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4Iワールドエンフォーサーズ 〜最強アク役チーム、腐り果てた異世界を罰する〜  作者: 都P
WORLD4 ロボットトイの臨界点的理想郷『ペルフェロイド』
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W4-16 頂点たる大企業製品 レギュラリティ・ドグマ

 最終決戦のバトルロイヤルの舞台となるジオラマは、遺跡風のもの。

 石造りの柱や石畳があちこちにあるなど、遮蔽物は比較的多い。ただし、土地自体は平坦であった。


 とりわけ目立つオブジェクトは、中央にある壊れた巨大闘技場だ。真剣勝負がしたければここに入れということなのだろう。


 ペルフェロイドの投入口は、ジオラマの四隅にあった。

 他三チームは、そこから一直線にこちら側に接近してくると踏み、そこで待機する。


 すると読み通り、まず左右から二チーム――『エスタブリッシュ』と『ランバート・レガシーズ』の六機が接近してきた。


「まずはあの平民どもを片付ける! 決勝はそれからだ!」

「この大舞台に立ったことを一生の恥にしてやる!」


「やっぱり組んでやがるな、アイツら」

 と、観客席にいる帰還者は、ポップコーンを食べつつ言った。


 隣に座る首謀者も、紙コップ入りのコーラを持ちつつ、

「あそこでの会話内容は外にも聞こえるようになってるからか、『アウグスティン様のために』みてーに露骨な部下ムーブはしないけどよ」


 簒奪者はチュロをひとかじりしてから、

「なあベンヤミン。あの三つの部隊はどういう戦士なのかね?」


 ベンヤミンは、会場に設置されたモニターをガン見しながら、

「お前、ここに座って何を見てたんだ? もうアイツらそれぞれ二回見てるだろ?」


「ごめんよ。三人が出ている試合はボケーっとしてたから」


「やっぱりか。まぁ、全部見てても意味ないんだがな。

 この大会は一試合ごとに機体を変えていいようになっている。勝ち進めばお披露目できる新製品が増えるもんな。

 だからあの三チームは全員、これまで全部違う性能の機体を使ってたから、どういうタイプの選手かってのは詳しく言えない」


「会社ごとにどのような機体を作っているかとかはわからないのかい?」


「それはわかる。

 エスタブリッシュは、比較的安価で、拡張性の高い機体を作ってるとこ。

 ランバート・レガシーズは、二十六社の中では歴史が古い方で、玄人好みの機体を作ってる。

 で、ペルフェロイド・ソサエティは……まぁ、色々作ってる。安物買いの銭失いってことわざを教えるためのものから、時代の最先端を作るハイスペック品までな」


「いかにもペルフェロイドの家元らしい務めだ」


「でもって今は世界大会の最終戦。アウグスティンは絶対、ここで一番イチオシの最終兵器を持ち込んでくるに違いない。

 ま、コイツらなら、なんとかなるやろ。この通りハンデをものともしてないし」


 この時、モニターには、スナック菓子チームが、敵二チームをそれぞれ一機撃破した様子が映っていた。


 スナック菓子チームは、三対六という苦境をものともせず、新たなコントローラーにも適応しつつ、試合を優位に進めていた。

 

「こんな卑怯な手を使って、アタシたちを簡単に殺せると思うな!」

 脱走者のトランスポーターは、エスタブリッシュの機体に腕部のタイヤの回転力も加えたアッパーを食らわせ、


「おとといきやがるのですわぁッ!」

 使役者のアクワイアは、両腕に装備した子機からレーザーを連射し、ランバート・レガシーズの機体を柱に叩きつける。


 即座に戦死者はモンスターシュタインを操作し、エスタブリッシュの機体にショットガンを至近距離で放ち、柱にめり込んだランバート・レガシーズの機体めがけてアサルトライフルを連射した。

 たちまちこの二機は機械が発してはいけない高音を発して、機能停止する。


「おらぁ、これで三対二になったぞ!」


「何故かまだソサエティのチームがお見えになってませんが、いかがよろしくて!?」


 それぞれ二人目のチームメンバーを失い、残された二機は、スナック菓子チームの機体と向き合ったまま、慎重になりその場から動けなくなる。


「か、数で上回ったくらいで調子に乗るな!」

「貴様の言う通り、ソサエティ社が未だにここへ来ていない……だからまだ負けたわけじゃないぞ!」


「でもって三対五でまた調子に乗るんだろお前ら……!」


 ここで、久々に戦死者が口を開いた。

「脱走者。二機の後方に警戒しろ」


「……ん、お前が珍しく喋ったってことは、余程重要……だなやっぱ」


「皆様、待たせてすまない」


 噂をすれば影とやら。か、二チームの二機の背後から、ペルフェクシオン・ソサエティの象徴である赤色に塗られたペルフェロイド三機が歩いてきた。

 言うまでもなく、アウグスティンのチームだ。真ん中の機体のデザインが豪勢であることから、立ち位置も相まって、これが彼の機体なのはよくわかった。


「ああ、来てくださりましたかアウグスティンさん!」

「申し訳ございません! 本日はどうも運が悪く、お互い二機やられてしまいました……」


 寄ってきた二機に対し、アウグスティンの機体は両手を出して、

「そうかい。では不測の事態がないように、こちらも本気を出すとしよう……『オペレーション・ドグマ』!」

 そしてアウグスティン機は機体の手足を広げた状態にして、背中のスラスターで浮遊する。


「ぜってーヤバいことするんだろお前! させるかー!」


 三人はアウグスティン機めがけて攻撃をしかけた。

 だが、他社の二機が立ちはだかったことと、両脇にいた二機がそれぞれ縦に分割され、アウグスティン機の衛星のように周囲を回って盾となる。


 やがて、分割して浮遊していた二機が、アウグスティン機の四肢にはまるように接続された。

 そこから一部パーツがスライドして、リーダーの強化外装となる。


 そしてアウグスティンをコアに合体した三機は、道を舗装する石を粉々にしながら地上に降り立つ。

「ドグマ・C、ドグマ・R、ドグマ・L……合体完了! 『レギュラリティ・ドグマ』、降誕!」


「が、合体しただとーー!?」

「が、合体ですのー!?」

「……」


「「が、合体したー!!??」」


 と、ジオラマ内に残っている五人は、このアウグスティン機の真の姿に度肝を抜いた。

 会場にいる観客たち、それからネット中継を見ている全世界のペルフェロイドファンも驚愕した。


「あ、あわわ……やばいぞこれは……!」

 特に、ベンヤミンの驚き方は異様であった。帰還者に少しだけならと譲ってもらったポップコーンバケツを、落としたのだ。

 帰還者はそれをベクトルの糸でキャッチし、騒ぎにならないようにこっそりと自分の元に回収しつつ、

「せっかく食わせてやったのに落とすな!

 ったく、どんだけ驚いてるんだよ、たかがロボットの合体ごときで……」


「いや驚くわこんなん!? 合体するペルフェロイドなんだぞ!」


 首謀者は聞く。

「ロボットといったら合体だ。だったら合体するペルフェロイドなんか、いつかの誰かが思いついて、やってもいいんじゃあないか?」


「ところがどっこい、そうはいかないんですよ」


 実際、過去にいくつかの会社で、合体変形するペルフェロイドが発売されたことがある。

 しかし、関節系統の不具合や、出力の不安定問題、そして何よりも合体したところで、それに要した機体数以上のスペックが発揮できないなど、問題が山積みになっており、収集マニアにしか評価を貰えなかった。

 現在でも、一部のメーカーは時たまにそういった機体を出すことがあるが、どちらかというと騎乗に近いものが大半を占めていて、これぞという合体ペルフェロイドはしばらく現れていなかった。

 

「合体ペルフェロイドは実戦に弱い。

 その風潮が漂う中、アウグスティンが最終戦にそれを持ち込んだということは、あれは相当な自信があるってことだ……」


「ほう、それは楽しみだね……その自信がいかにして、あの三人に打ち砕かれるのか」

 簒奪者はそう言った後、膝の上に置いたバケツからポップコーンをひとつまみする。


 ジオラマ内にて。

 傘下会社の二機はレギュラリティ・ドグマを見上げたまま、言った。


「なんという神々しいお姿、流石はペルフェクシオン・ソサエティの技術力だ……」

「これなら今度こそアイツらに仕返しが出来る……どうか、ご助力を!」

 

 アウグスティンは、レギュラリティ・ドグマを操作し、両脚部に格納されていたレーザーブレードを引き抜く。

 そして即座に一対の剣を振るい、他社の二機を両断した。


「あ、アウグスティンさん……!?」

「何故、我々は味方……!?」


「これはバトルロイヤルだ。他チームに殺されて文句を言うな……」

 と、言った後、アウグスティンは、ボタンを操作し、外部に聞こえないようにしてから、コントローラーの中で冷酷に微笑んで言った。

「このルール変更は心配性の親父が勝手にやったこと。俺は最初から、自力で勝つつもりだった……だからお前らは最初から要らないんだよ」


「「そ、そん……」」


 アウグスティンは、二機の残骸を蹴ってどかし、身構える三機を睨む。

「感謝しろよ。これでようやく対等な構図なったのだからな」


「お前に感謝なんかしたくねーよ!」

 脱走者はトランスポーターを腹ばいにさせ、計六輪のタイヤを稼働させ、レギュラリティ・ドグマの周りを駆ける。

 そして十分な加速をつけたところで、レギュラリティ・ドグマの懐へ一気に飛び込む。


 ところがその先からレギュラリティ・ドグマが消えた。

 脱走者は上を見ると、長大な双剣の光刃が迫ってきた。


 三機が合体したゆえに、通常のペルフェクシオンの一.五倍近くの巨体を誇っているにも関わらず、レギュラリティ・ドグマは俊敏であった。

 トランスポーターの攻撃のタイミングに合わせて横にズレて回避していたのだ。


「危ねぇ!」

 脱走者は自機の身体をひねらせ、紙一重で攻撃を避ける。しばらく走行して距離を置いた。


 レギュラリティ・ドグマが双剣を振り下ろした後、使役者はアクワイアからレーザーを、戦死者はモンスターシュタインから銃弾を、それぞれ連射する。

 しかしレギュラリティ・ドグマは、両肩から分離した自立浮遊する盾と、レーザーブレードさばきで全ての弾を弾いていく。


「このレギュラリティ・ドグマはただ三機がくっついているだけではない! 内部CPUの相互補完による動作の安定や、バッテリー増加によるパワフルな攻撃、そして三機の機構がかみ合わさっての出力の増加……その他エトセトラにより……通常のペルフェロイドの六倍の性能を持つ!

 当然、貴様らのようなどこのメーカーかも断定できない雑種カスタム機なんて、比べること自体が無意味だ!」


「調子のってんじゃねーぞ!」

 脱走者は再びアウグスティンに接近し、その背後から飛び蹴りを繰り出した。


 しかしレギュラリティ・ドグマの腰関節が一八〇度回転し、トランスポーターはレーザーブレードで打ち返された。


「……」

 しかしこれで敵機は戦死者のほうに背を向けた。この隙を逃さず、戦死者はスナイパーライフルで背面を撃つ。

 だが、その弾は虚しく装甲によって弾かれた。レギュラリティ・ドグマは素材の質においても優れていたのだ。


 アウグスティンは、腰関節を元に戻し、戦死者の方へ両腕を突き出し、

「お返しだ!」

 腕部に仕込まれたビーム砲を放った。


 戦死者はただちに近くの倒壊した建物に隠れる。


 アウグスティンが徹底的に戦死者への砲火をする間、使役者のアクワイアはスラスターで、レギュラリティ・ドグマの頭上へと飛行。そこで周囲に浮く子機から、四本のレーザーを射出する。


 アウグスティンは、浮遊する二枚の盾をそちらへ向かわせ、レーザーを全て防ぐ。


 再び脱走者はトランスポーターで、アウグスティンの背後を突く。

 ところが、レギュラリティ・ドグマが、戦死者の砲撃は左腕だけで続行しつつ、右腕を後ろへ回したことで、脱走者の蹴りはレーザーブレードの刀身で受け止められた。


「み、見事なまでに私たち三人に対処していますわ……!」


「それができなきゃ俺は終わりだからな……だが、これが続けば流石に俺も頭と指がしんどいので……ここで一機脱落してもらおうか」


 アウグスティンは双剣を両横斜め下へ伸ばして構えた状態で、腰と両足裏のスラスターを点火し、アクワイアがいる高度まで飛ぶ。

「これぞ必殺奥義、『ドグマ・フルバスターオーダー』!」


 その場で腰関節を高速回転させ、両腕のビーム砲から光線を、構えたレーザーブレードからは光の斬撃を、このジオラマの四分の一という広範囲へ撒き散らした。


「こんな形でこのコントローラー慣れてくるなんて嫌ですわね……」

 使役者は攻撃の雨あられの隙間を飛び回り、アクワイアをスクラップにしないようにする。


 一方の戦死者は、モンスターシュタインを正座のような体勢にさせ、脛部に搭載されたクローラーを作動させ、比較的高速で地上を駆けて回避する。

 だが、これはあくまで『比較的』高速というだけ。アクワイアほどの機敏さはないため、いくらかの被弾は、モンスターシュタインの頑強さに頼るしかなかった。


 そうして半分雨ざらしになっている戦死者を心配した脱走者は、

「待ってろ戦死者! 今からコイツに乗せてやる!」

 トランスポーターはうつ伏せ状態で攻撃が降り注ぐ地上を爆走し、モンスターシュタインに接近する。


「では二機まとめていただくとする!」

 ここでアウグスティンは、レギュラリティ・ドグマを降下させ、攻撃範囲を二人のいるエリアへ絞っていく。

 それでもどうにか耐え凌ぎ、脱走者と戦死者は合流を目前とした。

 するとそこで、レギュラリティ・ドグマは腰回転を停止させ、レーザーブレード二本の切先を、二人に向けた状態で一気に落下する。


 そして、その地点から土埃と瓦礫が噴煙のように舞った。


【完】

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