変わる時
寂しい声を響かすしか方法しかないのかもしれない。かおりとの出会いがあったからこそ、変われる時があったにも関わらずそれすらも逃してしまったとしか言えない。
「そんでどないするんや。此処まで白状したところで俺たちは警察やない。ただの新聞記者や。記事を書くかどうかも別やけどな。」
「貴方は脅すんですね。金城さん。加賀美さんにはそのすべは持ち合わせていないんですか?」
「そりゃあったとするわな。それであんたの人生に何が変わったというねん。加賀美はな、人に問いかけるんや。どう思ったかで変わることもあるんや。嘘で染めた人生ほどおもろないってこともあんたもわかっているやろ。検事から弁護士なったも、幸吉から逃げる意味もあるやろうが、また別のもんがあるやろ。」
金城はそう言ってコーヒーを飲んだ。インスタントの薄めすぎたコーヒーを飲んだ。苦味も甘味も感じないほどに良さを打ち消しているようにもなっている。それを作った本人は黒岩の子供と遊んでいる。
「貴方が過ちを導いているかどうかもわかっていないんでしょう。犯罪者を殺したのは正当化してしまうための方法でしかないんでしょう。それを愚かっていうんですよ。」
「それでもその方法しか知らなかったんです。逃げる道も家に帰ってもない。学校に行っても黒岩家の人間だと知っているがために何処か色眼鏡で見られてくる。それからも逃げたかった。仲の良かった友達もいじめに失ってしまったんです。」
頼るところをそうそうに失ってしまった。友達から教わったパソコンで世間をだますのがうれしかったのだ。いじめをしていたいじめっ子は大企業に就職できずに家族から勘当されたと同窓会に向かった時に聞いたのだ。それは天罰だといってしまったのだ。表舞台から退くことを選んでしまうのだろうから。
「貴方には自首することを進めますよ。俺は貴方が歩んできた道で心が晴れているとは思えないんです。此処の管理会社の人が言っていたんです。家族写真で貴方が寂しそうに笑っているといっていました。今の家族は話したがるのに、幸吉のこととかは話したがらないことも・・・。こんなことをしていても復讐をしても何も生まれないことを知っているでしょう。」
黒岩隆吾の眼は何処か耐えきれないものを背負ってしまってあふれ出しそうになっていた。叫び声すらもあげられなかったときとは違うことは彼には容易にわかっていた。わかっているのに何かでふさいでしまっているようでもあった。