入学Ⅰ
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
今日から奏城学園高等部の1年生として、楽しく過ごしていきましょう。
中等部から上がってきた生徒さんは知っていることでも、進学してきた生徒さんには知らないことが多くて困るでしょう。
そんな時は手を取り合って協力してください。」
パチパチ!パチパチ!パチパチ!
学園長の挨拶が終わり、拍手が響いている。ボクの心にはちっとも響かないけど…。
あれからボクこと染井 兆は高校へと進学し、今日から1年生だ。中学校では色々あったけどまたの機会に話すとしよう。
あくびを我慢しながら教室に一足先に戻ろうとして、また視線を感じた。さっきから誰かに見られている。ボクを知っている人はいないはず…。
まぁいいか。気にする必要もないし、さっさと教室に…ってアレ?ここってドコだ?
もしかしなくても迷ったか…。
「はぁ~。ついてないな。どうしよう?
誰かいるわけ…ないか。にしても、ドコだここ?」
「どうかしたんですか?あら、もしかして新入生?迷っているってことは…進学組ね。
どこに行きたいの?」
「えっ?あ、あぁ、1-Aに行きたいんですけど…」
「Aクラスね。君もしかして頭良いの?Aクラスって成績優秀な人の多いクラスだから」
「偶然ですよ。ボクなんかより優秀な人はたくさんいますから」
何か妙に馴れ馴れしいな。制服のリボンが赤ってことは上級生か…。
名前とか名乗らないでくれよ。知ったら面倒、ここで会うのが最初で最後なんだから…。
にしても、この人かなりスタイル良いな。出るとこ出て、引っ込んでる感じ…しかも美人。
絶対人気あるだろ。な、なんだ!?さっきよりも視線が厳しくなったような…。まだいたのかよ。
「どうかしたの?もしかして~私を見てなにか考えてたのかな~?
ところで君の名前は?」
心を読めるんだろうか?いや、言わ慣れてる目だ。恐らく日常的に言われてる。そんな目だ。
やっぱり名前聞いてくるし、ボクみたいな奴よりイケメンでも捕まえてリア充生活満喫してろよ。
今のボクには通用しないんだ。適当に場所だけ聞いて退散しよっと。