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予兆

哨戒任務で遭遇した魔族たちとの戦闘で蒼夜の強さを十分描写出来たと思っていますが、これから新しいキャラ達の活躍も書いていきたいと思います。

 蒼夜の剣筋は速かった。小隊の隊員が5.56mmの弾丸を打ち込むより速く、ドロヴァの海に飛び込む。敵の剣筋を全て回避して返しの剣ですれ違う魔族を全て切り伏せる。撃ち漏らしは遅れて到着した來の狙撃と陸の斬撃で切り伏せられていった。


「蒼夜!陸!一旦退避!」


 インカムに東堂の指示が飛び込んで来た。同じく遅れて到着したほのかの魔力が赤く揺れ動いている。

 蒼夜と陸は一瞬のアイコンタクトで退避ルートを決め、魔力で強化された脚力で一気に退避する。

 背後に控えていたほのかの全身に深紅の魔力が荒々しく舞う。魔力の臨界点に向けてため込んでいるのが伺える。


「熱の導子よ、赤銅の弦を震わせよ。 螺旋の旋律、猛炎の拍子。 鳴り響け、焦熱の終曲――。緋焔ノ(ひえんのかなで)!」


 宮園の詠唱の最後、スヴェイルの火炎を遥かに超える灼熱の塊がドロヴァ達に襲い掛かる。ドロヴァ達は魔法障壁ごと焼かれて灰となっていった。


「はあはあ。魔力半分くらい使っちゃった。陽斗ー。水ちょーだいー」

「まったく。お前は力の加減というものをそろそろ覚えてくれ」

「へへ、つい力が入っちゃうんだよね」


 霧島陽斗キリシマ ハルト。水属性の兵士は手の平に一口サイズの水の塊を生成し、宮園ほのかの口元に持っている。

 蒼夜は驚きと冷静の間のような目で二人の会話を聞いていた。

 陽斗と呼ばれた兵士が、到着前に見えた水属性の魔法を放ったのだろう。戦闘服を綺麗に着こなし、折り目はしっかりしている。几帳面な性格そうだ。

 そんなことを考えは一瞬で横に置き、再度敵を視認する。先ほどの大規模魔法で大半の敵は燃え尽きたが、魔法の範囲外にいた魔族がまだ残っている。

 

「蒼夜、お前は少しここで休んでいろ。あの程度の敵なら既存のメンバーで問題ない」

「はっ!了解しました」


 蒼夜は指示通り軍刀を鞘に納め、後方に下がる。代わりに後方に控えていた隊員たちが前に出る。


「陸、玲、一馬!前衛行くぞ!」


 東堂の指示に三人が即座に呼応する。残りの敵の総数は約十数体ほど。4人が突撃し、7人が後方で小銃による火力支援を行う。射撃は全て精確に敵の魔法障壁を破壊し、前衛の斬撃を通しやすくしている。

 中でも來の狙撃は段違いに精密だった。紫石を含む弾丸を使用しているため、弾丸は魔法障壁を破壊し、尚且つドロヴァの硬い頭蓋骨を貫通する。

 残りの戦闘はものの数秒で完了した。

 さすがは第14陸戦連隊の特殊選別部隊である。


 上空に控えていたスヴェイルは翼を鳴らし、小隊への攻撃を一切せず撤退していく。


「スヴェイル退いてるな。なんでだろう」

「ビビりなんだろ。空からしか攻撃できない雑魚なんだから」

「それあるかもな」


 陸と陽斗そして一馬と呼ばれた兵士が好き放題言っている。蒼夜はスヴェイルのこの行動の意味を理解していた。


「これは大規模攻勢の前の兆候だと考えます」

「大規模攻勢?」

「はい、川越での大規模攻勢の前にスヴェイルの特異的行動がありました」


 蒼夜の言葉に小隊全員が沈黙する。大規模攻勢。すなわちアルグスとの戦闘も起こりうるということだ。


「蒼夜。その件は帰投後連隊長室で一緒に報告しに行こう」

「承知いたしました」

「とりあえず全員帰投だ!」


 第17特殊近接小隊は本日の任務を終え、立川基地へ帰投することとなった。


 帰投後、立川基地連隊司令室。

 東堂、如月そして蒼夜はスヴェイルの動向の報告のため連隊司令室に来ていた。

 蒼夜は意図せずして本日2回目の入室となり、連隊長である桧垣は驚きの表情を蒼夜に向ける。


「初日から活躍だったな柊陸士長。東堂二尉から話は聞いているが詳しく話せ」

「はっ!」


 蒼夜は踵を揃えて報告を始める。


「三カ月前の川越への大規模攻勢は2つの兆候がありました。1つはスヴェイルの偵察的行動。魔族軍の一個中隊などを相手に戦い、殲滅しても上空ではスヴェイルが待機し、敵本拠地に撤退する様子が何度か目撃されています。そして2つ目は膨大な魔力を保有する個体の観測です。こちらはアルグスの魔力であったと自分は考えております」

「なるほど、スヴェイルによる偵察行動が顕著にみられるということか。その兆候から川越への大規模攻撃までどの程度の猶予があった?」

「自分が把握している範囲では約2週間です」

「2週間か。この事案は統幕へ報告し、援軍または反転攻勢の打診を行う。願わくは川越のような惨状は避けたいものだな」


 蒼夜達が退出した後、脇に控えていた連隊副隊長の北川博キタガワ ヒロシ二等陸佐が口を開く。


「大規模侵攻ですか」

「昔を思い出すな」

「はい、開戦当初は大規模侵攻が当たり前の戦いでしたから」

「できればあんな地獄、あの子たちには経験してほしくないのだが」

「少なくとも死なせない努力はしましょう」

「そうだな。北川」

「なんでしょう」

「俺に何かあったらあいつらのこと頼んだぞ」

「あなたが戦死するなんて想像もできませんよ」


 冗談ぽく返すが、この戦争は誰が死んでもおかしくない。

 そのことを知っている二人は第17特殊近接小隊の面々を思い浮かべて、決意を新たにする。


 ――同日。旧青梅市。

 月明かりに照らされた瓦礫の玉座に、一人の男が座っていた。 見た目は人間に酷似しているが、その背後には漆黒の翼を休めるスヴェイルの群れと、数万のドロヴァが整然と跪いている。

 アルグス――その個体名「クラトシア」は、手元に置いた一振りの斧を愛おしそうに撫でた。


「……スヴェイルが戻ったか」


 慢心と傲慢を含む声音に配下の魔族たちは身を震わせる。


「ほう、クシフォスめに一太刀与えた人間の剣士を見付けたと。面白い」


 クラトシアは不気味な笑みを浮かべて声を上げる。


「ふん。あやつと渡り合った人間の剣士を殺せば、あやつは失脚しこのトウキョウ方面の支配は我が物となるな」


 長年この東京方面の支配権をめぐり、クシフォス軍と睨み合っていたクラトシアは悪魔の笑みを浮かべる。

 彼の背後に控えていた魔族の将軍二人が口を開く。


「クラトシア様、我が軍の準備抜かりなく進んでおります」

「ただ、あの脱走した姫は見つけることが出来ませんでした」

「まだ見つからんのか。まあいい。あのお転婆姫のことだ。すぐ泣きべそかいて戻ってくるだろう」


 二人の将軍、ザルバとハルバーサは頭を下げ下がった。


「楽しみだのうソウヤよ。我が覇道への礎となってもらおうか」


 月夜に邪悪な微笑みが浮かんだ――。


 

 連隊司令室を後にした蒼夜たち一行は小隊に与えられた隊舎へ向かうこととなった。


「柊士長、アルグスとの闘いは実際のところどうでしたか?噂には撃退とだけ聞いているので詳しく聞ければと」


 突然如月が蒼夜に問いかけた。これから戦う相手の情報が欲しいという気持ちの表れだ。


「確かに詳しい話は軍内部に出回っていないな。蒼夜どうなんだ?」


 東堂が便乗して聞いてくる。


「ドロヴァなど他の魔族と違うのは分厚い魔法障壁、そして圧倒的剣技ですね。もちろん遠距離魔法も脅威です。一撃で基地の一部は消し飛びました」

「一撃か。やべえな」

「やばいですね」


 2人は貧弱な語彙で驚嘆を表す。

 案外この二人は思量が浅いのではと蒼夜は関係ないことを考えた。


「撃退と報告はされていますが、実際のところ見逃されたというが正しいです。わざと魔法障壁をなくしたアルグスの腹部に浅い傷をつけ、それに敬意を表して見逃された、というのが事実です」

「敬意?魔族がか?」

「はい、ドロヴァなどは知りませんが、アルグスは武人です。戦い相手を屈服させることに楽しみを感じているようです」

「なるほどな。屈服しなかった蒼夜に敵は敬意を覚えたと。魔族ってのは難しいやつらだなぁ」

「柊士長は再戦した場合、勝てる見込みはありますか?単独での撃破という意味です」


 蒼夜は数秒沈黙し、戦友から譲り受けた軍刀の柄を握りながら答えた。

 

「相打ち込みで考えれば不可能ではない、というのが自分の見解です」

「相打ち込みね、ねぇ」


 東堂は足を止め、蒼夜に向き直る。


「蒼夜は今までの部隊や戦場では相打ち、特攻色々見て来たと思う。だが、うちの小隊にいる内は戦死前提の作戦はさせない」


 蒼夜は真っすぐ東堂の目をみて口を開く。


「なぜですか?一人の戦死で敵の最大戦力を撃破できるのなら自軍の戦力維持ができ、戦略的に正しいのではないでしょうか?」


 自分の正しさを主張する。軍人として間違っていない、と。

 東堂もまた静かに蒼夜の目を見る。

 蒼夜の黒い前髪が、少し漆黒の目にかかっている。


「蒼夜は今いくつだ?」

「17歳であります」


 突然の質問に蒼夜は端的に答える。


「兵士は確かに戦死リスクが高い。だが作戦の駒であってはならないんだ。特にお前たち少年兵は」


 少年兵というのは反論のしようがない。しかし。


「我々少年兵も立派な軍人です。軍人なら駒となることも責任の1つです」

「いや違うな。この戦争が終わった時、この国を立て直すにはお前たちの力がいる。未来のためにお前たちは生き抜かなきゃいけないんだ」


 意見は平行線だ。今を戦う少年兵として、未来を見据える大人として。

 未来なんて描いたことがない。だって戦争はもう10年続いている。この先さらに10年続いてもおかしくな。それまで人類が生き残っていればだけれど。

 

「蒼夜は将来の夢はなんだ?」

「夢ですか……」


 夢なんて思いつかない。だって将来に思いを馳せる時間なんてなかったから。


「子どもの勝利は夢を描いてそれを追いかけることだ」

 

 子どもと言われて蒼夜は少し拗ねた表情を浮かべる。それに対し東堂は真剣な眼差しを向ける。


「夢を持つんだ蒼夜。それまで死ぬことは許さない。これはうちの小隊の奴らも同じだ。だから守り合い勝利し続けろ」


 夢。賢治はどんな夢を描いていたっけな。隣で笑っていたアサルトライフルの扱いが妙に上手かった同期の顔を思い浮かべて蒼夜は反芻する。


「夢なんて自分は……」


 東堂は静かに蒼夜を見る。優しい視線だった。そして凛花も優しく語り掛ける。


「柊士長。そもそも私は単独で戦った場合の話しをしただけであり、あなた一人で戦わせるつもりはありません。連隊長がそのような命令を下しても。それに桧垣一佐はそんな命令しません。だから安心して夢を描いて下さい」


 凛花の発言が発端のこの議論は凛花の言葉で終わった。


 ――蒼夜達が小隊の隊舎に戻ったのは太陽が沈みかけている頃だった。


「東堂の兄貴お帰りー!」

「アニキ―――!」

「凛花の姉御もお疲れ様です!」


 隊員がそれぞれ己の上官たちを好きに呼んで隊舎に迎える。

 この戦争が始まって以来初めて味わう喧騒に蒼夜は戸惑いを覚えて辺りを見回す。

 どうやら夕飯を準備しているらしい。肉の焼ける匂いがする。味付けは黒コショウだろうか。


「お、新人の蒼夜も来たな!おい、お前ら!蒼夜を主役の席に案内しろー!」


 キッチンから陸の声が聞こえる。

 隊舎には特定の食堂がなかった。だが、入口付近の広場に机を寄せ集めた即席の食堂が出来上がっていた。

 主役席?と首をかしげる蒼夜の目の前に部隊で一番幼い少年が来た。それも瞬間移動で。

 少年は敬礼をして言う。


「お疲れ様です。柊士長!自分は神谷志信カミヤ シノブ二等陸士であります。見ての通り瞬間移動とか得意です!」


 蒼夜が入隊した時より少し年上か。おそらく15,6歳だろう。


「柊士長の席は一番ガタが少ないこちらになります!」


 志信が腕ごと使って差した方を見ると他と変わらないパイプ椅子と机がある。とりあえず蒼夜はそこに向かいながら礼を言う。


「ありがとうございます」

「いえ!では、自分は陸さんのところに行って手伝って来ます!」


 元気に返答し志信は姿を消した。キッチンの方から陸の驚く声が聞こえた。


「うわっ!ビックリした~。近いんだから歩いて来いや!」

「えーだってこっちの方が楽なんですもーん」


 キッチンがさらに騒がしくなる。椅子に座ると少しガタつく。ガタが少ないとは言っていたが他の椅子はどうなんだろう。

 他の席に目を向けていると、横からお盆にコップを乗せた陽斗が来た。


「先ほどは助かったよ柊士長。俺は霧島陽斗一等陸士」


 そう言いながら陽斗は空のコップを蒼夜の前に置く。そして手を向けて魔力を練る。水の塊が生まれ蒼夜のコップを満たす。


「見ての通り水の魔法を使える。戦場で喉が渇いたら言ってくれ。口に水の塊をねじ込んであげよう」


 淵の太いフレームの眼鏡をくいっと上げながら言う。自慢げな顔を浮かべるが、黒髪短髪に眼鏡は似合わないなと、蒼夜は思った。

 礼を言いコップを手に取り飲もうとすると、新たな魔力を感じて手を止める。水の中に氷の結晶が生まれた。顔を上げると艶のある黒髪を靡かせた女性兵士がこちらを見ていた。


「私は月城玲ツキシロ レイ一等陸士だ。氷を生成して操る魔法が使えるし、こいつと違って近接戦闘もできるぞ」

 

 玲が自己紹介をする。自慢するだけあってタンクトップから覗く体は、確かに細身の陽斗と違って引き締まった体躯をしている。歩く姿勢もしなやかだ。

 そういえば哨戒任務の時、東堂と陸と一緒に前線張ってたなと思い出す。


「柊士長は陸に圧勝したそうだな。私とも戦ってくれよ」


 玲はその切れ長の目を挑発的に歪ませて言う。


「今ですか?」


 だが蒼夜は無表情で返す。


「は?」


 陽斗と玲が呆けた顔をする。そして吹き出した。


「はははっ!面白いな柊士長は!ちがうよ、明日の訓練とかで模擬戦をしてくれよ。約束だからな!」


 そう言って玲は蒼夜から二席空けた場所に座った。その隣にはすでに礼儀正しく座る少女がいた。


「私も同じ一等陸士の榊原美月サカキバラ ミツキです。治癒魔法が得意で、主に後方支援担当です。蒼夜さんが怪我した場合はすぐに言ってください。全力で治癒します」

 

 美月は恐らく長いであろう栗色の髪をお団子にして結んでおり、軍人とは思えないほど細身であった。戦争さえなければ、アイドルにでもなれただろうと蒼夜は思った。

 陽斗が蒼夜の肩に腕を置き、耳もとで囁く。


「美月、可愛らしいだろう?でも気をつけてくれ。たまに正人の兄貴が唸るほどの毒舌を吐くからな」


 バラには棘があり、可愛い子には毒がある。そういうことだろう。

 蒼夜は必要以上に近い陽斗の腕を振り払おうか迷っていると、反対隣から低めの声がした。


「柊士長」


 振り向くと茶髪短く切り揃え、胸板の厚い青年が座っている。彼もまた先の哨戒任務で前衛にいたことを思い出す。

 

「自分は鳴海一馬ナルミ カズマ二等陸士であります!制限はありますが重力を操る魔法が発現しております!よろしくお願いします!」


 軍人らしいはっきりと喋る一馬は蒼夜に握手を求める。手を握ると未成年とは思えないほどガッシリした手だった。


「自分も柊士長と是非とも試合をしてみたいです」

「……了解しました」


 この部隊は好戦的な人が多いな。悪くない。蒼夜は少し居心地の良さを覚えた。

 そのガタイの良い一馬の後ろに座っていたのは小柄な少女だった。


「わ、私は結城楓ユウキ カエデです。えっと、結界とか防御魔法を得意としています。攻撃は苦手ですが、がんばります!」


 楓は両の拳を前で握りアピールをしている。それに伴い伸ばした黒髪を揺れる。

 色白で確かに戦闘向きな心証は受けないが彼女もまた、地獄のような戦場を生き残った猛者なのだ。


 ちょうど全員の自己紹介が終わった頃、陸と志信が大きな肉を乗せた大皿を両手で抱えてテーブルに近づいて来た。


「よーしお前ら―!肉だぞーーー!」

「やったー!」

「肉だ!!」

「腹減ったよー」


 各々が待ち望んだ肉の登場に盛り上がる。

 二列に並べた12個のテーブルの真ん中に肉の大皿を置き全員が着席したところで東堂が声を出した。


「みんな知っての通り蒼夜が本日からこの部隊に入った。人事資料は共有しているが蒼夜、改めて自己紹介をしてくれ」

「はい。川越前線基地から来ました、柊蒼夜陸士長です。得意なことは剣術です。よろしくお願い致します」


 短い自己紹介に各々がよろしくや、よろしくお願いしますなど言葉を返す。


「そんじゃ、初日から大戦果を挙げた蒼夜の歓迎会を始めますか!肉食うぞーーー!」


 東堂の号令で少年少女たちは一斉に、肉に箸を伸ばした。


 ――二日後の正午、立川基地第一会議室。


「以上が柊蒼夜の証言と魔力観測官、そして近辺の哨戒任務にあたっていた隊員の証言です。アルグスを含む大規模攻撃の予兆としては十分な証拠となるかと思います」


 会議室の壁にプロジェクターから投影された画像を20名ほどの中隊長と連隊司令部が険しい顔で睨む。

 報告をしたのは北川二等陸佐。顔や腕には歴戦の猛者の勲章となる傷跡が多数みられる。

 桧垣は北川の報告に補足する形で発言する。


「観測官の報告によれば、先の川越防衛線で検知した魔力波形と今回検知したものは違うものらいし。つまり柊蒼夜が戦ったアルグスではなく全く未知のアルグスとの戦闘になる」


 一人の中隊長が挙手し質問を投げる。


「アルグス以外の戦力はどの程度が想定はされていますか?」


 答えは北川二佐が受け持った。


「衛星写真を中央の分析官にまわしたところ五個師団もしくはそれ以上と回答がきた」

「五個師団⁉それは正確な分析なんですか?」


 驚きの声が会議室に伝播する。


「残念ながら、ほぼ間違い無いだろうとのことだ」


 五個師団。これはドロヴァ5万体、スヴェイル500体という大規模な戦力だ。ここ立川基地に駐屯している兵士は約6千人。桁が違う。

 

「川越防衛線も同じ規模の侵攻があったという報告がある。統合司令部には一応援軍の可否は問うているが、実際来るかは不明だ」

「久しぶりの地獄ですな桧垣一佐」


 一人の中隊長が歴戦の余裕を持った目で言う。小田オダ一等陸尉。開戦当初から戦い、一兵卒から中隊長にまで上り詰めた戦士だ。


「久しぶりに暴れますか」


 もう一人の中隊長が言う。他の隊長たちも同じように目に覚悟を宿した目をしている。

 桧垣はそんな彼らの目を見て問いかけた。


「お前たち、俺と共に死んでくれるか?」


 全員が答えた。もちろんです、と。

新たな大規模侵攻の予兆。これから物語はもっと加速していきます。

お楽しみに!

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