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4Iワールドエンフォーサーズ 〜最強アク役チーム、腐り果てた異世界を罰する〜  作者: 都P
WORLD4 ロボットトイの臨界点的理想郷『ペルフェロイド』
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W4-10 ステップ3:大会での実戦

 練習、ペルフェロイドの微調整、練習、ペルフェロイドの微調整……

 このローテーションを繰り返し、4Iワールドエンフォーサーズの約二週間は、あっという間に終わった。


 今の時点で出来ることは、コーチ兼メカニックのベンヤミンも含めて、全員やった。

 後は本番で、百パーセントの実力を発揮して、そして勝つだけだ。


 そんな覚悟を秘めて、六人は世界大会『ペチャップ』の前哨戦となる『ザ・コロッサス』会場のイベントホールについた。

 ここは入口の時点で、決戦にふさわしい剣呑な雰囲気が漂っていた。


 高級車から悠然と降り、ジュラルミンケースを携えて会場内へ行く御曹司。

 入口にあるベンチを台にし、血眼になって自機の最終調整を行うプレイヤー。

 頑張れ! とデカデカと書かれた横断幕を掲げる中高年の集団に手を振る若者。


 ペチャップに参戦する最後の一枠の出場権を勝ち取るため、様々な出自身分のペルフェロイドプレイヤーが、ここに集っていた。


「まるで大作映画のオーディションみたいだな。実際見たことないから知らんが」と、帰還者。


「なんかアタシたちよりも強そうなのがうじゃうじゃいるぞ?」と、脱走者。


「こいつは流石の俺でも勝てるかどうか不安になっちまうな……」と、首謀者は言った。


 使役者は自分のスマホで辺りをこっそり映しながら、

「ものすごいピリついていますけど、本当に勝てますの私たち? というより、ここ来てよかったんですの?」


『勝てるかどうかは後はお前らの頑張り次第だろうが。少なくとも、ここに来るのはいい。ちゃんとIDも登録できているんだから何の問題もないですよ。はい』

 と、使役者のスマホの中にいるベンヤミンは言った。


 未だに当人からちゃんとした説明がされていないが、ベンヤミンはこうしたペルフェクシオン・ソサエティの関係者が集まりやすい場所にいると非常に危険とのこと。

 なので、会場近郊で例のトレーラーを走らせ、オンラインでザ・コロッサスの様子を見守っている。

 根本的な話だと、大会のルールとして『部外者のアドバイスは厳禁』であるため、ベンヤミンは本当にここに来る意味がないのである。


 六人はホール内に入り、入口前以上に殺伐とした空気を吸いながら、受付で到着した旨を登録する。

 すると二チームのリーダー(※勝手にベンヤミンが決めていた)である使役者と帰還者のスマホに、早くも次の対戦カードが表示できるようになった。


 この大会はスイスドロー形式で行われる。

 最悪一回戦で負けても挽回は可能ではあるが、それでも士気の観点からやはり一戦目から景気よく勝ちたいところだ。


 二人はすぐさまスマホでビデオ通話を繋ぎ、ベンヤミンにこれを報告する。

 すると画面の先にいたベンヤミンが、飲んでいたコーラ缶をひっくり返しかけた。


『なんてこった……! ついてなさすぎだろお前!』


「お、お前って、どっちですの!? 私ですの、帰還者ですの?」


『私ですのの方だよ! ごめんよ使役者さん、お前たちの名前、未だに誰がどれだかってリンクしてなくてな……

 えー、でよ。お前たちが戦う相手はな、下手すりゃこの大会の優勝候補だ』


 使役者、脱走者、戦死者らの最初の対戦チームは、『マイソロジー・テック:セカンド』。

 マイソロジー・テックとは、ペルフェクシオン・ソサエティに従属するペルフェロイドの製造会社の一つ。

 このチームは名前からも想像がつく通り、そこが有する二軍チームだ。


 肝心なのがそのリーダーを務める『シグルド=バルムンク=トラディション』という少年。

 彼はベンヤミン曰く、自分が知る中で五指に入るペルフェロイドプレイヤーであり、マイソロジー・テックが抱えるプレイヤーの中では、一番の武闘派と名高い人物であるとされる。


 簒奪者は尋ねる。

「しかし何故そのようなものが、わざわざここにいる? それだけ強いのなら、会社ごとに定められている一枠を彼に渡せばよかろうに……」


『それはいい質問だね。

 まずじれったいかもしれないが、どうしてペチャップは六つもの、関連会社以外の人間でも参加可能な参戦枠を用意しているかの説明をさせてくれよ』


 この六枠を用意している理由は三つある。

 一つ目は、二十六社に二チーム目を用意させるため。

 二つ目は、この少ない六枠を奪い合う様もコンペティションの一部とし、評価に活かすため。

 そして三つ目は、『自分がペチャップに参加できるかもしれない!』という淡い希望を一般市民に抱かせるためだ。


 大会に参加するためのペルフェロイドの購入を促せるのはもちろん、それに向けての訓練を行う専門学校や養成所、大会会場に行くための移動ツアーなどの関連サービスを提供し、さらなる利益をむしり取ることができるのだ。


『ここから本題。シグルドがこの大会にいるのは、恐らくマイソロジー・テックが『確実に二枠目を取るため』だろうね。

 アイツなら、この最後の一枠が天井に吊るされた混沌とした戦場でも、他者の補欠を蹴散らして、夢に酔った平民たちに現実を刻みつけて帰ってこれる。と、上層部が判断して、あえて奴を常設枠に入れなかった……んじゃあないかな?』


「なるほどね。まるで神罰のような存在だ……そのような猛将に勝てる見込みはあるかね、三人とも?」


「あ、ありますわよ! ベンヤミンさんがあれだけ何度もカスタムしてくれた機体がありますもの!」と、使役者はオドオドしながら言って、

「プレイスキルならアタシと戦死者だってスゲーあるんだ! ぬくぬく育った大企業のお坊ちゃんなんかに負けてたままるかってんだ!」と、脱走者は彼女らしく楽観的に威勢を張って、

「……」戦死者は無言であった。


『……まぁ、仮にシグルドに負けても、後の試合で勝ちまくればどうにか切符にこぎつけられなくはないし。簒奪者さんたちのチームもあるから……楽しんでおいで』


「そんなこと言われて楽しめるおバカさんがこの世にいらっしゃいますか!? ベンヤミンさん!?」



 数十分後。

 集まった総勢二百チームに、主催者からの挨拶が聞かされた後、会場内の各所に設置されたジオラマに、各チームは指定に従ってゴチャゴチャと移動していく。


 使役者たちがスマホに送られた情報を元に行ったジオラマには、既に三人組が待機していた。

 三人は、恐らくギリシャ系統の神様の顔を図案化したようなマークが金色で刺繍されたジャケットを揃って着ていた。

 その中央にいる、他のスポーツにでも活かせそうな恵体を持つ、鋭い目つきの少年――シグルドは、向かってくる使役者たちに、

「急げ! 貴様らは勝利が欲しくてここに来たのではないのか!? そうでないなら回れ右してとっとと失せろ!」


「んなわけあるか! ちょっと人混みを避けられなかっただけだっての!」

 三人は大慌てでシグルドたちの前に立ち、相手と同様、ジオラマへのペルフェロイド投下口に、自機をセットする。


 そして間もなく、本大会のジャッジリーダーが全チームの戦闘準備が完了したことを確認して、

「それでは皆様もご一緒に……」


「「「「「「ペルフェロイ、ドーンッ!!!」」」」」」

 と、会場内の全員がお決まりの掛け声を轟かせたのを合図に、投下口にセットされた自機が、草原型のジオラマ内部にスライドインした。


 使役者たちの機体は、見た目こそ十二日前とほぼ変わらないが、各種性能がそれぞれに戦術に適するように改善されたもの。


 対するシグルドの機体は、各種に竜鱗ような意匠が見て取れる、ファンタジーの竜騎士のようなものだった。

 チームメンバーの片方は、頭パーツが竜そのものになっているなど、その要素がより前面に現れたもの。もう片方はいくつかの箱をくっつけたような、重戦車型の機体であった。


「うおらああああ! 先に死にたい奴はどいつだあああ!」

 脱走者はお得意の速攻を決めるべく、脚部のタイヤを高速回転させ、シグルドたちへ迫った。


 メンバーの角張った機体が前に出て、その突進を受け止める。見た目通り、十分に加速していた脱走者機の突進でもビクともしなかった。


 浮遊する使役者機は上から、戦死者は開始地点でしゃがんで、手始めにその角張った機体の狙撃を目論む。


 その最中、二人は杖とライフルの標準を、シグルドたちへ変える。


「これがマイソロジー・テックさんの先端技術だ! 共に来い!」

「はっ、かしこまりました」


 片方のメンバーが操る竜頭の機体――ライドドラゴンが、その場で土下座のような体勢で地面に伏せる。

 背中に生えた翼と、尻尾を展開しサイズアップし、完全に竜の姿になる。


 そして、その背にシグルドの機体が搭乗した状態で翼を振動させ、空中へと羽ばたく。


 こうしてシグルドの機体――テックドラグーンは、まさしくファンタジーに登場する竜騎士のようになった。


「が、合体しやがったアイツ!?」


「違う。ただ乗っただけだ。マイソロジー・テックさんは、ファンタジックなデザインのペルフェロイドの製造をメインとしているが、合体などというフィクション的な技術には頼らない。

 カッコよくて、現実的に強い。それがマイソロジー・テックさんの社訓だ!」


 この形態の強みというのは、一部の行動をどちらかに完全に受け持つことにある。

 ライドドラゴンは飛行移動を、ではテックドラグーンはというと、

「その社訓を思い知れ! まずは貴様だ!」

 ボウガン型のレーザー砲で、敵を狙撃することだ。今、使役者に向けてするように。


「!?」


 使役者はすんでのところで身を翻し、レーザー砲を回避する。

 すかさず使役者も、杖に搭載したレーザー砲で、シグルドたちを撃つ。


 しかしシグルドは自機を急上昇させ、射線を飛び越す。あっさりとあちらも回避してみせた。


 戦死者はあちこちを動き回り、様々な角度から銃撃する。

 流石は戦死者といったところか。こちらは六割以上の確率で飛び回るシグルドたちに命中する。特に、右側の羽へのダメージは重篤なものであった。


「よっし、このまま行けばアイツ、バランス崩して落下するぞ!」

 と、脱走者は角張った機体と自機を格闘させつつ言った。


 するとその矢先、シグルドたちが二機の上から降下してきた。


「お、もう飛行終了……じゃあなさそうだな」


 脱走者はタイヤを回転させ、そこから速やかに撤退する。直後、そこ一帯にライドドラゴンが火炎を放射した。

 そしてシグルドたちは焦土と化した地点に安全に着地する。と、すぐにあの角張った機体が寄ってきて、肩や脚部の箱を開き、ライドドラゴンの破損箇所を新品のパーツに交換した。


 この機体の名前はクーリエ。多機の応急処置と、それに用いる予備バーツを保管するボックスの耐久力を活かし、盾役としての活躍を見込んだペルフェロイドだ。


 応急処置が済んだライドドラゴンは、再び空中へと上昇。その上のテックドラグーンは、地上に来たついでに、脱走者機と戦死者機にボウガンのレーザー弾をばらまいた。


 その上空に、使役者機は素早く回り込み、

「貴方の好き勝手にはさせませんわ!」

 杖に溜めたエネルギーを使い、凄まじい勢いでレーザーを真下に射出する。


「せっかく直したばかりだというのに……」

 シグルドのテックドラグーンは、自分が乗っているライドドラゴンの背中パーツに手を突き刺し、引っ剥がす。

 そのパーツは乗り手のための大盾ともなる。シグルドはこれを真上に掲げ、レーザーの直撃を凌ぎつつ、騎竜とともに前進して、この場から逃れた。


 その先で脱走者が、猛烈な加速をつけて大ジャンプし、シグルドに飛びかかった。

 ところがシグルドがライドドラゴンを一回転させ、脱走者は尻尾に打たれて弾き飛ばされてしまった。


 戦死者はアサルトライフルを連射し、ライドドラゴンを再び撃つ。だが相手は極力、戦死者機から離れるように飛び始めたため、思うように弾丸が当たらなくなった。

 それだけでなく、ここで戦死者は自機の不調を感じ始めた。


 ――銃の反動により、連射後半の弾のブレが激しくなっている。という、銃器を使う上では当たり前のような不調を。


 今まで戦死者は、自分自身が戦うのと同じ配分で銃撃を行い続けていた。ところがそれは、彼の得体のしれない強靭な身体があってこそ実現可能なもの。

 だがそのペースを、たとえベンヤミンが彼の立ち回りを踏まえてカスタムしたものであっても、ペルフェロイドというおもちゃで再現しようとすれば、いくらなんでも支障なく動かせるはずがなかった。


 先の通り、ライドドラゴンは戦死者に最大の警戒を向けているのも相まって、戦死者の命中率は落ちていった。


 乗り手のシグルドは、今一番邪魔に思っている敵機――自分と同じく飛行可能な使役者のペルフェロイドへ狙いを定めた。

 ライドドラゴンが戦死者との距離を保ち続ける間、執拗に彼女めがけてボウガンを撃ちまくるのだ。


「全く、どいつもこいつも私一人を追い詰めて……だが、私は簡単には落とせませんわよ!」

 使役者は今までのトレーニングの成果を活かし、必死にコントローラーのボタンを叩いて、常にギリギリのラインで回避を連続成功させ続ける。

「……ここだ、放射!」

 ところがその途中、使役者が逃げた先めがけ、シグルドの指示の元、ライドドラゴンの口から火炎放射が繰り出された。


 こればかりは使役者も対応できなかった。彼女の機体は炎を浴びながら、ジオラマの壁際にまで追い詰められ、そこで火あぶりにされていく。

 その最中、

「これでも食らって口でも閉じやがれ!」

 脱走者は自チームへの損害を少しでも減らすべく、ライドドラゴンの顎下めがけ拳を突き出し跳躍した。


「断る」

 脱走者機は、またしてもシグルドたちが一回転したことにより振られた尻尾に叩かれた。そしてそれは、LPが残り一割を切りつつある使役者の元にふっとばされた。


「よ、よお、元気か使役者?」


「そんな冗談言ってる場合ですか脱走者さん! このままだと私たち、出鼻をくじかれる羽目になりますわよ!」

 と、使役者は、シグルドたちを杖で指し示すように自機を動かしつつ言った。


「けどどうやってアイツら倒すんだよ。羽をへし折って落としてやろうとか考えてたけど、アイツがいるし……」

 脱走者は、反対側で、戦死者を狙撃に集中させないようにしている敵機クーリエを指差す。


「そういえばあの方もいらっしゃいましたわね……はぁ、あの竜騎士コンビもさることながら、何という連携プレーが達者なチームでしょうか……」


「クッソー、アタシらにもああいう合体ができれば……」

 と、脱走者は自機の体勢を正しつつぼやいた。


「だから合体ではない! ただ乗っているだけだ!」

 その刹那、相手のシグルドが怒号を浴びせて来て、


「はいっ、サーセンした!」

 反射的に謝罪してしまった。


(なぜ謝るのです脱走者さん。というより、どうしてそこまで合体ではなくただ乗っているだけなことをアピールするのでしょうか、シグルドさん……ん、待ってくださいまし!?)

 ここで使役者は一つ、妙案を思いついた。


「脱走者さん! もう一度あの竜騎士に突撃できますか?」


【完】

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