連載
ワンルームのマンションのリビングにはカーテンから漏れた明かりが照らしている。彼は少しサラリーマンといっても時間が変わっているのか、眠たそうにあくびを繰り返していた。スマホに電話がかかった。
「もしもし。」
「のんきなことを言っている場合じゃないぞ。加賀美。お前に辞令が出ているから急いで来いよ。」
加賀美は同僚に言われた言葉を受けて急いで鞄をもっていった。地下鉄での通勤が基本となっているが、地方に出向くことも多いので車に乗ることが度々ある。加賀美は地下鉄を乗り継いで大きなビルの前に立った。そこでエレベーターに乗って目的の階へと向かった。そのフロアに行くと電話をしてきた同僚が立っていた。
「大変なことになったな。辞令でお前社会部の異動らしいぞ。もしかして・・・、飛ばされたとか・・・。でも、あり得ないか。」
不安そうにも何処か楽しそうにも言っている同僚を無視して自分の机に向かった。同僚は無駄話を終えたこともあってか、すっきりした顔をしていた。加賀美は今は文化部に所属になっている。連載を受け持っているほどの記者が当然消えてしまうことを認めたことになる。考えていると声をかけられた。
「加賀美、こっちに来れるか?」
「はい。」
文化部の部長の羽鳥に呼ばれた。部長の席に行くとそこでは笑顔を振りまいている何時もの姿だった。羽鳥は椅子から立ち上がって加賀美の肩をつかんだ。
「君の話をしたら社会部の部長が気に入ったらしくてな、連載は別の奴に任せるから頼む。」
「部長、頼むって言われても辞令で出ているってことは決まったってことですよね。」
「まぁ、そうだけどな。諏訪はいい奴だから。」
羽鳥と諏訪は同期入社ということと同じように上がっていることもあって仲がいいのだ。それで今いる部下について話が上がって話すのでそこで交換するために加賀美の話になり、文化部初の会長賞を取った奴がいるという話になり社会部に来てほしいとなったらしい。
「俺が連載を離れたとなると全国紙ですから影響を受けませんか?」
「もしかするとだが、なくなってしまう可能性も否めないが、諏訪が頼み込んできたからな。いいというしかなかったんだ。」
彼にとっては思っても見なかった異動を受けることになったのだ。彼がいる会社は日楽新聞という全国紙で、加賀美は全国の伝統芸能などについての連載を受け持っていたのだ。そこで彼が書くことや実際に起きたことも書いていたのが受けたのか会長賞をもらうことができたのだ。