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4Iワールドエンフォーサーズ 〜最強アク役チーム、腐り果てた異世界を罰する〜  作者: 都P
WORLD4 ロボットトイの臨界点的理想郷『ペルフェロイド』
59/79

W4-11 まだ通過点

「え、いいけど……また弾かれてもいいのか?」


 使役者は今日一番の剣幕を放ち、脱走者へ指示する。

「それはあなたが工夫すればどうにかなりますでしょう!? 私たちはご覧の通り、相手と比べればチームプレーまで手が回っていませんから、ここは個人プレーでどうにかする他ありませんわよね!? ね!?」


「……そうだな。このまま相手の調子に従ってられるかってんだ!」

 脱走者は奮起し、コントローラーを素早く操る。自機を一直線に高速疾走させ、その勢いのまま大ジャンプし、竜の乗り手であるテックドラグーンへ突撃する。


「ああ言われたのにも関わらず、大した工夫もしていないではないか……」

 そしてシグルドは、騎竜もろとも自機を縦に一回転させる。脱走者機はその尻尾を下から叩きつけられた。


 その瞬間、使役者はジオラマの壁を蹴ると同時に、脚部と腰部にあるジェットを最大出力で点火させ、シグルドたちに接近する。

 すれ違う瞬間、シグルドたちは一八〇度まで回転しているところだった。

 使役者は今までの練習の成果を総動員し、逆さまになっているシグルド機の、テックドラグーンの右脚部へ飛び込む。

 そこで彼女は長く持った杖をかざし、

「ここですわぁぁぁ!」

 蓄積しておいたエネルギーを、先端のレーザー砲から一気に射出した。


 それにより、テックドラグーンの右脚部は破損……まではいかなかったものの、機械が出してはいけない類の火花が全体から飛び散った状態で、テックドラグーンの身体からダランと剥がれていた。


「……俺のテックドラグーンとライドドラゴンを切り離す作戦か。先程の『合体していない』という台詞で思いついたな。

 そうだ。その言葉通り、合体はしていない。しかし、ただ竜の上にまたがっているというわけでもない。

 両膝側面と腰部にジョイントが備わっており、その三点で強固に接続されている。だからそう簡単に剥がれることはないのだ」


 シグルドの言う通り、右脚部が不調を起こし、翼と平行に伸びている状態でも、テックドラグーンは微塵にも落ちる気配はなかった。


「そんな誰でも思いつくような急所一点を突かれたくらいで壊れる製品を作るわけがなかろう。これだけは覚えておくといいだろう」


「それはどうでしょうか……」


 ところが、状況は突然一変した。

 シグルドチームの一機であるクーリエの右肩部が大爆発を起こした。


「どうした貴様!?」

「すみません! アイツが無理やりボックスにグレネードを……」


 その爆風に乗り、戦死者の機体は空を舞う。


 それが向かう先にあるのは、回転攻撃を終えたばかりのシグルドたちの左側面。

 戦死者は自機が最もシグルドたちに近づく瞬間に、ショットガンを二回放って、そのまま落下した。

 

 戦死者の落下ダメージを防ぐべく、使役者と脱走者は、それぞれボロボロの自機に無理を言わせつつそちらへ急行し、彼の機体を二人がかりで受け止めた。


 その直後、左の羽が穴だらけになったライドドラゴンと、両脚部から火花を散らすテックドラグーンが落ちてきた。

 

 戦死者は、ショットガンの一発目で、テックドラグーンの左足のジョイントを、二発目でライドドラゴンの左の翼を破壊した。

 テックドラグーンの腰部のジョイントはまだ生きているものの、大きく傾いたライドドラゴンの上で体勢を保持するくらいの強度はなかった。

 こうして、二機はそれぞれ落下してしまったのだ。


「これでよかったのか、使役者殿?」


 急に戦死者が口を開いたことと、彼には大した合図をしてなかったのにも関わらず、満点の追撃を狙って行ったことに、使役者はしばらく硬直してから、

「ええ、それでよろしいですわ! 戦死者さん!」


 使役者たちの三機はその場から少しズレて、シグルドたちの二機が地面に激突するのを見届ける。


 シグルドチームは慌ただしく現状を確認する。

「クーリエの状態はどうだ!?」


「LP自体はまだ余裕がありますが……もうダメです! 片腕がやられています! それと内蔵していた翼の補修パーツまでもが……」


「ライドドラゴンはどうしましょうか!? 引き続き竜形態で……」


「もうまともに跳ぶことも乗ることもできんのなら、人型形態に戻るほかないだろうが!」


「はいぃぃ……すみません、シグルドさん。あともう一つすみません、そろそろジオラマの方を注目した方が……」


 片方は形態の一つが機能しなくなった、片方は攻撃と落下の衝撃で脚部が損壊した二機を、使役者たちの三機が取り囲んでいる。

 この絶体絶命の危機に目を点にし唖然とするシグルドたちへ、使役者は腰に手を当てながら言った、

「シグルドさん、貴方がたはこんなボロボロでガタガタな商品を売りさばいているくせに、そんなに威張り散らしているのでして?」


 シグルドは顔を真っ赤にして怒鳴る。

「そ、そ、そんなわけがなかろう! というよりそもそも! 俺はマイソロジー・テックさんの社員ではない! 単なるスポンサー契約を結んでいただいた……」


「でしたらますます、マイソロジー・テックさんの看板や商品を持ちながら威張らないほうがよろしいのでは? シグルドさん方?」

 

 この返しが突き刺さり、シグルドたち三人はわかりやすくうなだれた。

 だがシグルドは、そのしかめっ面を重々しく持ち上げ、使役者に向けて、

「ぐ、ぐ……そちらこそ、勝ってもないのにプレイヤー本人へ誹謗中傷を飛ばすんじゃなあい!」


「……ひ、誹謗中傷……!」


 シグルドはテックドラグーンを操作し、脇にいるライドドラゴンの背中と腰に搭載されていた盾と剣を取り外し、それで装備を固めて、使役者の機体に突っ込む。


 そこで戦死者機は素早く持ち替えたピストルを向けて、両足それぞれに三発ずつ弾丸を食らわせる。

 崩れるように前のめりに転倒していくテックドラグーンに、脱走者機は素早く回り込み、アッパーを食らわす。

 そこから脱走者は、機体の可動域をフル活用して無数の打撃を食らわせて、テックドラグーンを仰向けに倒した。

 直後、シグルドの持つコントローラーと、ジオラマに内蔵されたAIジャッジから、テックドラグーンのLPがゼロになった合図のSEが鳴った。


 数秒ほど、意識がジオラマにも現実にも向いていなかった使役者は、首をブンブン振った後、

「どうします? お頭がやられましたが、まだ続けますか?」


 シグルドのチームメンバー二人は、恐る恐る、シグルドの顔色を伺った。

 それに気づいたシグルドは、二人がもっているコントローラーを両手で叩いて落として、

「もう結構だ。こんなしょうもない勝負、続ける価値など微塵にもない」

 苦虫を噛み潰したような顔をして、自分のコントローラーを操作し、ジオラマ内のAIジャッジに、降参の旨を入力した。


「や、やりましたわー!」

「やったぞ! アタシたち、きっちり勝ったぞぉぉぉ!」

「……」


 こうして使役者たちは念願の公式戦初勝利をもぎ取ったのだった。


 その喜びにはしゃぐ使役者と脱走者を、帰り支度の最中に横目で見つつ、シグルドは言った。

「あの混沌としたカスタムがなされたペルフェロイドは、絶対にヤツに違いない……

 ユージーンめ……突然何を企んだというのだ……」


「……」

 たとえ勝とうとも無表情と棒立ちを続ける戦死者は、その小声を決して聞き逃さなかった。



 シグルドという強豪たちから初勝利をもぎ取って以降、使役者たちのチームはこの勢いに乗りに乗りまくった。

 彼女たちは対戦カードによって相対した敵を、ベンヤミン製の特異なペルフェロイドの性能を駆使してバッタバッタとなぎ倒していく。


 そして彼らは十一回もの対戦を終えた後、閉会式で会場内のステージに呼ばれた。理由はもちろん……


「『ザ・コロッセオ2300』の優勝者は! こちらのスナック菓子チームでございます! おめでとうございます、塩キャラメルさん! バーベキューさん! のりしおさん!」

 表彰台に立つためであった。


(……アタシたち、そういう名前だったのか?)

(こちらもベンヤミンさんが適当にハンドルネームをつけたのですわね……もっとマシなのにしてくださいまし)

 と、脱走者バーベキューと、使役者(塩キャラメル)は、今更ながらこのネーミングに対し、心の中で突っ込んだ。


「優勝者には賞金二十万ポイントと、主催者様から世界大会『ペチャップ』の参加権を贈呈いたします!」

 と、イベントMCが入ってすぐ、ステージの裾から、実に大イベントの主催者らしい恰幅のいい男性が、部下二人とともに、『200000P+ペチャップ参加権』と書かれた、巨大な発泡スチロール製のパネルを持ってきた。


「おめでとうございます」

 と、主催者はピンマイクを介してもなおボソボソ気味の声で、スナック菓子チームを労った後、部下二人と協力して、三人にそのパネルを持たせた。

 パネルを持たせた瞬間、主催者は一番近くにいた使役者に、小さくはあるが、鮮明に聞こえる声で言った。


「お前らみたいな奴らなんざ、ここが精一杯なんだよ。せいぜいペチャップで恥をかかないように励むんだな。空気の読めない平民風情が」


 そして主催者はそそくさとステージから降りていった。MCはそれを待って、進行を再開した。

 MCはこの大会のハイライトだったり、ペルフェクシオン・ソサエティの社長から頂いたコメントの読み上げなどを行った。

 三人はパネルを持ったまま、そのMCの側に立っていたのだが、全員、その内容はまるで頭に入らなかった。


 脱走者はシンプルに頭の空き容量が底をつき、無の領域に達したから。

 使役者と戦死者は、自分を見上げる観客たちの声に気を取られていたからだ。


「死ね! それ俺たちによこしてさっさと死ね!」

「ソサエティ関係者じゃないくせに優勝してんじゃねーよカース!」

「どんなインチキ使いやがったこの卑怯者どもがァ!」


 観客たちは、あたかも大合唱を奏でるように、自分たちの身分を後ろ盾にした、三人に対する暴言、罵声、雑言、嘲笑を、遠慮なく叫び、轟かせた。


 それでも使役者は微笑を、戦死者は真顔を保って、MCの話を聞こうとしていた。

(奴らがいけないのですわ。奴らがいけないのですわ。奴らがいけないのですわ……)

 彼らの誹謗中傷のつるべ落としをかき消すように、使役者は胸の内でこの言葉を繰り返し続けた。


 ちなみに、もう一方のチーム――レンチンパスタチームは、このイベントホールの外にいた。

 彼らは三人並んで一つのベンチに座り、頭を抱えるようにうつむいていた。


「まさか全敗しちまうとはな……あれだけ練習したのというのに……」と、帰還者ボロネーゼ

「しかも誰が悪いというわけでもなく、純粋な実力差で負けちまうなんてよォ~~! どうベンヤミンに報告すりゃあいいんだこれ……」と、首謀者イカスミ

「もう、僕は当分あの人形は見たくないよ……やはりおもちゃはボードゲームに限る……」と、簒奪者(高菜明太)はぼやいた。


 そして三人は同時に、ため息をついた。

 なお、彼らはこの時点で優勝者が誰で、今どうなっているのかを知らなかった。


【完】


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