追うべき時
加賀美には返す言葉が浮かばず、その場で流しているようにしかなかったのだ。それに気づいている羽鳥は何も言わないのだ。
「まぁ、これで世間は今日のうちに騒ぐだろうよ。大きな事件の犯人が分かったのは警察じゃなくて新聞記者でそれを告げたんだからさ。」
「そうですよね正しかったんですよね。」
「正しかったとかそんなのを考えなくてもいいんだ。正義とか悪とか考えてしまうからわからなくなってしまって境目を血迷うようになってしまう。記事を書くことで何がもたらすかを探すしかないんだ。」
羽鳥はそう言っていなくなった。沼田は静かに座っていた。
「私も悩んだのよ。それでも貢献できたと思っているの。救われた人だっているの。確かにそばにいるのに気づかなかったりするだけなの。ジャッジマンという人は何処かで叫んでいたことを知らなかったとしかないの。」
大きな事件を戦えば戦うほど負う傷の大きさは計り知れない。それを気づいていながら見なかったふりをしているしかなかったりするのだ。時を巻き戻す方法を考えるよりも進むほうに向かったほうがいいのは知っているのだ。ただそれだけを思うしかなかった。嘘に紛れたようにならないようにとも思ったのだ。




