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イシュタルパニック②

自分はイシュタルさんが一番好きです。

絵が描けないのが悔しい(笑)

 その後、なんとなく気まずいような気恥ずかしいような空気になった晃とリエッタは、早々に城に引き返す事にした。

「ふう……」

 と、自分の部屋に戻った晃は大きく息を吐く。

「ったく、ヴァンが変な事言うからなんとなく気まずい感じになっちまったよ」

「――坊やはあの子の事が好きなの?」

「いや、好きかどうかは……わかんないよ。リエッタは年下だし」

「多少の歳の差気にしてどうするの? 全く、意気地のない子ねぇ……」

「ご、ごめんなさい……ってあれ?」

 誰と会話してるんだよ、と横を見た晃は驚きのあまり飛び上がった。

「失礼ね。そこまで驚く事はないじゃない」

 髪を掻き上げ、イシュタルは顔をしかめる。

「お、おまえ……」

 確か、黒き竜の横にいた女。晃が剣の柄に手をかけると、イシュタルはローブを脱ぎ、すたすたとベッドに歩み寄るとその上に腰かけた。

「初めまして……よね? 私はイシュタル。……坊やの名前は?」

「……晃」

 晃が剣に手をかけたまま名乗ると、イシュタルはふぅとため息をつく。

「じゃあ、アキラ。私は別にあなたと戦いに来たわけじゃないのよ」

「なら……なんでここにいるんだよ? 大方、あいつに俺を抹殺するように頼まれたんだろ?」

「あいつ? ああ、エレティコスね。……別に、命令なんてされてないわ」

 イシュタルは膝を折って片足をベッドの上に乗せると、膝に顎を乗せた。

「私は自分の意思で来たのよ。坊やと話がしたくてね」

 ま、座りなさいなと自分の横をぽんぽんと叩く。

「俺と、話? あいつの部下のお前が?」

「そ。と、言うか別に私はあの人の部下って訳じゃないのよ。そりゃ、私の先祖はそうだったかもしれないけど、いきなり現れて『我に仕えよ』とか言われてもねぇ……」

 イシュタルは目を細め笑った。

「とりあえず、断ると殺されちゃいそうな雰囲気だったから従ってたけど……なんか外の世界って面白そうで。あんなつまんない所、帰る気なくなっちゃった」

「ふ、ふぅん……」

 まるで殺気のないイシュタルの言動に冷静になった晃は、顔を赤らめ視線を彼方此方に飛ばしていた。

 落ち着いてよく見れば、イシュタルはリエッタやエレネと違い胸が大きくて……なんというか綺麗なお姉さんと言う感じだ。

 褐色の肌と銀色の髪が妙にエキゾチックで神秘的だし、人を見下しているようにも見える切れ長の瞳もなんとなく心を騒がせる。

 そんな彼女の服装はと言えば、胸と局部を申し訳程度に布で隠した、それ服じゃなくて下着だろ!? と突っ込みたくなる代物なのだ。

「あ、あのさ……」

 耐えきれなくなり、晃はローブを指差した。

「と、とりあえずそれ……着てくれない?」

「うん?」

 イシュタルは指されたローブを見て、次に顔を赤くしてこちらを見ないようにしている晃をみやると、悪戯っぽく笑った。

「なぜ?」

 意地悪く尋ねてみる。

「なんでって……お前、そんな格好で恥ずかしくないのかよ?!」

「私は別に。……恥ずかしがってるのは坊やでしょ?」

「いや、俺は別に……」

「じゃあ、こっちへいらっしゃいな」

 動揺する晃をみて、イシュタルは楽しそうに笑うと、横に置いたローブを手に取った。

「ほら、これで良いでしょう?」

「あ、ああ……」

 なんかこいつのペースにはめられてるな……晃はそんな自分を情けなく思いつつも勇気を振り絞り、イシュタルの横へ腰かけた。

 フワ……と甘い香りが鼻をつき、思わず気絶してしまいそうになる。

 それを見て笑うイシュタル。

 ふと、真面目な表情になると、

「ねぇ、坊やはなんで戦ってるの?」

 そう尋ねた。

「なんで……って?」

「だってそうじゃない? あなたはたまたま剣の使い手に選ばれたと言うだけ。それなのになぜ命をかけて戦うの?」

「いや、そう言われても……」

「エレティコスになにか恨みでも?」

「いや……」

 返答に困り、晃はうーむと唸る。

 そう言えば、なんとなくここまで来てしまったが、良く考えればただ剣を持ったと言うだけの自分が命を賭して戦うというのも妙な話だ。

「理由はないの? とんだお人好しね」

「いや……」

 晃の頭に先生をはじめ、リエッタやエレネ、ヴォルフの顔が思い浮かんだ。

「最初は、確かになにも考えてなかった。ただなんとなく流されるままにここまできたんだ。でも、今は……守りたい」

「守りたい?」

「ああ。友達って言うか、死んだら嫌な奴ができたから。俺が戦わなかったら、そいつらが死ぬかもしれない」

「……だから、戦うの? 死ぬかもしれないのに?」

「まあ……俺だって怖いし、もし力がなかったら絶対嫌だとおもうけど、今は力があるから」

「ふーん」

 イシュタルはベッドの上にあおむけに寝転がると、

「そんなものかしらね」

 小さな声で言った。

「私には分からないわ」

「お前は……守りたい人とかいないの?」

 晃が尋ねると、イシュタルは眉根を寄せ、晃を見上げた。

「私が育った場所は、筋肉馬鹿とか気持ち悪いのばっかりで、話したいと思うような奴がいなかったし。毎日毎日、動物みたいに食べては寝ての繰り返し」

 そう言って笑い声を上げる。

「だから、守りたい人はいないわ」

「そっか……」

 なんとなく、聞いてはいけない事を聞いてしまったような気がして晃は天井を見上げた。

「こんなに長く誰かと喋ったのも初めて。楽しかったわアキラ」

「そりゃ良かった」

「もしかしたら……」

 イシュタルは微笑むと手を伸ばし、晃の手を握った。

「っ?!」

「あなたなら、守りたい人になるかもね」

「は、はは……」

 心臓が早鐘のように脈打ち、思わず顔を引きつらせる晃。

「もし、この戦いが終わってお互い生きていたら……また会いましょう」

「あ、ああ」

「……約束よ」

 イシュタルはそう言って笑うと、体を起こした。

「それじゃ、私はそろそろ行くわね」

 どこか遠い所に逃げるわ、と言ってイシュタルが立ちあがったその時、

――コンコン

 ドアをノックする音が響いた。

「アキラ? いる?」

 次いでエレネの声が聞こえてくる。

(――そういえば鍵しめてない!)

 晃は心臓が凍ったような感覚を覚えた。

「あらら、まずいわね」

 と、イシュタル。

「と、とりあえずベッドの下に潜って!」

 晃は少し嫌な顔をしているイシュタルを促し、半ば無理やりベッドの下に潜らせた。

「あ、鍵開いてる」

 イシュタルがベッドの下に潜るのとほぼ同時に、エレネが扉を開け部屋に入ってくる。

「なんだ、いるじゃない」

 エレネは腕組みをし、眉根をよせると、

「返事位しなさいよね」と抗議した。

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