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4Iワールドエンフォーサーズ 〜最強アク役チーム、腐り果てた異世界を罰する〜  作者: 都P
WORLD1 シンプル末期異世界『ディスパリティNo.0410』
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W1-2 ハッスルヴィラン、三つ巴!

 銀髪の少女はいの一番に、青髪の女性と金髪の男性に聞いた。

「誰だテメーら!」


「僕が問いたいよ、それは」

「それはこっちのセリフだ!」

 そう二人は同時に銀髪の少女に返した。


 その後すぐに二人はお互いの顔を見合い、まず青髪の女性から、

「言わずもがな、君にもだよ。そこの偉丈夫さん」


「それもこっちのセリフだ! ……ほぼな、偉丈夫をクールビューティーと置き換えてだな」


「ほう、見ず知らずの人間に左様な称賛が出来るとはね……こんな寒冬の霊峰の頂よりも白が占める面妖な場にいるのにも関わらず、冷静だね」


「まぁな。ほぼ黒一式の空間には死ぬほど居たことがあるんでな……って待て、お前、遠回しに俺のこと、この異常事態の原因にしようとしていないか?」


「まさか。僕も君の称賛の通り、冷静ではあるよ……まだね」


「ああそうか。で、話を戻すが、誰だお前は?」


「話を思い出してくれたまえ。その問いを先に投げかけたのは僕だ。まだ話を戻しきっていない……」


「ゴチャゴチャグダグダしてんじゃねーぞテメー!」


 そう叫びながら、銀髪の少女は会話中の二人へ接近し、青髪の女性の方へ回し蹴りを放つ。金髪の男性じゃないのはなんとなくである。

 色褪せたジーンズとくたびれたスニーカーが、己の金の双眸に飛び込んで来てすぐ、女性は右腕を振り上げ防御態勢を取ろうとした。


「おせーよ!」

 少女は一瞬、上げた右足を赤く輝かせた後、女性の防御が間に合う前に、相手の顔面に打撃をお見舞いする。


 女性は五回ほど白い地面を転がった後、片手をついてから立ち上がり、

「武芸には自信があったのだがね……どうやら君も、奇術を持つようだね」

 先程の蹴りはなかったかのように、ほくそ笑んだ。


「余裕ぶっこきやがって……!」

 少女は苛立ちながら女性へ駆け寄る。再び右足――いつの間にかジーンズとスニーカが消え失せ、素足になっている――を突き出し、跳び蹴りを放つ。

 ところがその攻撃は女性には届かなかった。少女はまるで真正面から突風が吹いたように空中で押され、そして背中から地面に落下した。


「何二人でやり合ってるんだ。やるなら俺も混ぜやがれ」


 と、金髪の男性は二人の横から、腕組みをした状態で言った。


「嫌だ! テメーはグダグダしねーで早いところ白状しやがれ!」


「白状しろってどれをだ。オレはお前たちにはまだ何もしていない」


「グダグダはしてんだよもう!」

 少女は男性に標準を変え、そちらへ走る。

 ところが少女はまるで男性に近寄れない。彼女はランニングマシンの上にいるように、どれだけ走っても進めずにいた。


「さ、さっきから何なんだ……身体が変な方向に行きやがる……!?」


「おら、やれるもんならさっさと来るんだな。嫌なんだろお前。こういうグダグダは」


「ああそうだよ! じゃあまずこれを何とかしろ!」


「悪いが無理だ。オレはそういう情報公開には慎重な環境で育った者でね。けど代わりに同じくらい有用な情報をくれてやる。背中がお留守だぜ、お嬢ちゃん」


 情報……というより忠告を受けた途端、少女の背中から寒気がした。

 咄嗟に振り向くと、青髪の女性が右拳を自分の背に付き出そうとしている場面があった。


 少女は上半身を右にそらし、紙一重で女性の右拳を避けた。

 ところが間髪を入れず、次の危機が訪れた。瞬く間に女性の右手に、刀が握られており、その青く輝く刃が地面と水平の軌道を描いて、迫ってくるのである。


 少女は自ら仰向けに地面に倒れて、青い残光を見上げた。

 だが青髪の女性は容赦しない。刀を両手で持ち直し、すかさず少女を両断するように振り落としてくるのだ。


「しつけーぞオメー!」

 そう怒鳴りながら、少女は右に身体を転がす。


 これで刀の間合いから外れられる……つもりだった。

 女性は引き続き刀を振り落としてきた。だがその刀は、ついさっきに見たものよりも明らかに刀身が、おおよそ五倍にまで伸びていた。


 これではもういくら転がっても意味はない。それに気づいたときにはもう、刀身はもう間近に迫っていた。


「チッ……結局こうなるのかよ……!」


 そして女性は長刀を振りきった。おおよそ、人一人の厚み分の隙間を空けて。


「どうだい。これで少しは頭を冷やしたかな。名前も知らぬ死に急ぐ花よ」


 この時、金髪の男性は組んだ腕を解き、ふぅと一息つく。

「……なんだ、マジで殺るのかと思った」


 女性は持っていた長刀を霧散させた後に言った。

「まさか。この異様な空間の元凶であるかもしれないのに、その口を永久に塞いでしまうなんて酷いにも程があるじゃな……ッ!?」


「どうし……ウグッ!?」


 女性が長刀を振りかざした先にいるはずだった少女がいないことに気づいた時、彼女は白い地面に突っ伏した。

 それと同時に男性は腹部に重い衝撃を受けて、顔をしかめながら蹲った。


「だからおせーんだよ! オメーら!」

 そして少女は突然のダメージに動揺する二人を、十メートルほど離れた位置から嘲笑った。それも両腕を胸辺りで組み、深い前屈姿勢をしてだ。


 未だに激痛がじんじんと伝わってくる後頭部を抑えながら、女性はかろうじて首を上げつつ声を出す。

「な、何が起こったというんだ……さっきの僅かな時の中で……」


 一方、男性の方はボディに入った衝撃をこらえながら、ゆっくりと上半身を起こし、横目で少女を見る。そして彼は気づく。

「……原因はわからん。だが、どうやらアイツもタダでは済まなかったようだな」


 男性は首を回し、しっかりと少女に焦点を合わせる。

 次の瞬間、銀髪の少女は勢いよく頭を持ち上げ、大きく上半身を反らさせられる。

 その勢いに連動して、服だけでなく腕からも開放された大きい胸が、ふるんと弾力よさそうに揺れた。


「WOW……It's Dynamite……なんか不自然に隠してるなーっと思ったら、まさかこんな機密情報が備わっていたとは」

 と、金髪の男性はまだ僅かに揺れる少女の乳房を、丸くした目で凝視し、


「ほう……まるで数千年に一度の類稀な豊穣の恵みを受けた果実のようだ……」

 と、青髪の女性も、後頭部の痛みを忘れて、右股下部分が丸ごと無いダメージジーンズを除き、一糸まとわぬ半裸体をさらけ出す少女に見惚れた。


 少女はわかりやすく赤面し、何故か通常の角度に戻らない首はさておいて、両腕でこぼれた胸を押しつぶして隠す。

「じ、ジロジロ見てんじゃねーよ! 何が面白いんだ人の身体なんか!」


 金髪の男性は少女を睨む。すると少女は無意識に両手を真横に伸ばす。そして再びこぼれた胸が、潰された反動でぷるぷると揺れる。


「面白い……正確に言うと違うが、ざっと見た感じ、その年でそれだけの発育をした奴は珍しいだろうが」


 青髪の女性は立ち上がってすぐ、滑るように大の字で立つ少女に迫り、成熟した二つの胸の片方に右手で触れる……

「やはり百聞は一見に如かずだ。生命の息吹を独占したような大きさ。獲物を狩る獣のような剛と、すべてを包み込む河のような柔を併せ持ちながらも両者の利点を殺し合わない至高の触感。そしてこの都に狂い咲く花々のような……」


「や、やめろ! そこまで触んなキモ……」


「そこまでだ」

 この、三人の誰でもない声がした途端、三人は両手を腰脇に置き、ピンと背筋を伸ばして直立する。


「……呼ばれて一時間も経たずに勝手な行動を取るとは、悪い意味で流石は異世界の破壊者とでも言っておこうか」


 それから三人は揃って、無意識に同じ方向を見させられた。

 そこにいたのは、糊の利いたスーツ姿の、壮年から初老の間くらいに差し掛かったくらいの、頬骨がやや目立つ男であった。


 隠したくても隠せない膨らみのことを考えないようにしながら、少女は叫ぶ。

「誰だテメーは! ここはどこだ! アタシらは何故こうなっている!」


「質問は一つ一つするのが礼儀だ……と、言いたいところだが、待たせている方々もいるから、今回は大目に見る。

 私は君たちの監視役にして、指示役にして、管理役だ。

 ここは『我々』が所有する多目的異世界だ。

 そしてここに君たちを呼んだのは他でもない、君たちが犯した重罪の処罰のためだ」


「重罪だと……」

「もしかして、そこの少女の扱いについてかな?」


「それもどこかしらの法と照合すれば裁けるかもしれないが、君たちがここにいる原因については、砂粒にも満たない。

 ――『無資格異世界破壊罪』……君たち六人が共通して犯した罪と比べてはな」


「無資格……」

「異世界……」

「破壊罪……?」


「詳しい話は後だ。なんせ、ここからの内容は、今待たせている方々にも話していない。二度も同じ内容を喋るのは面倒なのでな」


 そしてそのスーツ姿の男と、三人はこの位置から姿を消した。


【完】


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