埋もれた答え
諏訪のことを思った時に笑顔が羽鳥から漏れた。そこから浮かんでくるものにあふれてくるのだ。羽鳥の携帯が鳴った。
「もしもし。届いたか?加賀美の最初で最後の号外だ。出来のほうは俺も確認しているから動くだろう。」
諏訪からなのだろう。少し長く話しているようであった。黒岩隆吾は白旗を上げざる負えない状態になっているだろう。事実を話すことにもなることだろう。ボイスレコーダーが動いていたこともあるので証拠もばっちりといってもいい。
「そうか。警察に行くって言っているんか。金城はどうしている?あいつもたまっているものを吐き出していたとかなかったか?あいつも被害者家族だから思ってないとダメだぞ。」
携帯を切った彼は澄んだ笑顔を見せていた。黒岩隆吾は警察に向かうといったのだという。最後に子供に会ってからにするのだとも言っていたという。キチンと向かうかどうかを見守ってから戻るといっているのが金城なのだという。
「金城も辛抱したと思うよ。父親を殺されてそれで時間が経ってから犯人が殺されて恨んでただろうから。殺すつもりはなくとも吐き出し口になっていてもおかしくなかったからな。全て解決してほっとしているんじゃないか。」
「警視庁にいたときもなんだかんだ金城さんはブラックリストとか処刑台の事件は気にしていましたよ。何時か父親を殺した犯人がターゲットになることもわかっていたんです。心の中では自分で解決したいと思っていたのかもしれません。」
金城は悶々とした表情をしたまま、仕事をしているときが長かったのだ。地位が上がったとしてもはたしていないものの大きさを知っているからか、悩んでいるようでもあった。それを気にしてか、諏訪が声をかけていたが印象に残っているのだと沼田は言った。
「黒岩幸吉について調べていることを言ったら驚かなかったんです。相手が大きいとやるべきじゃないとかいう人が周りに多かったんですけど、金城さんだけ大して何も言わなかったんです。それだけ気持ち的に余裕がなかったんだと思います。」
彼女は空になった缶を眺めた。筒だけが残った金属がそこだけに居座っているようにも思えた。消えてしまったものもあるのだろうとも思った。
「加賀美も何時かこの記事が何かをもたらすさ。俺はそう思っている。諏訪から社会部に異動してくれって言われたときは最初は断ったけど、最終的に異動したのはお前なら何かを受け取ってくれると思ったんだ。やめるってわかってやっと言える言葉だけどな。」
遅いけどと付け加えた。羽鳥なりの思いもあったのだろう。寺を継がないといけない現実も何時かあるのだと思ったのだろう。経験の1つの社会部に異動にしたのだ。やさしさに埋もれてしまいそうだった。