過去と未来の弊害
黒岩にとってその処刑台というサイトははけ口に変わっていったのだという。幸吉から検事になるように言われてしまったのだ。何処かで隠れてしまっていた心の思いまでも使ってくれているのだと考えるようにもなっていたのだ。
「輝いているわけでもない俺が弁護士にもなれるはずがないと知っていたんです。養父といいながらも隠していることの多さには気づいていたんです。それと引き換えのつもりで隠してしまうのだろうからとも思ったんです。裏で取引をしているくらい知っている話だったんです。わからないとでも考えていたんでしょう。」
かけがえのないものを失った記憶もないままに行っていることもわかった。高校生の時に起こした殺人事件すらも公にできないことも知っているのだ。犯罪者を殺したことを評価する人間がいることも知っていた。大学に行っても特段、気にすることのない姿も知っているのだ。抱えている荷物は多くなるばかりの時に彼女ができる度に何かを吐き出していたのだろう。別れを告げられることがあっても不思議と何も思うことはなかったのだ。黒岩家に育った人間だと思って食いついてくる人間も含まれているのだと思うと嫌気がさすときもあったが、別れる度に失っても生み出すことはないと思って放っていたのだ。ただ、大学3年の時に残りの授業が少なくなってきたことで生み出すことができると思っていた時に声をかけてきたのだ。
「何を企んでいるの?」
「なんだよ。初めて会った奴にいう言葉かよ。」
不機嫌に漏らすと彼女は悪びれぬ態度で謝罪してきた。隣の席に座った。法学部に入ったものの別段、弁護士になりたいわけでもなく、ただ親に説得されて入って来ただけだと面倒に言った。
「いいよな。愛されているって感じがして。」
「そう?私はまだ子供扱いをされているだけの気がしてならないの。会社に入ったらコネだとか言われるだけの結末は嫌なの。」
「貴方はそうじゃないっていうの。確か・・・黒岩君って検察一家の息子って聞くけど・・・。」
黒岩はそう言われると嫌な顔をした。それに加えて憎しみばかりが増えていくのだ。
「あんなの親じゃないよ。検察に入れって強制なんだよ。特に俺はな。」
粗末に扱われた記憶と感情を抑えるものがなくなってしまっていたのかもしれない。それでもよかった。
「貴方と話していると親のこともわかる気がしていいわね。また来るでしょ。くだらないことを話しましょう。」
そういっていなくなった。