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充太  作者: 斎藤ベコ
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2.1日目


「ホントにおっきくなったねー、かわいいねー」とユカの息子の翔くん(1歳)と愛美の娘の楓ちゃん(3歳)に交互に言う。約一年ぶりに会った友人達とのランチ、もっと話すことがあるだろに私の頭はフリーズしたまま、間をつなぐ様に口から『かわいい』を放つ。


3連休1日目、中学の時からの友人達と子連れでも楽しめると評判のカフェでランチをした。ユカとミナと愛美と私の4人だ。ユカは去年息子の翔くんを出産し、2ヶ月前に旦那の仕事の都合で東京から隣街に引っ越してきていた。


「久しぶりだねー、みんな変わらないね」とユカ。

「引っ越しは終わった?大変だったでしょ?」とミナ。

「翔くんも大きくなったね!」と愛美。

「楓ちゃんも大きくなったよ!かわいいね」と私。


それぞれ、久しぶりに会ったので子育てや仕事の話、恋人と旅行に行ったなど話は尽きなかった。途中、写真アプリで写真を撮りあって盛り上がった。何度も『撮って!』と楓ちゃんがせがむので、わたしのケータイにうさぎの耳の生えた3歳児がたくさん保存された。

デザートを食べる頃には子供達も飽きてきて、そろそろお開きという空気が流れ、あっという間に解散となる。子供を連れていると解散が早い。みんなが独身だった頃は“もう帰りたいなぁー”と思うまでずっとドリンクバーを片手に店にいたものである。


子供のいるユカと愛美は車で来ていたのでその場で別れ、ミナとは駅まで一緒に歩いて、駅で別れた。駅まで彼氏が迎えに来ていて、私は初めてミナの彼氏を見た。ミナはとても美人なので、彼氏はどんなイケメンかと妄想していたが、いたって普通の優しそうな人という印象だった。ミナとは「じゃぁ、またね!」と手を振り別れた。



電車に乗り、窓の外の梅雨の曇り空がまた一雨きそうな予感を感じさせた。

ミナと歩いている時、「美咲は仕事順調?」と聞かれ、「うん、まぁまぁ順調」と返す。

今度は「じゃあ、彼氏は?」と聞かれ、「いや、そういうの何にもないや」とヘラヘラ笑って返した。ミナとの別れ際につい「いい人いたら紹介してよ」なんて軽口を叩いたことに少し後悔した。本当に紹介されたらどうしようか。

30前の“いい歳“ではあるので、そういう気が無いことはないが、今はあまり乗り気になれない。



たった数時間のランチだったのに、家に着くとどっと疲れがきて、夕食を食べてからソファで寝てしまった。はっと気がついた時には母が「わたしもう寝るからねー」と寝室に入る時だった。


ケータイの時計を確認すると10時30分。お風呂に入らなくてはとぼんやり考えていると、充太がわたしをどけてソファに座ってくる。

「美咲ちゃん、今日は6話見ますか?」

「え、ちょっと充太、狭いよ、、、あぁ、そっか、6話...」


正直そんな気分じゃないし、お風呂入んないと…と思うが充太のキラキラした目を見ると今日は見るのお休みしない?とは言いにくい。ここ最近、母が寝てからホラードラマを私と妹の香苗と充太で見ることが習慣になっている。一回母のいる所で見ていたら、私の前で怖いの見ないで!と3人で怒られた。それからは、充太に夜が怖いという感覚が分かるのか謎だが、怖さを増幅させる様に夜な夜な3人で鑑賞会が開かれている。


「お!今日もみる?」と香苗が麦茶を片手に寄ってくる。続き気になるわー!と楽しそうだ。

「あ、わたしお風呂…」

「えー、今見ようよ。お姉ちゃん明日も休みなんでしょ?明日の朝入ればいいじゃない!」

お風呂に行こうと立ち上がる私を制する香苗の言葉に、まぁ、1日くらいいいかなと思ってしまう。


「え?あー、まぁ、そーだね。」と私。

「そうそう!そうしなー、3人で見たいじゃん。ちょっとつめてー」

と香苗に押し切られ、私の隣に香苗が座ってくる。わたしは充太と香苗に挟まれるように座って、寝起きのぼんやりした頭で“怨念2”の6話を見始めた。



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