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一章 神様の気まぐれ

「やりおったな! やりやがったな! 萩村雅!」


俺が大草原の上で唖然としていると、先ほどまで一緒にいた神様の声がどこからともなく聞こえてきた。


「こいつ、直接脳内に・・・!」


「うるせえよ、てめぇなんてことしてくれたんだよ!」


ありえないくらいにキャラ崩壊している神様に若干引きつつも何とか平静を保って対応する。


「まぁまぁ、落ち着けよ。仮にも神様なんだからそんな言葉使いは似合わねえぞ?」


「うっせぇ!殺すぞ!」


やっべぇ・・・めっちゃ怒ってる・・・冗談抜きで・・・。

普通言うかね、神様が殺すぞとか・・・。

神様のこの一言で、俺が何かとんでもないことをしたことが何となくわかってきたが、未だに説明がないのでこの状況の意味が分からない。


「わ、悪かったよ神様・・・まさかそんなに怒るとは思わなかったんだよ」


「ふん! もう遅いわ! もうどうやったって取返しつかんからな!」


「いやいや、神様・・・そっちに戻ればいい話でしょう?」


「こっちに戻る? あほか! 生き返った人間がこっちに戻るなんてことできるか! できるとしてももっかい死ね!」


いいのか? 神様がこんなに口が悪くていいのか? 確かに勝手に扉開けた俺が悪いんだろうけどさ・・・。ちょっと待て・・・。


「お、おいおい神様今なんて言った?」


「あんたを殺して私も死ぬ!」


「言ってねえだろうがぁ! なんでちょっとヤンデレ風なんだよ! そうじゃなくて生き返った人間がとか言ってたじゃねえか!」


「だから死んでよぉ・・・お願い~」


「だから待てって言ってんだよ! ちゃんと説明してくれ、俺は生き返ったのか!?」


「あぁ~どうしてこうなったかね・・・ちょっと待ってろ。この糞童貞野郎が」


「どどどどどどどどどどど童貞ちゃうわ!!!」


俺がそう叫ぶと、神様は沈黙した。

その沈黙の間俺も周囲の情報を確認する。

本当に信じられないくらい草原。

遠くを見てもサバンナかよってくらい地平線が続いていた。サバンナ行ったことねえけど。

だめだ、情報量がある意味では広すぎて大きすぎて、ここがどこなのか、はたまた日本なのかもわからない。一つ言えることは不気味なくらい静かなことだ。

歩き出そうにも方角もわからないし・・・。


「だめだ、なんにもわからん。 おーい神様―、俺どうしたらいいの? もしかしてそっちに戻る扉とかここに召喚されんの?」


だがしかし、回答は帰ってこなかった。

なんだよ、肝心な時にいねえのかよ神様は・・・。

そういやおなか痛いときとかよく神様に祈ってたなぁ・・・。あの神様じゃ大笑いしてその光景をみて楽しんでそうだけど。

そう思い、その場に座る。草がふわふわしてて気持ちいい。

穏やかな時間だ・・・。

俺を照らしている太陽も暖かく、このまま寝てしまいそうだ。

空を見上げると雲一つない快晴。

あれだけ静かだった、草原の上を鳥たちが飛んでいる。

バサバサと、バサバサとそれも次第に大群になり空を飛んでいく。


「あ、あれ? ちょっと数が多くない?」


鳥の大群は一斉に同じ方向に向かってまるで何かから逃げるかのように飛んで行っていたのだ。

その光景をただ唖然と見守る。



「ふぅ、何とかなったわ・・・」


すると今まで不在だった神様が戻ってきた。


「あ、神様!どこ行ってたんだよ、一人にされて不安だったんだから」


「ふん、あほが、雅ちゃんの為にその世界での転生申請書類を手配してたんだよ、この馬鹿たれ」


うわ、一気にあほとバカ言われた。

いやいや、そんなことより


「転生申請書類ってなんだよ?」


「はぁ、雅ちゃんが開けた扉は雅ちゃんとは別の世界へ転生する扉。希望者にはその世界に転生してもらって暮らしていくって選択肢があるの」


「おいおい、ちょっと待てよ、そんなこと聞かされてなかったぞ」


「・・・・・・」


「おい黙るなよ」


「まぁ、言い訳はしない。説明するのが割とめんどくさかった」


「すがすがしいほど正直だな!おい!」


「まぁ、あと一つ問題もあってな・・・。」


「はぁ?問題」


俺がそう聞くと神様はその問題とやらを話し出した。


「最近、その異世界への転生が何故か人気でなぁ、地獄へ行く人数の比率が圧倒的にすくなくなってきたのよね。地獄の住人もこれではダメだとイメージをよくしようと頑張ってるんだけど・・・」


「あぁ・・・だから地獄の人たちあんなに明るく宴会して入りやすくしてたのか・・・」


逆効果のようにも見えるけども・・・。


「でもさ、なんで天国と地獄だけじゃないんだ? 別の世界への転生なんて制度やめればいいじゃないか?」


「天地創造」


「は?」


「神様の私が、面白半分で作ったら・・・はまっちゃって・・・」


「あんたが原因なら仕方ねえじゃんか・・・」


「うるせぇ!もとはといえば雅ちゃんの世界に魔法とか、ファンタジー要素ないから?下界の様子見てても面白くないし?S〇MCTY感覚で作った結果がこのありさまだよ!しかも作った手前、この世界の住民とかに情が沸いてるから、少しでも繁栄できるように転生者導入制度取り入れたりしたらしたで過酷な生活環境で死ぬし!モンスターにやられて死ぬし!」


そんなこと言われても知りませんがな・・・と言いたいが、神様の言葉に引っかかる部分というか引っかかりまくる。

魔法?ファンタジー?モンスター?

神様が遊び半分で作った世界はRPGに出てくるような世界なのか?

そんな俺の頭の整理が追い付かない中で神様はまだ喋っていた。


「あんまりにも下界の人間が貧弱だから、この世界に転生する特典で何か一つ能力あげるって言ったら、スマートフォン持っていきたいだの、女にモテるようになりたいだの、神様のあたしを連れていきたいだの、バカばっかりよ!」


これ以上聴いていたらただの神様の愚痴大会になるのでいったん止めさせてもらう。

というよりこれ以上言わせたら色々まずい・・・。本当に色々とまずい・・・・・・。


「お、おい神様、不満とか色々あるのはわかったから、それ以上はもうやめよう。それにこの異世界って言うのは神様も言っていたけどファンタジーな世界なのか? ドラ〇エみたいな・・・?」


「そのドラ〇エを知らないけど、剣と魔法のファンタジーワールドよ」


「SI〇CITY知っててドラ〇クエ知らないとか偏りすぎだろうが! よくそんなんでファンタジー世界作ろうと思ったな!」


「うるっさいわねえ、それ以上ごちゃごちゃ言ってると人生という名の冒険の書消すわよ!」


「やっぱりお前絶対知ってるだろドラ〇クエ!あぁ!糞!なんでファンタジー世界で生き返ったんだよ俺! 日本に戻りてえわ!」


「あら、意外ね、みんな刺激を求めてこの世界に転生するのに、雅ちゃんはファンタジー嫌いなの?」


「当たり前だろう・・・RPGは攻撃ターン制だったり、攻撃されても自分は痛くないし、何よりもストーリーが用意されてる。一方俺は主人公のような勇者でもないからこの世界で生きていくだけでも精いっぱいだろうが」


「案外ちゃんと考えてるのね」


「おいおい神様・・・俺は案外しっかりしてるんだぜ?」


「馬鹿みたいに笑いながらあたしの忠告無視して勝手に転生するような人間だけどね」


「うるせぇ! せめて精いっぱい生きて人生を全うしてやる!」


そんなやり取りをしていると、雲が出てきたのか大きな影が俺を覆う。



「あれ?雨でも降んのか?さっきまで快晴だったのに・・・」


「残念、その地域一帯は本日快晴なり」


「いやいや、影がでてき・・・た・・・」


言葉を失った。失ったというより言葉がでない。


その影は雲なんかではなく、どす黒い、大きな鼻息をたてて、牙をむき出しにしているドラゴンの姿がそこにあったのだから・・・・・・。


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