004
うぅ。
目を覚ますと、僕は木で建てられた家の天井を見ていた。仄かに木の香ばしい匂いがする。
左を見ると、ベッドでサムロスが寝ている。
ここ……は?
「おっ、目を覚ましたか」
声がした方を見ると、そこにはがっちりとした白髪のおじいちゃんがいた。
頑固そうで、厳つい顔をしている。
「ここはど、痛ッ!」
体を起こそうとしたら、胸とお腹がズキズキ痛くて起き上がれなかった。
「ああ、まだ起き上がるんじゃあねぇ。浅いがまだ傷口は塞がってねぇんだからよ」
傷口? そういえば僕とサムロスは、変な生き物に襲われて......。
「ここはウィサムの隣にあるエラフ村だ。いや~驚いたわ。真夜中に子供の叫び声が聞こえたから、何事だと思って声のした所にいくと、国の王子様と子供が血だらけで倒れてるんだからなぁ」
「うぐっ……ここは?」
サムロスも目を覚ましたみたいだ。
「おぉサムロスも目を覚ましたか」
「ガルドフ、ガルドフか?! 聞いてくれ国が、ぐっ」
「落ち着け、サムロス。まず、お前らの傷と、国の王子であるお前が何故こんなボロ服を着ているんだ? それを話せ」
サムロスはこれまでにあったことを話した。
父と母であるローム王とサティ女王が何者かによって殺されたこと。弟が急に疑い深くなったこと。見たことがない生き物に襲われたこと。全て話した。
話を聞いてガルドフは驚いた様子だった。
「国でそんなことが起きていたとは。大変だったろうな……。見たことがない生き物か。お前らの傷跡から見て、恐らく『シャーマン』という魔物だろう」
「「魔物?」」
僕とサムロスは揃って聞き返した。
「こういうものが魔物っていう定義はねぇんだが。まぁ普通じゃ考えられない姿をしてたり。オレら人間だけ狙って襲ってくる生き物とか。そういう生き物を魔物と呼んでいる。シャーマンはその一種だ。村を出て少し歩くと結構いるぞ」
普通じゃ考えられない姿か。じゃあイモも魔物なのかな。
というか何故そんな凶暴な生き物がいるのに。村は襲われたりしないのかな。
「村がそのシャーマンとかに襲われたりしないんですか? 人を襲うんですよね」
「それはな~」
ガルドフは僕の右側にある引き出しから、底が丸い瓶と木のコップを取り出した。
瓶には透明の液体が入っている。
水?
「これは?」
「聖水っていう水だ。値段は結構高いがこれを村の外にばら撒くと生き物が寄ってこなくなるんだよ。あとこれ意外と美味いぞ飲んでみろ」
そう言うとガルドフは木のコップに聖水を注ぎ、僕に差し出す。
「体が……」
「仕方ねぇなぁ。首は起こせるだろ?」
首だけ起こすと、飲ませてくれた。
聖水はガルドフの言う通り美味しかった。
とても冷たく、トロトロしていてちょっぴり甘い。
そして何故か、仄かに甘さが口の中に残る。トロトロの所為なのかな?
「美味しいです!」
僕がそう言うとガルドフはニコニコしながら胸をはって喜んだ。
「はっはっはー! だろう? なんて言ったってこの聖水はオレの井戸水を使って作られてるからな。美味いに決まってる。しかも甘いのはオレの水を使った聖水だけさ! お前も飲んでみろサムロス。お前は自分の力で飲め」
ガルドフは僕が使った木のコップに聖水を注いでサムロスに渡すと、同じように首だけ起こして飲んだ。
「美味しい……! こんな飲み物があったとは。なんで教えてくれなかったんだガルドフ」
「いや~これだけは買い占められたら困るんでね~がっははは! ……でお前の弟。サムハンが疑い深くなった原因だが」
ガルドフが急に真剣な表情で話を始めた。
聖水を飲んでいたサムロスの手が止まる。
「恐らく、信じる心を奪われたんだろう」
「信じる心?」
「あぁ。詳しくは明日話そう。起き上がれなねぇのは困る。この草ちょっと食って早く寝て治せ」
ポケットから歪な形をした二枚の細長い葉っぱを取り出し、僕たちに渡す。
「この葉っぱは?」
「これは、ネムルン草というやつの葉っぱだ。傷の治りを早くしてくれるやつだ。すぐ眠くなるのがあれだが」
傷を早く治す草か。なんか美味しそうな匂いがする。
「苦い!」
食べてみると物凄く苦かった。匂いと味が真逆だ。うぅ。
「がっはははは! 美味しそうな匂いがするがそれ物凄く苦いからな。がっはははは! じゃあオレはやることがあるんでな。じゃあな」
そう言うと、がっはははは!と笑いながらなガルドフは家を出ていった。
ガルドフが家を出てから少したつと、だんだんと瞼が重くなってきた。
寝よう……。
4話です!次回もよろしくお願いします!