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落掌  作者: 実嵐
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言葉の思い

黒岩の眼には納得したようなものもあった。あの時の抵抗はわざとではなかったのかと思ってしまうしかなかった。

「貴方に手紙を送りたいと此処の人にいったんですよ。そして、名刺を渡したらわかったから住所を教えてくれたんです。その人が言ったんですよ。寺の息子だって言ったんです。」

貴方は新聞記者をしていたのに・・・、とつぶやいた。

「俺は社会勉強のために新聞社に勤めていたんです。親父の仕事を継ぐつもりです。俺にもどうも貴方のことが離れなかったんです。あの抵抗した姿を見せられた時は本当に正しいことをしたのかを問いたかったんです。」

彼は小さく笑った。それはその悩みを打ち消すような笑顔だった。加賀美はその笑顔を見たときに何も言えなくなってしまったのだ。黒岩はコンクリートの武骨さを見ながら言った。

「それは貴方のしたことはよかったんですよ。誰からも悪者にされたかったんです。父親を悪者にしたくせに本当の悪党は逮捕しない警察や検察に納得いかなかったんです。これで変わったらいいんです。けど、うまくはいかないと思います。今まで変わらなかった組織が見違えたように変わるだなんて都合のいい話はあってないようなものですから。」

 津田海の事件は再び裁判がかけられることになったことを新聞で知ったのだという。そこにかおりが含まれていることも知っているのだという。秋絵の死も津田海に関係していることもあって国に賠償金の裁判が始めること。裁判で裁判官がどう判断するかによって世間の眼が変わってしまうほどの大事なものになる。

「厄介な裁判の裁判官は嫌ですね。津田の事件は警察の落ち度に加えて、警察が引き起こした長年続いた事件も関わっているんです。伊達な判断したらマスコミにすぐに騒ぎますよ。そりゃ金城さんがいますものね。」

 黒岩は拘置所に入ってすぐに金城伯に会ったのだという。加賀美を恨まないでほしいといったのだという。そして卜部恭介が父親を殺した犯人だということを知った時は恨んでいたが、寺の住職に会って変わったのだという。

「貴方のお父さんにいわれたといっていました。罪を犯してもいずれ何処かのタイミングでその罪を裁く裁判が行われるのだといわれたんだそうです。何時かその時に出会った時に無心でいることはできないだろうから、せめて持たれてもいいから立っていなさいって言われたと。」

「親父らしいですね。親父も加害者と被害者どちらも会っているんです。そこから得られた言葉だと思います。犯した罪は消えないなら償いをもって生きろとかね。」


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