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吸血忌譚  作者: 腹痛朗
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望まなくてもそれを活かせば

 アリスが連絡し終わってから、僕等は源十郎さんの車に乗って茶会の拠点へと向かっていた。


「感情が見える目、か。吸血鬼は魅了の魔術やら魔眼やらの伝説もあるが、感情が見えるってのは初めて聞くなぁ」


アリスから説明を受けた源十郎さんが、煙草を吹かしながらそう呟いた。


「これは吸血鬼の能力とはまた違ったものだと思います、幼少期のトラウマというか、経験というか、そういったもののせいで、昔から感情じゃなく、他人の悪意や敵意が見えていたんです、それがつい最近こんな風になったんです」


一応細部まで解説したが、源十郎さんは興味無さげに「ほ~ん」と曖昧な返事をしただけだった。


「つーかさっくん、なんで相談してくれなかったんだ、子供の時からそうだったんなら、オレくらいには、言ってくれたって良かったじゃないか」


「あはは、実は、最近まで忘れてたんだ、能力があるっていう自覚はあったんだけど、榊原の家に引き取られてからは、悪意なんてあんまり向けられなかったし」


「さっくんって、変なとこ鈍感だったり無頓着だったりするよな」


「色恋沙汰なんかは、苦手そうよね」


「そう言われたら、何も言えないなぁ」


いつも側に望がいたから、女性慣れしているとは思うけれど、それ故に扱いがさっぱりしていて、恋愛対象として見られたことは無いんじゃなかろうか。


「ま、さっくんにはオレがいるしな、他の女に見向きする暇なんて、オレが与えてやらない」


「そういうことだね」


別に、恋愛がしたいという願望も昔から無かったのだ、欲望が無いといえば無い。常に現状に満足するようにしている。


「貴方達のあり方は、中学生の男女としては変だと思うけど」


「家庭事情からして特殊だしね、あ、そろそろ着くかな」


話が一段落したところであの白い博物館が見えてきた。



***



今日降りたのは5階で、そこは病院のワンフロアのような雰囲気をしていた。ここは全体的に広いし白いし、博物館だと知らされなければ病院かと思わせるから、それも当然かもしれないが。


「こっちよ、付いてきて」


一室の扉を開けながら、アリスが手招きした。案内に従って、診察室のような部屋に入る。


「いらっしゃい、そっちの彼が患者さん?」


迎えてくれたのは白衣を着た女性だった、雰囲気が柔らかく、『色』も淡めで優しそうだ。なんとも女性らしいという印象を受ける人だった。


「彼女は藤井鈴音さん、異能の診断のスペシャリストよ」


「そんな風に言われると気恥ずかしいけど、そんなわけだから、そこに掛けてね」


鈴音さんに促されるまま、丸い椅子に座る、と同時に鈴音さんが僕の胸に手を当ててきた。その指は柔らかく、ほのかに体温が感じられて、何やら色気を感じる。望が怖いから、デレデレするわけにはいかないけれど。


「ごめんね、こういう方法じゃないと、私の能力は発揮できないから」


そこからは無言で、非常に集中しているようだった。途中からなんとなく、体の中を痛みなくまさぐられるような妙な感覚がして驚いたが、その感覚があってすぐに鈴音さんは手を離してくれた。


「変な感覚したでしょう?私の能力は元々医療的に使うものではないから……」


「いえ、お気になさらず、仮に内臓が破壊されても、不死身なので」


冗談めかしてそう言ったら、鈴音さんの『色』が揺らいだ。


「朔君、貴方って人は、一言多いのよ」


「いいのアリスちゃん、偶然だし。朔君っていうのかな、君、鋭いね、そう、私の能力、赤の女王クイーンズ裁決ジャジメントは本来、相手の体に触れて肉体的、霊的に破壊するの、その過程で、その人の悪いところや異能力が見えるだけ」


途端に申し訳なくなって、謝罪をしようとするが思ったように言葉が出ない、沈黙ばかりが空間を満たしていく。


「あー、暗い暗い、鈴音さんだっけ?能力が望んだものじゃなくても、今こうやって役に立ってんだから良いじゃねえか、どうしようもないことより、どうにかなることを考えた方が人生にゃよっぽど得だぜ」


望のポジティブシンキングに、ハッとして鈴音さんが顔を上げた。


「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいわ、えっとそれで、朔君の能力だけど、魔眼の一種ね、スイッチが壊れてたから、任意でオンオフできるように直して……私の能力の特性上、壊れてたところを壊して正常にしたわけなんだけど、そういうわけだから、不便じゃなくなったはずよ」


言われて、試しにオフにするよう思い浮かべてみる。確かに『色』が消え去った。なるほど、壊れてたところを壊した、つまり壊れていたという事実を壊したのか、恐ろしく応用の効く能力だ、彼女が熟練しているのもあるのだろうが。


「ありがとうございました、助かりました」


「どういたしまして、また不都合があったら来てね、あ、カウンセリングも出来るから、思春期の青少年の悩み事も受け付けてるよ」


ウインクをする鈴音さんは、あざとさがなくて、素直に魅力的だと思った、望が怖いからあまり考えないようにしておくけれど。

そんなこんなで、僕の当面の問題は解決されたのだった。

鈴音さんのキャラが気に入ったのですが、微妙にアリスと口調が被っているので登場させるシーンを作るのが難しそうです。彼女の身体能力はどうあがいても一般人レベルなので戦闘にも出せませんしね。

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