貴方へのラブレター
詩です。
若干危険な香りのする作品ではありますが、もちろんフィクションです。
ねぇ、覚えてる?
あの夏の日のこと。
あの夏の日の約束。
わたしは覚えてるよ。
あなたの言葉、一つ一つを…。
出会いが浅はかだったからなのかな。
あなたはあっという間にわたしの前から消えてしまったね。
打ち上げ花火の最後の連発が、夏の終わりを続けるように…
あなたとわたしの恋も、呆気なく終わりを迎えてしまったんだね。
もう顔も思い出せないよ。
声も忘れてしまったんだ。
最後のあなたがどんな顔で、どんな声で、
「また会えるだろ」
って言ったのだろう…。
考えても答えは見つからないのに、
思い出だけに縛られて、足を捕られて、
わたしは前に進めないの。
後ろを振り返っても歩いてきたはずの道はなく、
前を向いても暗闇が続くばかり。
滓かな光さえも射していない。
あなたを忘れるために、たくさんの恋をしたよ。
目の前の人に体を預けようとがんばったよ。
なのに、あなたの言葉がわたしに絡み付いて、
どうすることもできないの。
「好き」「愛してる」
ありきたりな甘い言葉。
この言葉を聞くだけで、
わたしはその場から動けなくなってしまう。
怖くて、切なくて、今にも崩れてしまいそうで。
幸せの掛け橋は、
最初からゆがんでいて、朽ち果てていて、
今にも崩れ落ちそうだった。
―なのに、
それが永遠のものであると信じて疑わなかった。
幸せな約束は、
最初から嘘だらけで、偽りだらけで、
そもそも空白しかなかったんだ。
―なのに、
それが永遠の誓いであると信じて守ってきたんだ。
早く、この呪縛から解放して。
早く、この暗闇から導き出して。
早く、早く、早く……
右手の甲に残る、火傷の痕。
あなたがわたしに唯一残したもの。
煙草の「刻印」
あなたとのことが夢ではなかったと、
この傷だけが証明してくれる。
――心の傷がいつか癒えても、
この傷だけは決して消えることはない――
もうすぐ、あなたを、迎えに行くから……
ちゃんと、待っててね……
あっ
やっと光が射してきた
ほら
もうこんなにそばにいるよ
大丈夫
もう怖くないよ