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落掌  作者: 実嵐
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道しるべで示されていなかった道

 祝勝会が終わってから数日後には新聞社を退職した。加賀美にとってはかけがえのない時間を過ごしたと思った。加賀美は新聞社をやめたことで何処か吹っ切れたとも思ったのだ。

「こら、仁。余韻に浸るのもいいけど、そろそろ切り替えたらどう?」

「いいじゃないか。仁は大役を背負ったんだ。そうだ。拘置所から手紙が送られてきているぞ。」

幸之助がもっていたのはキチンと整った封筒をもっていた。差出人がはっきりと見えた。それを受け取った。彼は警視庁の拘置所に入っているのだと思った。

「お前が書いた記事のものじゃないか。あって話を聞くのもまたいいかもしれない。お前が気が向けばな。」

「父さんだったらどうするんだ?」

「俺だったらあっているだろうな。分岐点に差し掛かった時の道しるべとしていいかもしれない。俺だってなったものの住職っていうのは何処かでわかりあっていないといけないものかとも思ってしまってな。」

幸之助が選んだのが警察にかかわる人の死に向き合ったり、被害者家族に寄り添うことを選んだのだ。そこで過ちの意味を問うことはしなくとも見えてくるのだと思った。

「俺、会ってくるよ。何か変わるかもしれない。」

彼は重い腰を上げて黒のスーツを着た。その姿を見た楓はふっと笑った。

「なんか変わったみたいね。良かったわ。」

「じゃあ、行ってくる。」

加賀美はそう言って玄関を出た。彼女にとって新聞記者をやめた息子の姿は何処か頼りないものを抱えているようにしか見えなかった。書いた記事が本当に書いてよかったのかどうなのかと聞く相手がいなかったのだろう。新聞社の仲間ならきっと書いたほうがよかったというに決まっているのに聞くのはあまりにも愚問過ぎて聞かなかったのだ。電車で移動している道中も何処か変わって見えるのは心が変わったからだろうか。せわしなく急ぐ人の行く道はきっと目的も決まっているだろう。そこから先の未来はきっとわからない。鬼が笑ってしまうようなことはできない。

 彼は警視庁の前についたが、先に見に行くべき場所があると思って少し遠回りしようと心に決めた。とぼとぼと歩いていくとシャアオフィスビルが見た。ビルの階を示す案内のところに多彩な会社が入っていた。そこに空白を見つけた。以前あったことのある管理会社の人を見つけた。

「久しぶりです。」

「久しぶりですね。貴方は日楽新聞の記者さんだったんですね。」

「そうです。もうやめましたが・・・。」

彼女から話を聞くと此処のビルの特定の場所のみ、価格が下がったとしても買い手がつかないのだという。世間を騒がせた人が借りていたとの印象を受けてしまって借りたがらなくなってしまったのだという。

「黒岩さんが離婚されたことも聞きました。しょうがないですよね。人を殺して自分だけのんきに暮らすなんて虫が良すぎますよね。元奥さんも東京を出て故郷に戻ってお子さんと暮らすといっていました。」

かおりもまた割り切ったのだろう。前へと進む道ができたのだろう。


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