声と追う
「そうです。世間や親の行動のはけ口にしていたのは事実です。黒岩幸吉が本当の父親の事件にかかわっていると知ってからより一層思うようになったんです。検事になっても黒岩家の人間であることから色眼鏡で見られてしまうしかなかったんです。」
金城は何処か聞く耳を持たないようにソファにだらしなく座ってしまっている。検事になっても新しい事件に追われてしまう。それからも逃げることはできないこともわかっていたのだ。幸吉から圧力もあったのだ。事件を早めに解決して成果を上げて上に上げていくという決まってしまっているレールにはまるのが分かっていた。
「検事の時にはしっかり事件について調べました。警察がろくに調べずに建前で証拠を上げることも何処かでわかっていたんです。丁寧にするほど邪見に扱われてしまう現実から逃げるためにもブラックリストとかあったことで保っていたのかもしれません。」
「せやけど、その時には結婚はしてへんのか?」
「しようかとか話になっていました。彼女には断っていたんです。立場も全て知っている彼女に責任を背負わすほどの力も俺にはないですから。」
それでも結婚をしようと押し切って来たのだ。背負っているものを少しでも軽くできるのなら・・・と。打ち明けることもできることもできぬまま、結婚に踏み切ったのだ。
「俺にも良心っていうのは少し残っていたのかもしれません。子供ができる度に何処かでばれてしまえばいいと思う部分もあったんです。警察が難航してたどり着けないと知ってからも何処かでばれてしまって捕まるのではと思っていたんです。此処で判明してありがたいと思っているんです。」
黒岩は着飾ったスーツを少し気崩していた。その時だった。ドアのノックする音が聞こえた。黒岩が返事をすると女性が現れた。幼い子供を2人連れている。
「あら、貴方新聞記者さんが来ているのにどうしてコーヒーカップが割れているの?掃除をしないと・・・。」
「いいんだ。俺が打ち明けないといけないことがあるからしたことだから。」
「そう。」
女性は黙り込んでしまった。空気を察したのかもしれない。2人の子供はパラリーガルなどに任せて4人だけの世界になった。
「貴方が奥さんですか?」
「そうです。黒岩かおりといいます。」
「旦那さんが犯罪者を殺して行っている処刑台やブラックリストの事件の犯人だと知っていましたか?」
加賀美は禁断の質問をしているのはわかっているが、言わないと収まらないところもあると思った。