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一人の少年と魔法の本  作者: 髙梨
プロローグ
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プロローグ

「はぁ……はぁ……はぁ……」 

「おい、待てよ! ロイ! そんなに急がなくても間に合うって!」

 後ろから友達が叫んでいるが無視して僕は城下町の中央にある石で造られた円形の噴水広場へと全力で走る。

 今日は十日に一回、小鳥が囀る時間に僕のおじいちゃん、アルミスおじいちゃんが作った話を聞かせてくれる日なのだ。

 国で唯一の作家アルミスおじいちゃんの作るお話はとてもワクワクさせてくれるお話ばかりでこの国皆に人気がある。王様も聞きに来るくらいだ。

 アルミスおじいちゃんは作ったお話をまとめて本にしても出している。けど僕は出した日に買えたことが一度もない、いつも一週間くらい待つ。

 

 噴水広場に着くと既に大人と子供たちがアルミスおじいちゃんを囲むように集まっていた。中に王様もいる。

 あぁ、また後ろ……一番前で聞きたかったのに……。

「どうしたんだ? ロイ、そんな落ち込んで。じっちゃんの話に間に合ったじゃん」

「一番前じゃないんだもん……落ち込むよ」

「ん? 前だと何かあるのか?」

 不思議そうな顔で僕の友達、ジンは言った。こいつ何も分かっていないなぁ。こういうの興味ないから仕方ないか。

「アルミスおじいちゃんは話すとき、自分で描いた絵を何枚か見せながら話すんだ。場面の絵なんだけど上手なんだよ! 話の世界に入り込みやすくなるし、しかもその場面の絵は話が終わると二度と見ることは出来ない……王様が全部貰って、家族の部屋に飾るらしいんだ。だから一番前じゃなきゃ駄目なんだ!」

「そ、そうなのか、だからあんな必死に走っていたのか」

「あとアルミスおじいちゃんの声だよ! 皆に聞かせるから大きい声で喋ってるけどやっぱり後ろだと聞きにくく……」


 ジンに熱く語っていると、パン、パン、パンと三回手を叩く音が聞こえた。

 アルミスおじいちゃんの話が始まる合図だ。

「皆さん、静かに。クラン王もはしゃいでないで落ち着いてくだされ……」

 がやがや賑わっていた広場がどんどん静かになっていく。

「今回のお話は子供たち向けに作ってきました。大人の方々は異世界に憧れていたであろう子供の時を思い出しながら聞くとより楽しめるかと。ではーー」

 そう言うとアルミスおじいちゃんはゆっくりと目を閉じ、話を始めた。

 それと同時に僕は目を閉じる、こうするとお話の世界を想像しやすいんだ。前の時は絵を見るけど後ろだと絵を見ること出来ないからね。

 

 


ーー二時間くらいだろうか、不意にパン、パンと二回手を叩く音が聞こえた。

「今日はここまで。皆様、お聞き頂きありがとうございました。十日後またお会いしましょう」

 続きが気になるけどここで終わりらしい。えーもっと話してよーなど小さな子供たちの不満そうな声が聞こえる。

 アルミスおじいちゃんのほうを見ると。後姿だから顔は分からないけど、僕と同い年くらいの短髪で眼鏡をかけた女の子? がアルミスおじいちゃんになにか聞いている。

 熱心な人だなぁ……。何故か嬉しくなってくる。アルミスおじいちゃんの子供だからかな?

 

 今日のお話の内容は簡単にまとめると、ある一人の少年が図書館の本棚で表紙に不思議な絵が描かれた光る本を見つけ、その本を借りて家で開いたら本の中に吸いこまれ本の世界に行ってしまったという所で終わった。

 いつもだけどアルミスおじいちゃんはお話の切り方が上手いんだよな。

「すまん、ロイ。掃除手伝ってくれんか」

 人が少なくなるといつものようにアルミスおじいちゃんはほうきを差し伸べてきた。

 お話が終わると僕はアルミスおじいちゃんに広場の掃除を手伝わされる。綺麗でも使った場所は掃除するのがアルミスおじいちゃんの決まりらしい、そんなことしなくていいのに。汚れたら掃除すればいいじゃないかと思う。

「今日はすぐ掃除終わる?」

「あぁ、今日は終わる! ……じゃから手伝ってくれ」

 こんなこと言ってるけど早く終わったことがない、いつも日が落ちる時間まで掃除するんだ。

「絶対ね! 今日は絶対だよ!」

「分かった! 絶対早く終わらせよう」



ーー結局、掃除は日落ちまで続いた。何故いつもはやらない噴水の掃除までしたんだろう。

「いやぁ、いつもすまんのうロイ。助かったわい。やっぱり綺麗っていいのう!」

「大丈夫だよ! 早く一緒に家、帰って夜ご飯食べようよ! お昼食べてないからお腹空いた!」

 僕がそう言うとアルミスおじいちゃんは苦笑いをしながら両手を合わせた。

「すまんが先に帰っていてくれないか。今日は旨いもん食いたい気分でのう、なんせワシの誕生日だからな! 買い物してから帰る。びっくりするぐらい大きい肉とか買ってくるから楽しみに待っておれ」

 そういえば今日はアルミスおじいちゃんの誕生日だった。

 いつも僕は誕生日の時、驚かすことにしている。誕生日は楽しくなくちゃね。前の誕生日はイモっていう丸くてごつごつした手足の短い生き物を見せて驚かした。目がくりくりしてて可愛いんだけど、アルミスおじいちゃんは嫌いらしい。

 今年はどうやって驚かそう……大きい音を鳴らす道具で驚かそうかな。

「分かった。あ~アルミスおじいちゃん、行く前に200Gちょうだい? 今年もびっくりさせたい!」

「びっくりか……また、イモ買うんじゃろ! やらんぞ!」

「生き物じゃないので驚かすから! お願い!」

「むぅ、絶対生き物買うんじゃないぞ」

 怪しがっていたけど、アルミスおじいちゃんは腰についてる布袋から銀色に光る三角形の模様が入った丸いコインを二つ取り出し、僕にくれた。

 よしこれで大きい音を鳴らす道具が一つ60Gだから……三つ買える、けど一つだけ買ってあとのお金は自分のにしよう。

「ありがとう! 楽しみにしてて、アルミスおじいちゃん!」

「楽しみというより不安なんじゃが……ではな、買いたい物買ったら家で大人しくしてるんじゃぞ」

「うん。あ、驚かすために部屋の明かりは付けないでおくね」

「おう。そうじゃ、部屋開いてるが絶対に入るんじゃないぞ! お前ももう14歳じゃから分かると思うが、部屋の中には危険な本がいっぱいあるんじゃ」

 危険な本……?というより今日、仕事部屋に鍵がかかってないのか。

 部屋の中どうなってるんだろう見てみたい。アルミスおじいちゃんの部屋には一度も入ったことがない、いつも駄目じゃ駄目じゃと言われる。

「家で大人しくしてるよ。じゃっ!」

「うむ。楽しみしておれよー!」



 大きい音を鳴らす道具を一つ買ってズボンのポケットに入れた僕は走って城下町に入り、すぐ右側に立っている木で作られた三角屋根の一軒家に戻った。

 

 家の中に入ると、僕はすぐアルミスおじいちゃんの部屋の扉から淡い青色の光が出ているのに気が付いた。なんだろう、気になる。

「今、誰もいないし。少し中を見るくらいなら良いよね……」

 部屋の扉を開け、入ると周りが本棚で囲まれており真ん中に木で作られた机と椅子が。

 その机の上には淡い青色の光を出している一冊の本が。いつまでも見ていたいくらい綺麗だなぁ。

 僕はその光る本を手に取り見てみると、表紙には不思議な絵が描かれていた。丸の中に星が入っている絵だ。

 今日、アルミスおじいちゃんがお話に出てきた本似ているな。 

 これがお話に出てきた本と同じやつなら、開くと本の世界に?

……そんなことあるはずないか、夢でもない限りあり得ない。でもこの本のお話が気になる、アルミスおじいちゃんはどんなお話を作ったんだろう。

 僕は光る本を机に置き、開いた。

 すると急に本の光が強くなり本は周りのものを吸い込みはじめた。バタバタと本が暴れている。

 机の上の物がどんどん吸い込まれる。やばい。僕まで吸い込まれてしまう。すぐこの部屋から出ないと。

 僕は咄嗟に本から離れた。けど遅かった。

「うああああああああああああああ!」

 僕は本の中に吸い込まれた。

 




 

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