ヴァン
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「失礼じゃないですか!」
主の許可も取らず部屋へ入ってきた男にエレネが抗議した。
本を読んでいた先生をはじめとして全員が立ち上がり、男に視線を注いでいる。
「まー、いいじゃないか」
男は皆の視線を気にすることなく扉を閉めると、エレネに歩み寄った。
「あんたかい、変わった話しが聞きたいっていうのは」
「あなたは?」
眉根を寄せながらエレネが名乗るよう求めると、男は軽く一礼し、
「これは失礼。私、宿の主人に頼まれここにはせ参じたヴァン・レバンスと申します。あんたの名前は?」
「……エレネ」
「そうか、エレネ。見た所、君たちは普通じゃないな」
「どう言う意味です?」
みたまんまの意味さ、と男は答えドカッと椅子に腰かけた。
「君たちはどう見ても金持ちとその使用人って感じじゃない。何が目的だ? どこへ行く?」
「それを聞いてどうするつもり?」
エレネは腕組みをし、早くでていけと言わんばかりに男を睨んだ。
しかし、男は全く気にしていない様子で歯を見せて笑うと、
「それがわからなきゃ情報の提供のしようがないじゃないか。俺は風来坊でね。いろんな場所を回ってるし、そのおかげで様々な情報を持ってる。君達はどんな情報を聞きたい?」
許可を求めるようにエレネが先生をみやり、先生は静かに頷いた。
「私達は訳あって……サハトを目指している途中なの。なにかしらない?」
「サハト?」
男は怪訝な顔をした。
「やはり普通じゃないな。あんな場所へ行こうなんて奴がいるとは」
「……知ってるの? 知らないの?」
イライラした様子でエレネがそう言うと、男は「知ってるよ」と急に真面目な顔で答えた。
「だが、今はやめた方がいい」
「なんで?」
「なんだか、訳のわからん連中が南から攻め上がってきているらしい。俺も、ルイーダに妹がいてね、心配だから様子を見に行く所なんだ」
アデーレという名前で顔は良いがお固くて彼氏の一人もできない、と言うヴァンの話をもはや誰も聞いていなかった。
「先生……」
と、若干青ざめた顔のエレネが先生をみる。
先生は顎を手で掴むと、
「どうやら、まずい事になったね」
そう言ってうーむと唸った。
「それで俺が笑ったら妹が……って誰も聞いてないな」
話の途中で、自分を無視して話し合いを開始している一同に気付いたヴァンが苦笑を洩らす。
「おい、おいってば!」
「何よ!」
若干キレ気味で応じたエレネに、
「どうだい? とりあえずルイーダが堕ちたって話は聞かないし、俺と一緒にルイーダに行かないか? そこでまた色々考えりゃあいいじゃないか」
「なんであんたと一緒に……」
「お前ら面白そうだからさ。ま、そうツンケンしなさんなよ」
ヴァンはそう言って笑うとエレネの肩をポンポン叩いた。
「あんたがたも、別にいいだろ?」
有無を言わせぬ勢いのヴァンに、晃達は顔を見合わせ、
「ま、まあいいんじゃないの……?」
何故か全員から意見を求めるような視線を受けた晃はそう言って首をかしげた。
ノーと言えない日本人……と、心の中で自虐する。
「んじゃ、決まりな!」
ヴァンはヨロシク、と言って手を上げた。