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龍と神に贖罪を。  作者:
出会い
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1

 目が覚めれば、見覚えのない景色。見上げれば、雲一つない青い空が広がっている。そして、私の周りを覆うようにして囲む背の高い木々。そりゃあ、見覚えあるわけないよね。

 なるほど、ついに親に愛想つかされて、こんな所に放置されてしまったのか。残念だ。


 そんなことを考えながら、重たい体を起こした。辺りには人も動物もいないからか、とても静かだ。おかげで、関節がバキバキと音を出したことがハッキリとわかったよ。まぁ、気にしない、気にしない。


 背の高い木々の隙間からは、またさらに木々が見えるので、ここは森なのだと理解した。

 振り向けば、自分の後ろに立派な家がぽつんとある。正にお嬢様が居るようなお屋敷だ! というほど大きい家ではないけれど。それでも、普通の家よりは圧倒的に立派な家だと思う。


 下手に動けば、そのへんで実はいましたみたいな感じの動物の餌になってしまう。そう思った私は、その家を訪ねることにした。

 ここがどこで、今は何時で、どうやったら元の所に戻れるのかを聞くために。


 別に、今すぐ戻りたいわけじゃないけど。ただ、このまま永遠に森の中なんてことになったら、困るのは私だからね。でもまぁ、つまらない日常が壊れるのならば、それもまた良いものだ。

 満足したら、まぁダラダラと戻れば良いかなぁ、ぐらいの気持ちでいたが、後になって私は、自分の考えを恨んだのだ。

 あぁ、あの時すぐに帰っていれば良かったのに、と。



「誰かいませんか?」


 トントン、と軽く扉を叩き、お決まりのセリフを気だるげに言う。これを十回ぐらい繰り返しているのだが、なかなか返事がこない。だんだん体が傾いて、まさに怠そうな人になっている。ははは。

 この作業、飽きてきたなぁ。体も痛くなってきたし。そう思って、家の扉に背を預けて座った。

 あ、でも私にしては行動的じゃないかな。だって、この作業を十回も繰り返したんだよ?


「……はぁ」


 何度ノックしても返事が来ないので、ため息をついた。

 落ち着いて考えてみると、地面に倒れていたわけだから、服も顔も砂や泥だらけだ。

 そのことに気づいた私は、乱暴に自分の顔を袖で拭い、汚れた髪を手ぐしで整えた。

 その時、服や髪の色が変わっていることに気づいた。最初、私は自分の部屋で寝ていたので、黒色のジャージを着ていた。しかし、今は白いワンピースを着ている。所々、砂で汚れてはいるが。

 髪の毛は、肩までの長さで黒髪だったが、今は金髪で腰に届きそうなほど長い髪になっている。さっき起きた時、なんかいつもとは違うなーとは思ったんだけどね、ビックリしたよね。

 まぁきっと、幻覚なのだろう。と、現実逃避をして、そこには深く触れないことにした。


 うーん、ノックをしても返事もないし、ドアも鍵がかかって開かないし、このドアにもたれかかって寝ようかな。つまりは、占領ですな。

 家の人出られなくなっても知らないもんね。返事しなかったのが悪い。ざまぁ。




 あぁ、良く寝た。最近、夢を見なくなった気がするなぁ。

 そんな事を思いながら目を開けると、分厚い本を持った変な男と目が合った。


「オッサン、誰」

「初対面でオッサンて、酷くないかな?」


 若い女の子の寝顔見てニヤニヤしてたオッサン(実際は無表情だったけど)とか……。

 なに、私狙われてるの? 逃げた方が良い? おまわりさーん。


「あー、まぁ、その、この辺りは人なんて滅多に来ないからよぉ。人がいてビックリしたんだ。本物かなーなんつって」


 面倒そうな人だったので無視をしていたら、オッサン(呼び方はこれで決定)はへらへら笑いながら言った。


「あのさー、ここ、俺ん家だからぁ、退いてくんない?」


 無言で退いて、少しだけ睨むと、オッサンは顔を引きつらせながら、どうも。とだけ言った。

 オッサンは鍵をズボンのポケットから出して、扉を開けた。オッサンの後ろに続いて、私もナチュラルに入った。


「おいおい、なに普通に入って来ちゃってんの? 俺、君からしたらオッサンなんだろぉ? 危険じゃねーのか」

「大丈夫。オッサンはオッサンだけど、ヘタレだと思うから」


 私が、家の中をキョロキョロと見ながらそう言うと、オッサンは落ち込んだようだった。

 本当の事を言っただけだし、私悪くない。そう思いながら、高級そうな見た目をした、布張りのソファにダイブした。見た目通り、手触りも寝心地も最高。布張りのソファって暖かみがあって良いよね。オッサンにしては、なかなかやるなぁ。


「ちょ、なんで寝てるの⁈」

「私、今日からここに住むから」


 オッサンは驚いた顔をしたままその場で停止した。私は、気にせずにソファで寝転ぶ。

 あー、このオッサン面白そう。今までの退屈な日常を壊してくれる、最高な人だといいな。

 そう思いつつ、笑顔で言った。


「これからよろしく、オッサン」

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