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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第54話 次なる街

「ジジイ、貴様らのために言っておく。この村を放棄しろ」


 騎士団が滞在してから数日後、ユトゥスは頑張って元の日常に戻そうとする村人達を見ながら村長に言った。

 そのことに村長は静かに聞き返す。


「......どうしてじゃ?」


「わかってるクセに言わせんな、ジジイ。

 俺の落ち度だが、ここはもう騎士団に見つけられた場所だ。

 となれば、ここに再び騎士団が襲撃にやってくるのも時間の問題だ」


「......」


「仮にここで騎士団を全員殺せたとしても、そのことに気付いた別の騎士団がここにやってくるだろう。

 そうなれば、騎士団を倒した相手がいるとなり、今度はもっと強力な奴が来る。

 あいにく俺達も目的があって長居するわけじゃない。だから、放棄しろ」


 そんな口から出た言葉にユトゥス自身が気まずい気分になった。そして、思うことはこの言葉遣い。

 あの......ブラックリリー? もっと柔らかい言い方あったんじゃない?


『ねぇ、なんでアタシが気を遣わなきゃならねぇ。キヒヒヒ、諦めるこったな』


 さいですか。


「まぁ、なんとなくわかっていたがな。ハッキリ言ってくれてくれて感謝する。

 これだけの被害で済んだのはお主達がいてくれたおかげじゃ。本当にありがとう」


「やめろ。全部を救えたわけじゃねぇ。まだまだ未熟な証だ」


「高尚な夢じゃな。陰ながら応援している」


「明日には出発する。言っておくが余計なことはするなよ。

 見送りの宴はなしだ。ただでさえこれだけの被害だ。食料は貴重、大切にしろ」


「ほっほっほ、読まれていたか。しかし、恩人に何もせんというのはな」


「気持ちだけでいい」


 ユトゥスは顎に手を当て少し考える。

 そして、思い付いた要望を告げた。


「なら、今度俺が訪れる時には今度こそ襲われない、襲われても無事な最強無敵の村を作り上げろ。

 そして、その時に俺達に盛大に振る舞え。それが俺からの貴様らへの要望だ」


「それはそれは、なんという無謀な夢。しかし、恩人の願いとなればいいだろう。

 必ずや我らの安住の地を守り切って見せる。約束じゃ」


「違うな。やれという命令だ」


「ほっほっほ、これは手厳しい」


―――翌日


 ユトゥスが目を覚ますと自分の両手両足からたくさんの熱源を感じた。

 それは、現在、彼の周りにはたくさんの子供達が一緒になって寝ているからだ。


 というのも、昨日、ユトゥスが別れの挨拶のために村人達を訪ね回っていると、それを聞きつけた子供達に「行かないで」と泣きつかれたのだ。

 しかし、ユトゥスとて目的があってその願いを聞き入れることはできない。

 ならばせめてもと、子供達と一緒に寝ることになったのだ。


「......暑い」


 それは子供達が離れまいと抱き枕を抱くようにくっついているせいもあるが、それ以上に一番幅を利かせて左半身を独占しているフィラミアのせいである。

 フィラミア(この人物)に限っては抱き着かれる理由が皆無だ。暑い、放せ。


 そんな時間を軽く1時間と少し耐えたところで、フィラミアや子供達が起床し、ようやく膨大な熱量から解放された。

 「離れちゃや!」という幼年男児や少しませた少女に抵抗されながら出発の準備を済ませ、ユトゥスは外に出て門に向かう。

 すると、そこでは村人全員が見送りに来てくれた。


「盛大な見送りだな」


「嫌いかの?」


「ふっ、愚問だな。俺の出立にふさわしい。じゃあな貴様ら、ここでの生活悪くなかったぞ。

 また会いに来るまでせいぜいくたばるなよ」


「お世話になりました。お土産話いっぱい持ってまた会いましょう」


 村人達に大きく手を振られ、だんだんと小さくなる彼らを見ながら同じく手を振り返すユトゥスとフィラミア。

 そして、その姿が豆粒ほどの大きさまでになったところで、ユトゥスは次なる目的地について話し始めた。


「フィラミア、貴様には昨晩少し話したと思うが、これからここから一番近くの町に向かう。

 ただし、俺がかつていたハズバードとは別の街だ」


「確か、その街の近くの迷宮で再構築(リメイク)が起きたんですよね」


「あぁ、その迷宮はかなりの難易度だが、迷宮難易度が高いほど素材もお宝の価値も高い。

 故に、その街には迷宮を攻略せんと高ランクパーティでひしめきあっている。

 俺達のような異端の存在にはあまりにも生きづらい場所だ」


 加えて、きっとあの場所にはまだ自分の誇らしき仲間達“満点星団”もいるだろう。

 となれば、こんな姿で会うのは避けたい。最悪戦闘にもなるだろうから。


「目指すは二番目に近いアウドレッド。ただし、ハズバードと同じ剣王国の領土だ。注意しろ」


*****


―――とある洞穴


 そこには男女三人組の魔族の姿があった。

 その名はアルミル、ガッテル、バイザス。

 かつてユトゥスと戦った際にコテンパンにやられた三人組だ。

 加えて、ヘルスパイダーに助けられたこともある。


 そんな彼らは緊張の面持ちで囲うような形で真ん中に置かれた水晶を見ている。

 そして、誰に言われずとも跪いた姿勢を取っていた。

 やがて定期報告の時間がやってきて、水晶から男の声が聞こえてきた。


「斥候班。定期報告の時間だ。お前達に与えていた任務は剣王国領土の街ハズバードの偵察。そこで得た情報を報告しろ」


 その言葉に答えたのは意外にもリーダーをやっているアルミルであった。


「はっ、私達斥候班はハズバード近くの森で冒険者のレベルを調査していました。

 冒険者レベルは概ね20~30前後。挙兵すれば問題なく街を落とせるレベルだと思われます。

 ただ、その情報収集の道中で思わぬアクシデントに遭遇しました」


「なんだ?」


「迷宮再構築です。ハズバード近傍に位置する迷宮の一つが再構築が起き、情報を集めましたところAランクの迷宮となったそうです。

 その影響で他の街から再構築された迷宮を攻略せんと高ランクの冒険者が集っているようです。

 そのため、高ランク迷宮の攻略期間も考えれば、ハズバードからの攻略は相当先の話となり、事実上不可能と思われます」


「なんと間の悪い......しかし、迷宮の再構築サイクルまでは読めんか。わかった。報告は以上か?」


「以上――」


「ちょっと待ってください!」


 アルミルが自然流れで話を閉めようとしたところで、ガッテルが勢いよく話に割り込んだ。


「アルミル、まだアレ話してないだろ?」


「アレ......? あー、アレね。うん、さすがに言わなきゃ不味いかぁ」


「どうした?」


「実は――」


 そこでアルミルはユトゥスの名前を伏せつつも、特殊な人間に接触したことを話した。

 すると当然、水晶からは驚きの声が上がった。


「それは本当か!? 白髪の人間が王家と同じ赤い瞳を持っていたというのは!?

 その男と接触したんだろ!? なぜ捕えない!?」


「その......冒険者と交戦中に突然ヘルスパイダーが乱入してきまして。

 その時に死にかけた私達を助けてくれたのがその人間で、ボロボロだったため追いかけることはできませんでした」


 ということにした。部分的に話を端折っているが嘘はついていない。

 これでもアルミルは義理堅い女。借りは必ず返す。


「そうか......なら、その男の情報も集めることも任務に加える。

 並びに、ハズバードでの情報収集は現時点で終了とし、アウドレッドにいる斥候班と合流しろ。

 どうやら例の貴人と話で動きがありそうだ。以上、報告を終わる。直ちに現場へ迎え!」


「「「はっ!」」」


 水晶から魔力が消えれば、アルミル達はふぅーと息を吐きながら肩の力を抜き、リラックスした体勢になる。

 そして、アルミルは背後に伸びる入り口から差す光の方を向けば、とある人物を思い浮かべた。


「アイツ、何してんのかなぁ......」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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