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地獄(異世界)へのプロローグ

萩村雅。享年一八歳。路上で歩いてる最中。工事現場の資材が体中を貫き死亡。

街中は阿鼻叫喚。文字通り地獄絵図の光景が広がる。

萩村雅は残念なことに即死ではなく。息も絶え絶えの中、約五分間の間、激痛の中、何が起こったかもわからない状況で息絶えていったのである。


「うっひゃー、当たり所悪かったね、雅ちゃん」


萩村雅は死んだ…。死んだのだが、彼の目の前にはケラケラ笑いながら彼が死んだ内容を楽しそうに告げる幼女の姿、もとい神様と自称する人間の姿がそこにはあった。


「あのなぁ、当たり所悪かったから死んでんだろうが・・・」


「はぁ?こんな串刺しの状態で死ぬなんて当たり前じゃん、あたしが言ってんのは、即死できなくて残念ねってことよ、普通、このレベルの串刺しだったら即死よ。頭に刺さらなかったことと、内臓系がそこまで損傷されなかったのがこの生き地獄を生みだしたわけね」


「めっちゃ痛かったぞ」


「でしょうね」


この自称神様、完全に他人事のように空返事をする。実際、他人事だからしょうがない。


「まぁまぁ、死んだのはしょうがないし、さっさと次の段階にステップアップしたいんだけど・・・」


「はぁ?ステップアップ?」


「やだなぁ雅ちゃん、天国か地獄かを決めるんだよぉ。この鈍感♡」


そう言って、随分と楽しそうな神様は、指を鳴らすとどこからともなく三つの扉が出現した。

一つはいかにも天国とわかるような光り輝く扉、二つ目は見た感じ地獄とわかるような禍々しいオーラをまとった扉。というよりうめき声が聞こえるので生理的にも直感的にも入ろうとも思わない扉。


「あ、このうめき声、宴会楽しんでる声だから気にしないで」


「気にするよ!、なんだよ宴会楽しんでるうめき声って!」


「地獄は陽気な奴らの集まる場所なのよ! みーんな仲がいいのよ」


「なんでそんなアットホームなんだよ!」


しかし現れた扉は三つ・・・そう、最後の扉には見た目から漂うオーラなんてものは微塵もなかったのだ。


「はーい時間ももったいないし、死人がジャンジャン他にもいるので、評決するわねー、雅ちゃん地獄行きねー、どうぞお入りください」


神様はそういうとうめき声の聞こえる地獄の扉を開放する。


「待て待て待て待てえええええ‼」


全力で止めに入る雅。水を差された神様は誰が見てもわかる不満顔をする。


「何よぉ、さっさと入っちゃいなさいよ。」


「あほか! そんな適当に地獄行きなんて決めつけやがって! せ、せめて罪状読み上げるとか、地獄行の理由を述べるとか!」


「チッ・・・めんどくせぇー」


「あー!今めんどくせーって言った! 言ったよね!?」


「言ってねぇよ、言ったとしても『めんそーれ』て言ったのよ」


「ありえねえだろ! なんでこのタイミングで沖縄の方言だすんだよ! 意味不明だし!」


【めんそーれ!!!】


「うぉお! 地獄の奴らからまさかのめんそーれ! ぜってぇ行かねえぞ! 少なくとも俺が納得しない限り地獄には落ちねぇぞ!」


【シュン・・・】


「案外かわいいな! 地獄の奴ら!」


雅は再び神様を見据える。

あまりにも理不尽なこの状況、理由もわからず地獄に行くほど雅も都合のいい男ではないのだ。


「はぁ・・・・・・わかったわよ、雅ちゃんが地獄に行く理由を教えてあげるわ、まじめんそーれだけど」


「いや、もうめんどくせーって言ってもらって大丈夫、俺の中の神様の印象めっちゃ悪いし」


「まーじ、ホ〇メンドーサ」


「いや、もういいから、最強のメキシコのボクサーの名前とかもういいから・・・ってかあれだな、神様って結構俗世にどっぷりつかってんだな・・・」


雅は知った。死んだ状態でも疲れるということに。

そんな死んでから知っても意味がない知識を得、神様からの罪状が読み上げられる。


「萩村雅、ただいまよりあなたの罪状及び、その魂の行く先をここに正式に読み上げる」


「あぁ、俺が納得するような罪状で頼むぜ」


内心雅は、最初から罪状読み上げてくれてたらこんな無駄な時間なくて済んだんじゃね?と思っていたがグッと我慢する。そして今読み上げられる罪状に緊張してグッと身構える。もう我慢なのか緊張なのかもわからなくなってきていた。

そして神様が口を開く。


「罪状・・・親より先に死んだこと」


「は?」


思わず身構えていた体から力が抜け、素っ頓狂な声が出る。

神様は続けざまに言う。


「あなたが、路上で串刺しになった報告を受けてから母は泣き、そんなあなたの母を必死に慰める父、死体確認のために行けば、あぁ・・・見るも無残な息子の姿、母は息子じゃありません!と半狂乱。父はそんな母と息子を無言で見つめ、溢れる涙が止まらない。そして・・・」


「もうやめろおおおおおおおお!!!ごめんなさいいいいい!おかさああああああん!おとうさあああああああん!!」


「というわけで、雅ちゃんが死んだせいで両親泣いちゃってたのよね、まぁ親より先に死ぬっていうのは下界の人間たちにとっては罪という認識が薄いかもしれないけど、死因関係なく罪なのよね。でも安心しなさい、事故とか病気で亡くなった人には温情はあるから。」


「うぇえ?温情?」


雅は両親を想い、号泣し、それでも前に進もうと何とか神様の言葉に耳を傾ける。

神様はそんな雅のことをお構いなく話を続ける。


「地獄っていっても、雅ちゃんがイメージしてる地獄とは別なのよ」


「・・・と、いいますと?」


「ほら、さっきも言った通り、雅ちゃんが行く地獄には毎日のように宴会が行われているエリア、本来なら人生を謳歌するはずだった時間をこの地獄に費やすの。」


「じゃあ、天国は・・・?」


「自分の理想とする次の転生先を選べるわ」


「わぁお、すっげーチート」


神様はひとしきり説明は終えたといわんばかりにどや顔を見せつける。

そして、もう一度地獄への扉を指さす。


「さぁ! これでいいでしょ? 疑問も未練も無事解消! レッツ死後の世界へ~」


地獄で宴会している人たちも歓迎している様子だった。

どす黒い色をした世界から手招きをして笑い声が聞こえる。

しかし、雅には疑問が一つ残っていた。

それは、三つ目の扉。

この扉については、なんの説明を受けてないのだ。雅はこの疑問を神様にぶつける。


「あ、あのさ、この三つ目の扉はなんなんだ? 天国でも地獄でもないんだろ?」


「トイレ」


即答だった、あまりにも即答過ぎたので雅の疑問が、疑心へと変わる。


「ちょっと待てよ神様、トイレだとしたら不自然じゃないか?」


「だ、男女共用よ・・・」


「いーや、男女共用?そんなことを気にしているんじゃない、大体、扉が同時に出た時に天国への扉、地獄への扉、トイレへの扉が同時に出たとしたら不自然極まりないだろうが・・・」


「ま、まぁそんなことはいいじゃない、さっさと地獄へ行きなさいよ、 ほ、ほら! みんな新人歓迎会の準備してるし!」


「準備中だろ?ならまだパーティの主役が行くには早いなぁ・・・そうだろ?地獄のみんなぁ!」


【もう少しで準備終わるから待ってね!】


「さて、地獄のみんなもこう言ってる・・・・。神様、答えてもらおうか・・・この扉の先には何があるのか!」


雅は神様に詰め寄る。そう、天国への扉はあからさまに天国とわかる見た目だ。

説明は本来なら欲しいところだが不要だ。

だがしかし、この扉については説明どころか、聴いても答えてくれないときた。

この先に何があるというのだ。


「雅ちゃん、目が怖いよ・・・まさかこの扉開けようだなんて思ってないよね? ね?」

「俺はなぁ、神様・・・一度気になってしまったことや好奇心に駆られたら最後・・・止められねえんだよ・・・」


「雅ちゃん!落ち着け! そんな決まった風に言っても全然かっこよくないぞ! いいか? この扉の先には何もないんだ!」


「はぁ・・・わかったよ」


「ほぇ?」


「だから、分かったって言ったんだよ、この扉の先のことは気になるけど、俺の罪状では地獄行なんだろ? 思えば天国の扉もこの謎の扉も、俺が見る資格がないということが分かったんだよ。 それにこれ以上神様困らせるのもかわいそうだしなぁ」


「雅ちゃん・・・!」


そう言って神様は涙ぐんだ、相当この先の扉のことは秘密にしておきたいのだろう。

そうして雅は本当にあきらめたのか、地獄の扉の前に行く。


「よし、神様、これ以上ここにいる必要はもうないな、 さっさとこの扉の向こうに行くぜ」


「よ、よーし、雅ちゃんの新たな門出を祝って雅ちゃんに祝福の言葉を贈るわよ!」


【歓迎会準備できました!】


「ありがとな、神様・・・。短い時間だったけども楽しかったぜ・・・。いつかまた会えるといいな・・・」


「雅ちゃん・・・。か、神様はいつもここからあなたを見守るわね・・・!」


そう言って神様はにっこりとほほ笑む。

そして雅は見逃さなかった。神様が見せたこの隙を・・・。

その刹那、雅はトップスピードで駆け出した・・・三つ目の扉へ!

神様は微笑んだまま、まだ体は動かない。そして何が起こったかを理解した時には時すでに遅し・・・!


「雅ちゃああああああん! あなた何考えてるのおおおおお!!!!????」


「いっただろおおおおがああああ!!!俺の好奇心は止められねえってなああああ!!!うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」


好感度なんて糞くらえというような笑い方をし、雅は扉のドアノブに手をかける。


「さぁ、この扉の先は一体何なんだあああ!?」


雅が扉を開く・・・

後ろから聞こえる神様の罵声が遠のいていく。

そして萩村雅は・・・。











俺、萩村雅は気づいたら。草原の上で寝ていた。


「あれ・・・?ここ・・・どこ?」


ここが天国でも、地獄でもない、異世界だと知るのはこの後の出来事だった。


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