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一章‐5 アスター王国 メイドのメイ・バッカス

天狐のおかげで、無事・・・嘘、無事ではないが無事完全復活を遂げた俺は、天狐の家にというか小屋にお世話になることになっていた。

そもそも俺事態は出ていこうとしたのだが、天狐が頑なに止めてくるのだ。

そもそもこいつこんな寂しがりやキャラだったか? もうキャラ崩壊起こしてんの?

しかし、俺も今ここを出て行ったところで飢え死にするには目に見えている。

俺には痛覚はないが、空腹や眠気はあるんだ。それに、万が一大きなけがを負っていしまって、それに気づかず死ぬのも嫌なので、仕事を探しつつ、世話になることになった。


「じゃあ、行ってくるわ」


俺は身支度をして小屋から出ようとする。


「気を付けて行くんじゃぞ、ここからアスター王国は一時間程で到着するはずじゃ、すまんが、わしは薬売りの仕事があってのう」


「いや、大丈夫だよ それにしてもこの森からそんな近くに王国があるなんて思いもしなかったよ、ドラゴンに感謝だよ全く・・・」


アスター王国・・・アスター家が築いた一国で、国民からも厚い信頼を得ているとのこと。治安や経済も悪くなく。外からの旅人、訪問者にも比較的寛容な国らしい。

国の規模もそこそこでかいらしいが・・・。

正直この世界の国の情勢とか何もわかないからもう少し勉強していかないといけないな。


「では、お主の帰りを待っとるからのう、くれぐれも無理はせんように」


そう言って天狐は見送ってくれた。

俺は、天狐に教えてもらった道を進み王国に向かう。

しかしあれだな、前の世界だと自転車に公共交通機関、なんでもあったからいざ歩きで目的地に向かうとなると、いかに前の世界が便利だったかを気づかせてくれる。

まぁ、慣れるまでの辛抱だ。

暫く歩くと森が開けてきた。もう少しで森の外だ。

森の外に出ると、思わず声が出た。


「おぉ・・・でっけぇ・・・」


アスター王国がもう見えていた。

聞いていた通り規模はでかめ、外壁もしっかりとしている。

王国の入国ゲートにはしっかりと兵士が立っていた。

いよいよ、入国・・・。

俺はあらかじめ天狐からもらっていた入国許可証を準備してゲートに向かう。


「そこの者、止まれ! 入国許可証を拝見する・・・よし、通っていいぞ」


「お疲れ様です」


一言声をかけ、入国する。

天狐がくれた許可証はしっかりと使用できた。

少し不安だったが杞憂だったみたいだ。


そして、目の前に広がる光景は屋台だらけ!

商人やら、旅芸人、まるで遊園地のようだ。

あっけにとられるほどの賑やかさ。

これが普段の賑やかさなのだろうか?それとも今日はお祭りか何かなのか?


「兄ちゃん! 旅の人かい? うちの商品見てってよ!」


声のした方を見ると、恰幅のいい男が豪快に笑っていた。


「あ、あぁ、じゃあ、せっかくだし見ていこうかな」


「おうよ!」


屋台には綺麗なアクセサリーがずらりと並んでいた。


「へぇ~、すごい綺麗だなぁ・・・これおじさんの手作り?」


「あったりめぇよ! ここらでこんな上等な品はうち以外ないよ? ほら兄ちゃん、彼女とかに一つどうよ?」


「い、いや、彼女はいないけど・・・そうだな、一つ買おうかな」


天狐の金で


「・・・じゃあ、この花のネックレスください」


「お! 兄ちゃんお目が高いね! ほらよ3500ランだよ」


天狐からもらった金で天狐へのアクセサリーを買う。

正直この値段が高いのか安いのかよくわからんがまぁいいだろう、天狐の金だし。


「また来てくれよな!」


そう言いながら屋台のおじさんは豪快に笑って見送ってくれた。

今ので確信した、この国の賑やかさはお祭りなんかではなく、普段からこの様子だと。

この国の雰囲気に飲み込まれそうになっていたが、慣れてきた。

さて、屋台巡りもいいが、今日俺がここにやってきた理由

仕事探し・・・。

簡単には見つからないだろうけど、自分の生活費くらいは稼がないと天狐にもうしわけない・・・あ、あの屋台の食べ物おいしそう。後で天狐の金で買おう。


「とりあえず、職業斡旋センターとかあればいいんだけど・・・この世界にそんなのなさそうだし・・・」


ダメもとでもいいから、通行人にでも聞いてみるか? 

俺は目に入った優しそうな女性に声をかけてみた。


「あのー、すいません、この辺にハローワークとかありますか?」


「は?」


女性は冷たいまなざしとともに過ぎ去っていった。

・・・あぁ、ハローワークは前の世界での話だ。そりゃあんな反応にもなるなる。

俺だって知らない人に突然『グッドモーニングワークこの辺にありますか?』なんて聞かれたら同じ反応するよ、うん。

気を取り直してもう一度違う人に声をかける、今度は目の前に通った男性に声をかけてみる。


「あのー、すいません、この辺に仕事紹介してくれる場所とかありますか?」


「ぶっ殺すぞ」


「あ、すいませんでした」


俺は足早にその場を去る。

くそぉ! どうしてあんなこと言われないといけないんだ!

道聞いただけじゃん! この国の通行人全然優しくなくて辛いわ!

まだ、二人にしか声をかけてないが、もう心は折れた。もう帰りたい。天狐のお金で豪遊したい。

そんなことを考えてうずくまっていたら後ろに人の気配・・・え?マジで殺しに来たの?あの人・・・アスター王国マジ世紀末じゃん。


「すみません、そこのお兄さん」


だが、そんな心配とは裏腹に先ほどの男性とは全く違う、女性の声がした。

俺は恐る恐る振り返ると、そこにはショートカットででメイド服の女性が立っていた。しかも無表情・・・。


「メ、メイドさん・・・?」


思わず見とれてしまった。

あまりにもメイド服がこの人物に似合っていたからだ。


「突然お声をおかけしてすいません。私、アスター王国公室のメイド長メイ・バッカスと申します。以後お見知りおきを」


あまりにも彼女は淡々と話すので何が何だかよくわからない。

・・・え? アスター王国公室のメイド長? 何気にすげー上流階級の人と知り合えたんじゃねえのこれ?


「は、はぁ、俺は萩村雅って言います」


「はぎむらみやび・・・?」


無表情で小首をかしげて、名前を復唱する。

やだ、超かわいいじゃんこの人。


「この辺りではあまり聞かないタイプの名前ですね? 出身は?」


「えぇと、遠い島国です・・・」


「出身を聞いているのですよ? 下民が」


「ん?」


「お気になさらず、まぁ、出身を明かしたくないという方は少なからずいるものなので構いません」


出身聞かれても日本なんて絶対わかってもらえない事くらい目に見えてるからごまかしたけど・・・それよりもこの人明らかに下民って言いましたよね? もしかして聞き間違いでチキンがって言ったんだろう・・・。メイドだし、料理の材料も気にしないとね。


「さて下民の雅さんは先ほど職業を探しているとのことで、通行人に恥も隠さず下民らしく乞食の様に仕事が欲しいと懇願していましたね」


「うん、完全に下民って言った。しかも続けざまに2回も言った、しかも乞食とも言われた」


「お気になさらず」


「気にするわぁ! 口悪すぎだろあんた!」


「あんたじゃないです、メイ・バッカスです」


「なにちょっとムッとした表情になってんだよ!」


「お気になさらず」


「くそ!便利だなそのフレーズ!」


「お気になさらず」


「うるさいよ!」

前言撤回、超可愛いと思ったけど全然可愛くない!

メイドってもっとお淑やかなもんじゃないの?


「それよりもメイさんだっけ? どうして俺に声をかけてきたんですか?」


まさか下民って言いただけとかじゃないだろうな・・・。


するとメイドのメイさんはまた感情の読み取れない無表情に戻ってこちらをじーっと見てきた。あまりにも見てくるので目をそらす。なぜか心の中を見透かされてるような、思考を読み取られているような、そんな感覚に陥ったからだ。

だが静寂は破られた。


「萩村雅様、あなたに紹介したい仕事がございましてお声をかけさせていただきました」


「へ?」


思わず素っ頓狂な声が漏れる。


「アスター家公室でのお仕事に興味はございますか?」


母さん、父さん・・・天狐・・・仕事が決まりそうです。

俺はメイさんからの申し出に内心ガッツポーズを決めた。


「興味津々です」


こうして、仕事探し初日にしてミッションが達成された。

この後に過酷な運命が待っているとも知らずに・・・・・・。



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