーをお願いします。」
「わかりました。」
注文を受け取るとバイトの子は笑顔を見せていった。加賀美は須藤が現れたときに聞くことを悩んでいた。新しく買った手帳を片手に待っているとこじゃれた服を着た中肉中背の男性が現れた。顔を見ると笑顔を見せた。
「すいません、お待たせしました。」
彼の手には注文したコーヒーをもっていた。コーヒーカップをテーブルに置くときにいったのは豆にもこだわってブレンドをしたりしているのだという。喫茶店という場所柄、高く値段をつけないように高級なものを使わずにうまいように作っているのだという。配合は毎年変えているので楽しみにしてくれるのだと。
「突然の取材、有難うございます。」
加賀美が堅苦しく言うと彼は照れ臭そうに笑った。
「いえいえ、加賀美さんが来ていただけるのを楽しみにしていました。父が生きていれば大喜びしたでしょう。最近では2時間ドラマが減ったことを嘆いていたんです。その時に見つけて旅をしていているようだって。」
コーヒーを飲んでいいのか、タイミングを失ってしまったのだ。加賀美が飲んでいないのに気づいて催促してきたので飲んだ。
「加賀美さんって伝統文化とか扱っていたじゃないですか。どうしてこちらに取材に来たんですか?」
須藤に名刺を渡すの忘れていたのに気が付いて、改めて渡すと彼は納得したような顔を見せた。社会部と書かれているので何となくわかるのだろう。
「親父の話ですよね。」
「はい、処刑台のこととかブラックリストを調べてられていないのかを知りたかったんです。今回、配属になった上に下手なことはしたくなかったので・・・。」
「そうですか。お話しますよ。親父が調べた事件の話ができる日が来るとは思ってはいませんでした。」