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吸血忌譚  作者: 腹痛朗
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現れたものは

 車の窓から見知らぬ景色を見ながら、ぼーっとしていた。このあたりは精々民家がある程度で、その家の暮らしを想像するなんてちょっと失礼な遊びをするくらいしかやることが無い。


「さっくーん、暇だなぁ」


「同意、でも、寝ないようにね、短い時間だと、起きるの辛くなるから」


「大丈夫だ、オレの余剰エネルギーはあと2時間の活動猶予がある」


そんなことが正確にわかるなんて凄いなこの娘は。ちょっとだけ尊敬してしまった。

しかし、望に寝るなと言った自分が寝てしまいそうだった。頭が重い。

だが、僕はそれに気付かなければならない。

睡眠欲が体を支配する。

だが、僕はそれと対峙しなければならない。

ついに目を瞑った。

______ならば、そこを代われ。

車のドアが開く。そこから躊躇いなく、『我』は体を踊らせた。

普通の人間なら大怪我をするだろう。だが王たる我の体は傷付かない。

背後から仲間と眷族の声がかかる。どうやら我の身を案じているらしいが、それは無意味だ。

我が見る先には、暗黒があった。それは普段見る悪意などではない。そもそもあれは我の片割れの力だ、我が使える道理は無い。

暗黒に意志は皆無だ。ただ我に向けてその暗黒の一部を矛のように伸ばしてくるだけ。それに触れてはいけない。暗黒の核を砕かなければ。

我は暗黒の針を避けつつ、暗黒に近付いていく。

彼我の距離は10メートルほど、全力で踏み込めば1歩だが、彼奴の針は厄介で、手が届くまでに10秒ほどかかった。

暗黒は最後の抵抗に全身から針を放つが、もう無駄だ。我がそれを避けたのは動きを止められるのが嫌だったからだ。暗黒に手を突き込み、核を握れた今では、どれだけ体を貫かれようとも関係ない。我は全力を込めて核を握り潰した。

さて、片割れに体を返すとしよう、我はただの機構だ。あまり体の主導権を握ってはいけない。

振り向けば眷族と仲間が駆けてきていた。

善い、善い。彼奴等は曇りが無い。我好みだ。最後に薄く笑って、我は片割れを起こした。



***



意識が戻る。だけどそれは曖昧で、微睡みの中にいるようだった。

……そうか、寝ていたんだろうな、車の中から見る景色も変わっているし。

でも、望もアリスも、僕を心配そうな目で見ているのは何事だろう。


「おはよ、ごめんね、言った本人が寝ちゃって」


その心配を拭うために微笑んだ。でも2人とも、顔をしかめている。


「源十郎」


「あいよ、わかってますぜ」


源十郎さんは煙草を吹かした。その煙には匂いが無い。ということは源十郎さんの能力だ。

僕はその煙を受け入れる。


「あー、こりゃ駄目だな。と、坊っちゃん、お嬢は体を洗う時うなじから洗う」


「ちょっと源十郎!いつ覗いたの貴方!?」


「アリス落ち着けって、今はさっきのさっくんの話だろ」


「こほん、そうね、源十郎、後で覚悟しなさい、それで、駄目というのはどういうこと?」


「それが、いくら探っても、さっきの記憶1つありゃしねぇ。俺の能力は、例え解離性同一性障害の人間だろうが効くんですがねぇ」


源十郎さんの言っていることがわからない。

多重人格がどうしたっていうのだろう。


「ねぇ朔君、貴方、さっきの記憶はある?」


「さっきって、僕、寝てたんでしょ?」


アリスは難しい顔をした。なんだろう、寝ている間に奇跡的にセクハラ行為を働いてしまったとかだろうか。


「覚えてないなら良いの、眠いなら寝てなさい」


「さっくん、さっくんは、さっくんだよな」


「望、それゲシュタルト崩壊する……」


意味不明な状況だけど、寝て良いなら寝ていようか。

僕は体の気だるさに身を任せるのだった。

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