奪還直前夜
東方大妖調→とうほうたいようつき
って読みます。
調=つき は昔の税。貢物って意味があるらしいです。調神社っていう場所もあります。
今回は物語の導入とかです。これから連載していくので、興味持っていただけたら次の投稿待ってみてほしいです。ではどうぞ。
少女は、幻想郷の冬の中。世界のバランスを危ぶんでいた。人が巫女などを介し、妖怪への恐怖を忘れていっていたのだ。
ーー此の儘では妖の存在は消えるーー
小さな、白い月が現れた。それは、人からの貢物を吸い取っていく。脆く儚い貢物を奪えば、世界も生きる者も、救われるのだろうか。
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春は暖かい博麗神社も、この極寒には流石に身を弁えたようだった。その巫女も、今は大人しかった。
霊夢「はぁー、怠いわぁー...」
クラピ「泣く子も黙る博麗神社の巫女が、なんて有様だよ」
突如、体から精が失われた霊夢は、何をするにもやる気が湧かなかった。それは、地下に住う妖精にさえも案じられる程だった。
地獄の妖精、クラウンピースは、明らかに異変と感じていた。近くの人間を見回ってきても、妖怪か妖精か、言葉を発さない生物しか見当たらなかったのだ。
クラピ「ふーん。巫女が動けないなら、あたいが行くしかないね」
霊夢「はぁ?妖精風情に何が....」
クラピ「うっさい!病巫女は黙って休むのよ!」
クラウンピースは制止を聞かず、満月の下を飛び出していった。月を睨む。彼女は遠くの主人を想いながら、精の集う場を探した。
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霧雨魔法店には2人の少女が居た。帽子を取って眠る魔理沙を、笠を被る矢田寺成美は見ていた。見ていながら、先程の人形遣いとの会話を思い出す。
成美「えー、何で私がそんな面倒な事を」
アリス「魔理沙って知ってるでしょ。ないとは思うけど、看病を頼まれでもしたら嫌なの」
成美「魔理沙が寝てるのは異変なの?」
アリス「そうよ。私は彼奴の為に働く義理はないから」
成美「ううん、我ながら魔理沙は、報われない知り合いばっかね
成美「前の恩もあるし。判った、行くわ」
アリス「ええ。失われた精.....異変解決お願いするわ」
報われない知り合いは、未だ起きない。彼女が起きない理由は、他にも山ほどありそうだった。が、成美は気に留めない。
面倒ではあるけれど、彼女からの恩を返す為。普段の苦労を報われるようにする為。成美は店を、静かに出た。
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紅い悪魔の住む館。此処に人は居ない。唯一1人、瀟洒なメイド長を除けば。常に完璧な彼女は、異変によって苦しんでいた。それが判ったのは、館の主人のお陰である。
メイド長の存在は、館の心臓部といってもいい程重要だった。彼女が歯車から脱落した事により、館内はすっかり機能しなくなっていった。
レミリア「原因が判ったって、根源を潰せない事にはね」
咲夜「申し訳ありません、お嬢様」
レミリア「今は休むのね。...パチェ、行けるかしら」
パチェ「他に居ないの?」
レミリア「咲夜は見ての通り、私は、此処でやる事があるし」
レミリア「妖精メイドは論外、フランは....まあ、そういう訳でね」
聞かずとも判っていた事を、魔法使いパチュリー・ノーレッジは改めて聞いた。客観的に考えて、意味あって動けるのは自分しかいない。
気の触れる彼女を外に出そうものなら、何が起きるか知れない。行くしかない、と決意した。
パチュリーは喘息用の薬を飲み、戦闘の準備を整える。偶には館の、レミリアの役に立つように、月光を浴びながら程々に進んでいった。
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永遠亭の兎、鈴仙・優曇華院・イナバ。今日も師匠の下で学ぶ、筈だったのだが。その美しい声に、鈴仙は呼ばれた。
鈴仙「姫さま、御用ですか?」
輝夜「ええ、今夜は月がきれいね。でも」
輝夜「何処か変な月光も、混じっていると思わない?」
鈴仙「...確かに、向こうがやけに明るい」
永琳「だから、あの月の正体を確かめてきなさい、ウドンゲ」
話を聞く中で、鈴仙は人里での事を思い出していた。普段は、活気に満ちた人間で一杯のあの里に、全く人が居なかったのだ。その為、商売もままならなかった。
人が消えたきっかけがなかったから、それを丁度探していたのだ。師匠の薬を売る為にも、この月の違和感を解決しなければと。鈴仙は心中、燃え上がっていた。