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20代終盤の青い空

作者: 水原 たか

 突然、猥雑な事を言って申し訳ない。私はタマが大好きだ。転がしたり、入れたりすることが、ことのほか上手であったりする。

 

小学生の時は、いつもタマを握りしめ、追い回し、いつかプロになってやろうと固く誓っていた。

 もちろんこれは野球の話である。

 閑話はこれぐらいにして、本日晴天のなか小学校で開催された地区運動会に参加した。


 無類のタマ好きにはたまらない、「玉入れ」や「タマ転がし」「おタマ運び」などにエントリーをした。

 自分で言うのもなんだが、大きな殊勲をあげることは、火を見るよりも明らかなことであった。

 学生の時分に鍛え上げたコントロール。タイヤ引きで鍛えた足腰。水を飲まず吐きながら練習し、培った不撓不屈の集中力。これらが本日陽の目を見ることになろう。


 その百戦錬磨のアドバンテージは、私を地域のスーパースターにならしめるもの、と信じて疑わなかった。


 が、もう見る影もなかったのである。


 タマを投げれば、往年の野球ヒジが再発。タマを転がせば、膝の古傷が開く。タマを運べば、手元が震えなまなかでなく、、、。


 結局、正午になる頃には、野戦病院から声援を送っていた。

 長椅子がいくつも置かれた急ごしらえのテントの下には、同世代と思わしき男女が3名程いた。

「いやぁ、運動不足はいけませんなあ」.とかなんとか。意外と年配の人はここに運ばれてこない。たぶん、30代40代になると、あまりはしゃがないのかもしれない。つまり節度を弁えているのだろう。私たちはまだ動けるイメージが自分の中に残っており、その感覚で運動をして、身体をいわせてしまうのだろうか。当たり前といえば当たり前だが、状況が違えばそれもまた変わってくる。


 20代の半ばも過ぎると、運動しているやつとしてないやつでは、こうも目に見えて差が出るのものかと、目を丸くした。


 運動場を爽やかに駆け抜ける儕輩たち。体型もスラっとして惚れ惚れするような挙措。なんか羨ましかった。

 私もあんな大人になりたいなぁ、と青い空を見上げた。


 悔しいから、最後の地区対抗リレーに手を挙げ、野戦病院で十全に手当て(テーピング)を受けて参戦した。


 足が攣りそうになりながらも、意外と奮戦できたと思う。3番手から2番手に順位を上げ、アンカーへとバトンを渡すことができた。

 結局アンカーが後続に抜かれ、ビリになった。


 走り終わったあと、息を荒げ運動場で仰向けになりながら、飽かず青い空を眺めた。とても清々しく、ずっと見ていなかった何かを見たように感じた。



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