003
朝を迎えた僕とサムロスは昨日のことを話していた。
「昨日分かったと思うが、食事の時担当している兵士は不意に音をたてられるのが嫌いなのだ。あまりに大きい音だと驚き自分の部屋に戻ることもある、これを上手く利用すればここから出られると思うのだ。この国には城壁がないからな。しかし、肝心の大きい音をたてる手段が思い付かなくてな……」
大きい音をたてる手段か、不意に大きい音をたてられる方法……そうだ! 僕が買ったあの道具を使えば!
「これを使えば、兵士を驚かせられる!」
僕はアルミスおじいちゃんを驚かすために買っておいた大きい音を鳴らす道具をポケットから出し、サムロスに見せた。
「なんだこの赤い玉は、紐が出ているな」
「なんで音が鳴るかは分からないけど、この紐を引っ張ると、とても大きい音が鳴るんだ。これを急に鳴らせば兵士を自分の部屋に戻らせられるかも!」
「おお、すごい道具だな! よし今日。これを使って出るぞ」
「え。今日!?」
「あぁ。早くこの国を救わなければ。完全にバマンに乗っ取られるのも時間の問題だ。今日の食事の時、私が合図を出したらそれを鳴らすんだ。そして兵士が離れたら昨日の場所に一つ木で出来た扉があっただろう? そこから外に出る」
ちゃんと計画立てなくて良いのかな、上手くいけばいいんだけど……。ここ出た後どこに行くんだろう。
「ここを出たらどこに行くの?」
「昔、私たちが小さい頃いつも面倒を見てくれていた、ガルドフという者がいて、今はこの国の隣にある村で暮らしている。そのガルドフがいる村にいく。ガルドフは色々なことを知っているから、弟の疑い深くなった原因など知ってるかもしれない」
「でも村の人に僕たちのことを王様とかに伝えられたりしたら……」
「それはない。あそこの人達は良い人達ばかりだ、分かってくれる」
サムロスが言うんだから、大丈夫かな。
「分かった、じゃあサムロスが合図を出したら音を鳴らすね」
「あぁ」
*********
夜。昨日と同じ頼りない兵士が来て、僕達はご飯を食べる所にいった。今日は真っ白の皿の上にに焼いたお肉が3枚、食べたいけど食べられない……。
相変わらず、兵士はきょろきょろ周りを見ながら言う
「今日は、昨日みたいなことないようにな! 早く食べてくれ」
「すみません……昨日は」
扉の場所を確認した後僕は道具をポケットから出し、手に持って席に着いて隣にいるサムロスが合図を出すのを待つ。
きょろきょろしている兵士が後ろを向いた瞬間。
サムロスが合図を出した。
僕は紐を引く。すると玉は真っ二つに割れ、同時に甲高い破裂音が城内に鳴り響いた。
「ひあああああああああああああああああああああ!?」
兵士は驚き、昨日よりもずっと大きな悲鳴を上げどこかに走って行ってしまった。
「よし、ここを出るぞロイ!扉を開けろ!」
「分かった!」
僕は後ろにある扉を開け外に出ようとしたが開かない。何回か取っ手を前後に動かすが開かない。
「どうしたロイ!」
「鍵が掛かってて開かない!」
「なんだと!? いつも開いているのに。こんな時に……」
サムロスは近くのイスを手に取り扉にぶつける。が扉は開かない。
「何なんだ今の音は……ん? お、おいお前ら何をしている! 誰かいないかー!」
やばい。別の兵士に見つかった。集まる前にここを出なければ!
サムロスは何回も扉にイスを当てているが開かない。
「くそっまだこないのか!? 仕方ない俺だけで捕まえる……!」
兵士が腰に掛けた剣を抜き襲い掛かってきた。僕は咄嗟にイスを投げたが兵士はものともせず、真っ二つにする。
突然、メリメリと破壊音が聞こえた。扉が開いたらしい。
「開いたぞ! ロイ! 走って俺に着いてくるんだ!」
「分かった!」
僕は全力で走りサムロスに着いていった。兵士は一人後ろから追いかけてきているけど、あの重い鎧来て長くは走れないだろう。
しばらく走っていると、兵士は追いかけてこなくなった。
「はぁ……はぁ……兵士も、追いかけて、こなくなったし、村ももうすぐだ。ここで少し休もう。ロイ」
「はぁ……はぁ……はぁ……うん。休、もう」
僕は膝に手をつき、息を整える。
疲れた。今日は何も食べてないし、もう動きたくない……。村の人とかたまたま来て運んでもらえたりしないかな……そういえば真夜中だった、村の人達は寝てるか。
顔を上げると、向こうに一人の人影が見えた。まさか本当に村の人たちが!?
「サムロス! 村の人たちだ、運がいい! すいませーん!」
僕は手を振りながら人影の方に走る。
「ん? 村の人たち? ……違う、ロイ! その影は……人じゃない!」
「え?」
月の光が辺りを照らす。
月の光で照らされた人影は人ではなかった。人に似ているが長く鋭い爪を持ち、背中には背びれみたいなのがついている。見たことがない生き物だった。
『キシャアアア!』
見たことがない生き物は掠れた鳴き声を出しながら襲い掛かってきた、こんな爪に引っかかれたら死ぬ。早く逃げなければ。
「うあああああああ!」
やだ死にたくない。死にたくない。
「駄目だ! 背中を見せては駄目だ、ロイ! くッ!」
『シャアアアアアアア!』
サムロスは走って僕の後ろに立った。
「サムロス!?」
僕が振り向くのと同時にシュッと何かを切り裂く音が二回、周りに赤い液が飛び散って僕の服や顔に付く。
「ぐっ!」
血だ。サムロスの血だ。
「うああああああ! サムロス、血があああ!」
「大丈夫だ……下がっているんだ、ロ……」
『アアアアアアアア!』
生き物はサムロスが喋っている隙をついて横腹に蹴りを入れた。サムロスは飛ばされた。そしてそのまま動かなくなった。
逃げるんだ。こんな生き物に敵うはずがない。でも、そしたらサムロスが……。
くそっ。倒すしかない。
『シャアアアアアアア!』
「あああああああああああ!」
魔法作家と魔法の本と一人の少年3話です!
アドバイスなど頂けたら嬉しいです!次回もよろしくお願いします!