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充太  作者: 斎藤ベコ
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1.休み前

ウスカワマイマイ、カタツムリ、、、


パシャリ、とシャッターを切る音がした。道端の雑草にカタツムリが1匹這っている。草の茎をのそのそ移動する様を充太はしゃがみ込んで食い入る様に見つめている。


腹足網、有肺目、、、オナジマイマイ科、ウスカワマイマイ属、、、


「ちょっと充太!6時すぎてるよ!」

充太が顔を上げると美咲が少し怒った顔をして充太を見下ろしていた。

「…美咲ちゃん」


有肺類、陸貝、頭部に大小の触角が2対、、、右巻き、、、


「何みてんの?、、、うわ、カタツムリ」

美咲も充太と同じ様にしゃがみ込む。

「…かわいいです。」

「えー?そう?、、うわぁ。」

カタツムリは草の茎を登ってのそのそ上へ移動する。

「…。」

「ねぇ充太、もう6時なったからそろそろ帰ろうよ。」

そういいながら立ち上がる美咲をしばらく見上げて、差し出される手に充太も腰を上げた。


美咲はまた充太が寄り道しないように手を繋いで歩く。つないだ手は相変わらずひんやりしていて、梅雨時のモヤっとした空気とは対照的で気持ち良く感じた。

家に帰る道を歩きながら充太が美咲に言う。


「美咲ちゃん今日は3話見たいです。美咲ちゃんは見ますか?」

「ん?3話?、、あぁ、お母さん寝たらね。」

「はい、承知しました。香苗ちゃんも一緒がいいです。」

「うん、そうねー。」





13時45分、ニコニコ弁当はお昼のピークを過ぎて、リーさんと佐藤さんが事務所に休憩に入る。私の休憩は2時半からだ。もうすっかりピークが過ぎたのでお客はいない。あとは夕飯時に向けての準備やその辺の片付けをしながら、夕方のピークがくるまで少し休憩といったところだ。


「あら、美咲ちゃん明日から3連休じゃない。どこかお出かけ?」

佐藤さんが事務所にあるシフト表を見ながらうれしそうに聞いてくる。

「何にもないですよ、たまたまです。店長が今月から代わりばんこで3連休取ろうって。佐藤さん達聞いてませんか?」

「オオ、ソウナン?キイテナイナ!ジャア、ミサキリョコウイクカ?」とリーさん。

「そんなお金無いですよ。家にいます。」

「あらもったいない。」と佐藤さん。

「あ、でも、中学の時の友達と会う予定です。あと、前の職場の先輩達にも」

「あら、いいじゃない。せっかくの休みなんだから。」

「ア!テンチョ、マタアイスカッテキテルヨ!ミンナデタベヨ!!ホラ、サトウサン!ミサキモ!」


リーさんが冷凍庫の奥から店長が買ってきたアイスを発見した。わたし達はファミリーパックのアイスを、3人で仲良く厨房の棚のウラに隠れて食べる。


明日からの3連休中、急に出てくれと言われるのは勘弁してほしいので、“ちゃんと予定がありますよー”とアピールしてみた。それに3日も休みがあるのに全く予定が無いヤツだと思われたくなかった。


ガリガリとアイスを食べている2人にそれが伝わったかは分からないが、もらったアイスを食べながら“あと半分、頑張ろう”と連休前、自分に喝を入れた。


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