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充太  作者: 斎藤ベコ
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2.充太が来る

《3ヶ月前》


3月の初め、お弁当屋さんのバイトを始めて約1ヶ月たった頃だった。夕飯の時に父から


「美咲、お前アルバイトしないか?」

と言われ、なんのことか分からず、何も返せないでいると香苗が「バイトォ?」と怪しむような顔をした。

「お仕事ならもうやってるでしょ?」と母。

「え?…何?バイト?」と私。

「ウチの会社でアルバイトを探しててな、美咲にどうかと思ってな。あぁ、母さんや香苗にも協力してもらわなくちゃならんと思うが。」


モグモグと夕飯のカレーを食べながら父が答える。何のことやら全くわからず、私達3人が戸惑っているのも気にせず、またカレーを食べる父。この人は本当にマイペースに加えひどく言葉足らずだ。


「え?、だから、、、」

「だから何のバイトなのよー!わたしもやるの?何するか言わなきゃ、やるも何も言えないでしょー!」と香苗が怒る。

「お父さん、もう少し詳しく言ってくれないと分かりませんよ」と母。

「何する、バイト?」と私。

父は私達の視線を受けて、やっと「あぁ、そうだよな」と言って立ち上がり、自室に入っていく。


父の後ろ姿に香苗が顔をしかめてくる、わたしも眉間にシワを寄せて苦い顔をする。バタンと扉の音がして父がスマホをいじりながら戻ってきた。


「えぇーと、あぁ、これだ。」と父がスマホを見ながら答える。


「高野様、まぁ、これはいいか。えーと、先日お話したK3999sですが、動作確認は問題無く十分機能するものと思われます。えーと、まぁこれもいいか、第2開発部倉庫にて発見したため、前佐々木部長がプロジェクトリーダーの時の物とみて間違いなさそうです。先日もお話しましたが、やはり私としては日常生活下にて観察したいものです。先日の話の続きで高野さんにお願いできるなら私としては一番いいのですが、、、ということだな。」


おそらく父に送られてきたメールをそのまま読んだのだろう。説明は終わったらしく、私達の顔を見渡す。しかし聞いても全く分からない。


「はぁ?、、、どういうこと?」と香苗。

「k399、、、なにそれ?」と私。

父がらっきょうに手を伸ばしながら私をみる。


「まぁつまり、ウチでロボットを一体面倒見てくれないか?ということだ。美咲、どうだ?お前やらないか?」

「「ロボット!?」」と母と香苗。

「ロボットがウチにくるの?面倒みるって何よ?」

「ちょっとお父さん、どういうことですか?」

「っていうか、なんでお姉ちゃんなの?」

「私、ロボットなんて、え?ドラ○もん的な?」

慌てふためく私達を見て父はいたずらっ子の様に面白がる顔してまたらっきょうを食べた。


「まぁ、ウチで今1番時間の融通が利くのは美咲だろ。俺も帰ってくるのは夜だし、香苗も仕事が忙しいし、母さんは嫌だろ?美咲、引き受けてくれないか?」


父はあっけらかんとして軽いノリで答える。

「え、でも、ロボットなんて、、、。」

「まぁ、無償ではなんだからって、月2万5千でどうだって事なんだが。」

「2万5千、、、。」




1週間後、私は高いのか安いのかわからない月2万5千の魅力に勝てず、そのまま父の押しに負けて引き受けてしまった。弁当屋のバイトでは月にフルに入っても15万前後だったため、内心2万5千円は魅力的だった。


父の働く会社“(株)森田テクノロジー”では主に工場用ロボットを作っていて、最近ペット用ロボットを売り出したばかりだった。試しにホームページを見てみると犬やネコを模したようなロボットが並ぶ。妹の香苗も調べたみたいで、あの話の後すぐに社員旅行に行ってしまった父の留守中、私と香苗と母はホームページに並ぶ可愛いペット用ロボットに夢を膨らませていた。


だが、数日後運ばれて来た『ロボット』を見てわたし達は言葉を無くした。想像していた『ロボットペット』とはえらい違いだった。それから、『面倒をみる』の意味もこの時はまだ分かっていなかった。



3カ月前、ピンポーンとインターホンが鳴り、宅急便のお兄さん達が2人がかりで運んできた大きなダンボール箱には体育座りをした青年が入っていた。




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