意義を持つもの
加賀美は記事を書いた翌日、休みだった。彼にとっては望んでいたようにも思えた。とがめられることがなかった分、何かうやむやにしてしまった気分になっていた。それでも思うところはあるのだ。テレビをつけるとマスコミが寄ってたかって取材といって同じ質問を繰り返していた。くだらないと思ってしまえる自分を感じてしまう。テレビを眺めているとしかなかったのだ。警察の会見を見ていても形ばかりで反省もない、薄っぺらい謝罪を繰り返しているばかりだった。
「大変申し訳ございません。・・・。」
警察のかっちりとした服装だけにしか見えなかった。彼らの他人事に近い行動が引き起こした事件なのだとしか思えなかった。津田海の名前が上がる度に何処か嫌そうな顔を繰り返していた。
「今回、世間を騒がせた処刑台とブラックリストの犯人が津田海の息子だったと日楽新聞で題材的に取り上げられました。この事件は警察や検察などが引き起こした事件だとしか思えないのですが、どう思われていますか?冤罪だと認めなかったのは出世のためですか?」
「そうではありません。捜査に至らないところはなかったと思っております。」
言葉を詰まらせない姿は何処か安っぽい芝居を見せられているようにしか思えない。加賀美はただソファに座っていたのだ。会見を取り上げる番組も黒岩隆吾についてのことも詳しく言っていた。それで事件の真相がわかるのだろうか。彼の携帯が鳴りだした。
「もしもし。」
「金城だ。どうだ。疲れは取れそうか?」
「まぁまぁってところです。テレビを見ても何処も同じ会見をしていますね。」
こぼすように言うと金城は少し乾いた声を聞かせてきた。
「そんなところやろ。しょせんは他人事にすぎひんことやからな。でもな、俺にとってはお前が解決してくれてよかったと思っているんや。だって、警察も解決できひんかった事件を素人が解決したようなもんやで。姉貴が言うには警察の立場がなくなってしもてるって言ってたわ。」
正美は弟から知らされたときは喜んでいたといっていた。金城が自身の手で解決したことに近いことであるからだ。警察が生み出したのは何であるとか思ってしまった。
「父さんがどうして交番勤務を好んでいたかわかった気がするって言ったわ。上の立場になると立場やらに力が入ってしまって初心なんざ忘れるのが全てや。せやけど、交番やったら頼ってもくれるし、近くで事件が起きたらそこに駆け付けるだけかもしれへんけど、そこに意義があるってもんや。」