一章‐3 びっくりするほど死ねない
神様に願った事はどうやら無事叶ったようだ。
痛覚をなくしてもらう。
不死身とかでもよかったけど、多分その願いは叶えられない。
だって神様が言ってたこの世界のパワーバランスが崩れるに該当するであろうものだったから・・・。
もし痛覚だけをなくすならば、死ぬことにはなるけど、痛い思いはせずに済む。
我ながらあの状況でこの判断をできた自分をほめてやりたい。
だが一つ問題が・・・・・・。
死ねない・・・。
いや、普通なら死んでいるはずなんだけど、びっくりするぐらい死ねない。
体の色んな部分がちぎれたりしてるのは感覚的にわかる。血も出ている。
それとこのドラゴン・・・口に入れたっきり飲み込もうとしたりせずに、口の中に物を入れて遊んでいるようにも感じてきた。
しかもそれほど噛んでこない・・・・。
痛覚があったらゾッとすることこの上ない・・・。
「おーい・・・死ねないんですけどぉ」
死にたくはないが、この状況下で助かる見込みはないことくらいわかる。
人間の脳は案外お粗末なのかもしれない、痛みを認識しないだけでこんなに長く生きれるというのだから。
まぁ、その分致命傷負ったとき気づいたら死んでるなんて笑うに笑えないけど・・・。
そんなことを考えていたらドラゴンの口がおもむろに開いた。
「え?え?」
突然の出来事にびっくりする。
ドラゴンの口の中で唖然としていたら、なんと吐き出された。
えぇぇ・・・
ちゃんと食べられなかったショックも少しあった。生き物が食材として提供されたとき、残飯として処理されたときはこんな気持ちだったのだろうかという悲しい気持ちにもなった。
しかし吐き出されたのはいいがなかなか地面につかない。
「え?まさかこれ空?」
ドラゴンは空中移動中に俺をもてあそぶだけもてあそんで吐いたのだ・・・ガムのように・・・。
そのまま俺は空から落ちていく。
地面に向かって・・・。
今度こそ死ぬ。
痛みはないまま死ぬのだろうが恐怖という感情はぬぐい切れない。
そしてその時が来た。
バサバサバサバッ!!
地面に直行で落ちて行っていたのと思っていたがどうやら、森の上で吐きだれたようで木々がクッション代わり(?)になっていく。
運がいいのか悪いのかよくわからない。
そしてやっと地上に落ちてきた。
「うわぁ・・・まだ生きてる・・・どうしよ・・・」
痛みはないが何とか動く首だけを横に動かしたり、周りを見ると、脚が二本落ちていた。
まぁ、まぎれもなく俺の足なのだが・・・。
「あぁ、俺のあんよが!!!!ホラー映画かよ」
言うてる場合かと思うが、自分のちぎれた足を見て平静を保てるほどのメンタルは持ち合わせていない。木々に引っかかりながら落ちてきたときに、ちぎれかかったのがちぎれてしまったのだろう・・・。
それと残念なお知らせ。意識が朦朧としてきました。
死ぬのは怖いが、今の自分の置かれてる状況も怖いので早く死ねないかなぁなんて思っていたので丁度良かった・・・。
「さぁ、このまま眠ったように死ねるかな・・・」
そういいながら目をつむる。
もう、次は転生せずに地獄宴会とかに参加して楽しく過ごそう。
「うわぁ! なんじゃこりゃ! なんでこんなところに人間の死体があるんじゃ!?」
突然素っ頓狂な声がした。
せっかくつむった眼を開いて声のした方向をみる。
「お、おぉ、お主まだ、い、生きとるのか・・・? 大丈夫か・・・?」
その姿は人間の姿の可憐な少女だったが人間とは明らかに用紙が異なる部分があった。頭から生えてる狐耳は、それはもう可愛くて、可愛くて、撫で回したいと思うほどに立派でした・・・。
「狐さん・・・もし助かる見込みがあれば助けてください」
俺は無責任にも初対面の狐耳の少女に助けを求めた。
もし、まだ助かるのなら、生きれるのなら・・・生きたい!
死ぬのが怖くて怖くて仕方がない。
「お、お主・・・泣いておるのか・・・ま、待っておれ! すぐに助けてやるからな!」
そうか、目がかすんで見えなくなってきたのは、泣いていたのか・・・。
だが、意識はもう保てそうにない・・・。
狐耳の少女が俺の頭に手をかざして何かを唱えている。
音が遠くなる。
視界が暗闇に包まれる。
もう死んだのかどうかもわからない。
そして、そのまま俺は・・・----------------------------------------------------------------