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4Iワールドエンフォーサーズ 〜最強アク役チーム、腐り果てた異世界を罰する〜  作者: 都P
WORLD3 正義のヒーローの継続地『リアセリアル』
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W3-9 独断行動の結果

 登境、初表区のとある路地にて。


 周りではジャッジメント・クランと怪人たちの激戦が繰り広げられている中、帰還者はジャッジメント・クランの一員であるレイトに遭遇した。


 レイトは、ベクトルの糸により壁に突き刺さった剣をどうにか引き抜き、帰還者に切先を向け直す。


「もう一度聞くぞ。お前は……禊月レイトだったか? どうして俺のところに来た?」


「いちいち言わなくてもわかるだろ。これが答えだッ!」

 レイトは剣を両手で握りしめ、踏み込みと同時に帰還者へ刺突を繰り出した。


 帰還者は目前にベクトルの糸を張った。するとレイトの剣は九十度向きを変えて、再び壁に突き刺さった。


「ああそうか。すまんな察しが悪くて。だが、かくいうお前もどうなんだ? 一分も経ってないのに同じ妨害に引っかかるなんて」


 レイトは壁に片足を置いて、力を込めて剣を引き抜く。

 そこから踵を返し、下段の構えを取る。先程の煽りを食らったのも相まって、そこから放たれる殺気はますます鋭くなっている。


「次はそうはいかない……はぁッ!」

 レイトは両足に力を込め、腰を低くし、瞬間的に帰還者の懐に飛び込み、

「【忌焔万浄】ッ!」

 燃えたぎる刃を、右下から左上へ、豪快に振り上げる。


 そして彼は、近くの建物にあった袖看板を焼き切った。


 ベクトルの糸により、瞬く間に五メートルほど持ち上げられたレイトを見上げ、彼の三度目の失敗を鼻で笑った。

「お、下ろせ、この野郎!」


「じゃあ次の質問に答えろ。どういう理由で俺に攻撃を仕掛ける。今のところは同じフォービドゥン王国だかの敵と戦う同業者だろ?

 まさかだが、お前たちはこの仕事を独占したいのか? それとも、よっぽどインディーズの自警団が存在感を出すのが許せないのか?」


 レイトは目を見開いて答えた。

「ああそうだ!」


「どっちの『そうだ』だ?」


「後の方だ! 昨日の件でネット上で俺のアンチコメントが増えた。『いつまで経っても成長しない』とか『アトゥン師匠の足を引っ張ってる』とか。

 けど、これは百歩譲って耐えられる。いつものことだし、俺だって自分がまだ一人前だと思ってないから。

 俺が昨日から許せなかったのは、『ボーンさんとかいう人たちのほうが活躍している』とか、『JCに贔屓されてる人が自警団に負けて恥ずかしくないの?』とか、れっきとしたジャッジメント・クランのエース隊員である俺を、一般人以下だと見下している書き込みだ!

 さらにはジャッジメント・クラン公認の人気隊員ランキングサイトで、今までどうにか十八位をキープしていたのに、昨日の結果を受けて低評価を押されまくって十九位に落ちた!

 挙句の果てには母さんから今日の朝にメッセージが来て、『実家に帰って来たらどうだ』と言われた!

 どう責任を取ってくれるんだテメェ!」


「知るかクソッタレ! ああ、クソッタレは言いすぎかもな。スマン。

 そんなネットの声だの、不特定多数からの評価だなんて気にするな。ああいうのは大なり小なり現実で出せないドス黒い感情を抱えてたり、人気の何かを一緒になって旗印にして、それを元に他の連中を見下してるだけのしょうもない奴らなんだぞ。

 そういうひどいことを現実だろうとネットだろうと、外部に出すやつの方がおかしいんだ。そんな人の話なんか聞かず、自分の気持ちを大切にしやがれ。

 俺を見習え。周りの大絶賛の声に屈さず、『インターステラー』が大嫌いだと言える俺をよ」


「見習うものか……俺のお株を平気で奪った、こんな訳のわからん力を使う、真っ向勝負をしないポッと出のキャラなんかに!」


「え、真っ向勝負をしたいって? わかった。じゃあ少し譲歩してやるよ」

 と、言った瞬間、レイトは地面に足をつけた。帰還者が糸に込められたベクトルを逆方向にしたのだ。


 高度を一緒にしたところで、帰還者は特定こそ難しいがいずれかの格闘技のファイティングポーズを取り、レイトを誘う。

「おら、かかってきやがれ。俺が特殊能力一辺倒じゃないってことを教えてやる」


「……遊んでるんじゃないッ!」


 レイトは帰還者に突撃し、上段に構えた剣を振り下ろしてくる。

 帰還者は剣を持つレイトの右腕を左手で受け止め、これ以上振り下ろせないように固定したところで、右足でローキックを放つ。

 この蹴りの衝撃で体幹が揺らぎ、若干前のめりになったところで、レイトの右腕から左手を離し、間髪を入れず彼の首にラリアットを食らわせ、アスファルトの地面へ仰向けに叩きつける。


 ジャッジメント・クランに属している以上、こうした事態にもレイトは冷静に対処していた。

 可能な限り受け身を取っていた彼は、速やかに立ち上がる。


 だが、ここは帰還者が一歩先を行った。レイトが片足立ちにまで体勢を直し、剣を拾おうとしたタイミングで、彼の後頭部に前蹴りを打ち込んだのである。

 この衝撃でレイトは前に吹っ飛ぶ。

 その先で、いつのまにか、もはやロープと言った方が適切だと思うほどの太い黄金の糸が二本が、地面と間隔をとって、空間上に張られていた。

 レイトはその下の糸に自ずと上半身からもたれかかる。この糸にはベクトルがかかっておらず、どこかへ引っ張られることはなかった。


 レイトがその糸にかかったのを合図に、帰還者は助走をつけて、レイトの背後から接近。

 張っておいた二本の糸を掴むと同時にジャンプし、身体を横にして糸の間をくぐり抜けるように回転。

 勢いのまま、下の糸によりかかっていたレイトの顔面を両足で蹴りつけた。


 レイトは再び仰向けに倒れる。このトリッキーな攻撃には受け身が間に合わず、背中と頭の苦痛に顔を歪ませていた。

 そんなレイトを帰還者は、上の糸に立って軽く見下した後、そこから跳躍し、己の巨体をレイトに重く叩きつけた。


 肺の空気を無理くり押し出した鈍い叫び声を聞いた後、帰還者は身体を転がし、スムーズに立ち上がる。

 そして腹部を押さえてうずくまるレイトを、上から見下ろし続けた。


「ほらほら、さっさと起き上がれよお前」


「……な、何故攻撃の手を緩める……」


「このまま続けたらお前なんか簡単に殺せちまうぜ。それじゃあ俺も困るんだよそれじゃあ。

 詳しくは言えないが、俺には『自警団』としての使命ってものがあるんだ。今お前を殺したら、それがパァになっちまう。

 だから早く立て、俺がポケットの中のスマホを出して、お前のその無様な姿をネットに公開する気分になる前によ」


「こ、このクソおっさんが……!」



 一方その頃。同じく初表区の歓楽街の前にある、大規模な交差点にて。

 ジャッジメント・クランの兵隊たちと最上位の戦士、アトゥン、それと簒奪者が入り混じり、この一帯を荒らしていた怪人の軍勢を片付けていた。


 簒奪者は目前にいた怪人に、氷の剣を突きたて押し飛ばした後、

「そろそろ疲れてきたよ」

 たまたま近くにあった屋根付きバス停の、二つの肘掛けで三等分に座席が区切られたベンチの真ん中に腰掛けた。


 それを発砲の最中に一瞥したアトゥンは、

「自警団らしい一面がまた一つ見えて助かった」

 と、皮肉をつぶやいた。


 簒奪者が弱っている。と、見た怪人たちがぞろぞろと、彼女のいるバス停に向かっていく。


 その光景を見渡して、簒奪者は自信満々に微笑んで、

「すまないね君たち、僕は今疲れているんだ」

 両横にあった肘掛けを力ずくでもいで、氷の刃を纏わせて同時に投げる。


 額にそれが突き刺さった怪人二体が倒れていくのを見ながら、簒奪者は言った。

「だからこうした、僕基準では美しくない技で君たちは屈することになるけど? それでも構わないかね?」

 残る怪人たちは構わず突撃し続ける。

「よろしい。ではかかってきたまえ」


 簒奪者はベンチに座ったまま、都度回転しつつ蹴りをお見舞いし、近づいた怪人を返り討ちにしていく。

 終いには、怪人一体蹴り上げ、冷気を纏わせ屋根の裏に貼り付けた後、ベンチに背をつけた状態から連続蹴りをお見舞いし、もろとも粉々にして見せた。


「……とても休憩中とは思えない立ち回りだな」


「だろう? 助かったかね、僕の片鱗をまた一つ見れて」

 と、簒奪者はベンチに頬杖をついて横になったまま、アトゥンへ返した。


 アトゥンは何も聞かなかったと自分に言い聞かせ、自分の戦闘に集中する。

 その最中、アトゥンの元に自軍兵士が駆け寄って、

「失礼しますアトゥンさん! ただいま上空のヘリ部隊から寄せられた情報です! ここから約四百メートル離れた路地で、レイトさん例の自警団のメンバーと交戦中とのことです!」


 アトゥンと簒奪者、二人は同時に驚いた。

「何だと!?」

「何だって!?」


「曰く、二人の勝負は互角に見えるとのことですが……いかが致しましょうか!?」


「是非もない。誰があんな尻の青い少年と互角の勝負に陥っているのか知らないが、ここは自分自身の目で確かめねば!」

 簒奪者はただちにベンチから離れ、背中に氷の翼を生やし始める。


 一方のアトゥンは、

「アイツめ、急に班を外れたと思ったら、優先度を間違えるとは……わかった」

 と、言った直後、口を開いたまま数十秒固まって、

「……はい、任務に集中します」

 報告してくれた兵士を優しくどかし、拳銃を敵勢に向け直した。


「昨日の敵の逡巡のない射殺といい、今の判断といい、ジャッジメント・クランの主義への意識が堅いね。あるいは、『冷徹』だ」


 氷の翼を生やし終え、簒奪者はビルの森の上に飛び立ち、そこからレイトの位置を探る。


「いた。貴方だったのか」

 

 簒奪者に見つかった時、帰還者はレイトを殴り飛ばし、壁に叩きつけているところだった。


「ったく、諦めの悪さだけはヒーローっぽいよな。けど形式上聞く。撤退するなら今だぞ」


「退く、ものか……! これ以上、醜態を晒すわけにはいかない……!」


「やっぱりか。さっき言った通り、俺は殺しはしない。が、全治数ヶ月くらいの大怪我はさせてやるつもりはあるからな」


「だったらやってみやがれ……!」


「いいだろう。なら僕から痛烈な一撃をお見舞いしてやろうか」


 簒奪者は右手から氷の剣を生成し、その刃を左手で撫でて潰す。

 翼を羽ばたかせ、自分の存在を知らせるように風を切る音を大きく立てながら、空中から急降下し、レイトにかざす。


「なんだ、来やがったのか簒奪者!」


 その時、レイトは聞いているものすら悲痛に思える断末魔を放った。

 正中線に走った斬撃から、身体が白い結晶に変わっていき、そして崩れて跡形もなくなった。


 地面に着地し、剣を振り下ろし終えた体勢のままレイトの姿を見て、簒奪者は目を点にした。

 その後ろにいる帰還者も、レイトの突然の死に、虚を突かれ、口をあんぐりさせる。


 しばらくして、帰還者は開けっ放しの口を閉じ、歯を噛みしめる。

 そして帰還者は、簒奪者に憤然として言った。


「なんてことしてくれたんだ簒奪者……まだ殺すところじゃあないだろうが!?」


【完】

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