終わりⅣ
さようなら高嶺さん。君の知っている染井 兆はもういないんだ。
だから、僕は拒絶する。
「う、ううん。僕は無理して上を目指す気はないよ。
特に陽山はないね。進んだところで、すぐに着いていけなくなるから」
「えっ!?そっ、そうなの?
だったら、どこに行くのか教え」
「ご、ごめん。もう帰らなきゃ。早く家で、過去問を解きたいんだ。時間は有限だから」
「それなら、一緒に勉強しない?私たちも受けるんだし、分からないとこは教えあって情報交換しようよ!
悠馬君もそれでいいよね?」
空気読んでよ…。好きな人と一緒にいるのに、僕なんか引き留めるなよ。
勘違いしたかもしれないじゃないか。
ホラ、有栖川君すっごい嫌そうな顔してる。早く帰れとしか思ってないよ。
ハイハイお邪魔虫はさっさと退散しますよ。
「オイオイ。桃、染井は1人がいいんだよ。なら俺らが誘うのは迷惑なんじゃね?なぁ?」
「そっ、そうだよ。僕は2人の足は引っ張れても役には立てないから…。
あっ、もうこんな時間か。僕は帰るね。
それじゃ頑張ってね。
有栖川君、高嶺さん、ごゆっくり」
返事も待たず足早に教室を出る。後ろから聞こえてきたのは、有栖川君のまたなーっ声と高嶺さんの呟きだった。
え?なんで名字で呼んでるの?きぃは何でそんなこと言うの?ってね。
そこからは両親に進学先を変えたいと相談したり、学校を探し回った。驚いてたけど納得してくれたから良かった。てっきり怒られると思ってたからね。
先生にも明日言わなきゃ。ついでに誰にも教えないでくれとも。
「ハハハハハハッ!何かスッゴいスッキリした。これから、とーっても楽しみだなぁ」
今日で信じるのはやめだ。信じてたって裏切られて痛い目にあうだけだ。だから浅い、上部だけの関係を築こう。
恋なんて二度とするもんか。
もう僕?とにかく今日まで生きていた染井 兆は死んだんだ。
明日からは演じていくだけ、人形を操るように自分を動かして…それでオサラバだ。
もう話し方すら変わっているけど。
この人生で最も絶望した日に………………………
染井 兆は壊れた