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龍と神に贖罪を。  作者:
出会い
15/32

14

 テッドやリリアンが出ていった後、しばらくしてから、アロンドさんとエイナル先生が部屋に入ってくる。

 アロンドさんは、戦闘用の衣装のままこの部屋に来ているので、なんだか変な感じがする。


「目を覚ましたか。調子はどうだ? って、何で怒っているんだ」


 私がエイナル先生に、恨みをこめた視線を送っていると、アロンドさんに指摘されてしまった。


「エイナル先生、もしかして……あれが目的だったんですか」

「おや、悠陽さん。あれとは、何でしょうか。私にはよくわかりません。が、貴方にもすぐに友人ができたようで、私は嬉しいです」


 明らかにわかっているよね、エイナル先生。

 テッドが大嫌いな私は、自らテッドに近付こうとはしない。少しでも距離を縮めるために、エイナル先生は、わざとテッドに私が倒れたことを伝えた。そう推理したわけだよ。私は。

 アロンドさんを見れば、苦笑いをしていた。どうやら、アロンドさんも知っていたみたいですねぇ。

 私がアロンドさんを睨むと、アロンドさんは慌てて目をそらす。


「とりあえず、今日はゆっくり休むこと。わかったな?」


 私がこくりと頷くと、アロンドさんは満足そうに笑い、私の頭を撫でた。

 そして、アロンドさんは旅の準備をするらしく、さっさと部屋から出ていった。

 エイナル先生は、まだここにいる。


「すみませんね、悠陽さん。どうしても、テッド・ミラーさんの事が知りたかったので、つい」

「つい、じゃないですよ! もう、すごく面倒な事になったじゃないですか~」

「悠陽さん、落ち着いてください」


 私が軽く怒った様子を見せると、エイナル先生は苦笑いをしながら、私をなだめようとする。

 まぁ、私もそんなに怒っているわけではないから、この辺りでやめにしよう。

 それにしても、どうしてエイナル先生は、こんなにテッドのことを調べようとするのだろうか。

 そのことを聞く前に、エイナル先生は話し出した。


「実は、ですね。テッド・ミラーさんは、家族がいないんです。どこから来たのかも不明なので、少し……いえ、かなり気になっていたのです。ですから、これは良い機会だと思いまして」


 テッド・ミラーという人物は、思ったよりも異質な存在らしかった。

 そして、エイナル先生が個人的に調べたところ、テッド・ミラーという名前も、偽名だということが判明したらしい。


「そう、ですか。でも、私も気になるんです。何というか……無理をして、別の人になろうとしている、というか。よくわからないけど、違和感を感じるんです」


 エイナル先生は頷いて、私の頭を優しく撫でる。


「私の生徒は皆、重くて辛い運命を背負っていますね」


 そう言って、エイナル先生は辛そうな顔をしながらも、私に笑って見せた。


「先生……?」

「すみません、私もそろそろ戻ります。また、明日ここに来ますから」


 やっと表情を見せるようになったエイナル先生は、別れ際には、また無表情に戻る。

 感情がないわけでも、表情を作れないわけでもない。

 エイナル先生は、どうしていつも無表情でいるのだろうか。

 エイナル先生もまた、重くて辛い運命を背負った人なのだろうか。


 もしそうだとしたら、私はエイナル先生に、何と声をかければ良いのだろうか。




 エイナル先生も私の部屋から去った後、私はベッドでずっと横になっていた。

 もう一人の私と名乗るアイツは、私の本当の体は、この世界のどこかで、神様によって厳重に保管されていると言った。

 もしそれが本当ならば、私はそれを見つける旅をしなければならない。

 この世界のどこかにある私の体を探すとなると、当てもなく歩いていくことになるだろう。

 安全なところで、ぬくぬくと育った私は、そんな事に耐えられるのだろうか。ましてや、私なんて、堕落しきった人間だ。もう、諦めた方が良いのだろうか……。



 まさか、数日でこんなに急に状況が変わるなんて。正直、異世界ナメてました。

 さて、明日は忙しくなりそうだし、今のうちに寝よう。

 再び私はベッドに寝転がり、眠りについた。

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