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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第49話 騎士団の襲撃#9

「それにしても、ユトゥスさんってそんなすごかったんですね。

 そんな人に対して俺は見捨てるような行為をして......」


 サクヤからユトゥスの話を聞いてからトバンは落ち込むように顔を伏せた。

 そんな暗い雰囲気に移行しそうなのを察してバレッタは話を変える。


「そ、そういえば、ユトゥスさんって博識だったことは覚えてます。

 私が掲示板で依頼に出されている魔物について調べてた時、たまたま通りがかったユトゥスさんがさらっと教えてくれた時がありました。

 それに本に書かれていないことも知ってて、そのおかげで助かった依頼もありました」


「兄さんが博識なのは副産物みたいなものだよ。

 職業能力が使えなかった以上、兄さんはどこかで僕達に追いつくしかなかったからね。

 たぶん兄さんなりに考えたのがそういう方向だったんだと思う。

 まぁ、兄さんは根っからの兄気質だから頼られるのが好きだったのもあるだろうけど」


「へぇ~、そうだったんですか」


「だけど、それよりも僕が凄いのは兄さんの感覚の鋭さかな」


 サクヤから飛び出た言葉にコールは首を傾げて聞き返した。


「感覚の鋭さ? 直観が鋭いってことですか?」


「まぁ、似たような感じかな。もっと範囲は広いけど。

 自分に向けられる視線だったり、肌に触れる風の流れだったり、それらで敵の位置を把握したり、動きから攻撃の軌道を予測したりするんだ。

 それに加えて、勉学にも力を入れた結果、目線の位置、足や腕の角度、重心の位置とかそういったところをも取り入れるようになって、さらには他の人よりも力が足りないことを自覚しているせいか剣での立会でも受け流しからのカウンターが凄く上達しちゃって......ハハッ、スキルなしで勝てる日はいつくるのやら」


「なんというか、サクヤさんって他の冒険者に対してもよく褒めますけど、ここまで饒舌に褒めてるところは初めて見た気がします」


「私もです。ユトゥスさん凄すぎません?」


「ってことは、これまでサクヤさんが若干16歳の若さで力に奢らず謙遜するのって......」


「うん、兄さんがいるからね。兄さんが僕の目標なんだ。

 だから、もし何かの形で兄さんの職業が目覚めて、それが戦闘に活かせる職業なら兄さんはきっと大化けするよ」


 *******


 ―――ソルガール村


 とある民家ではボロボロの姿のカマセーヌと余裕の表情をしたユトゥスが対峙していた。

 そして、最初に仕掛けたのはカマセーヌだ。


「斬鉄!」


 強化された肉体を活かし、一気にユトゥスに接近する。

 大振りに構えた剣を振り下ろすが、サッと躱され地面を傷つけるのみ。

 真横には憎き呪い持ちがいる。余裕そうな顔が鼻につく。

 すぐさま剣を振り上げ、斬り上げてやろうとしたがなぜか動かない。

 チラッと下を見れば、剣が踏まれていた。


「本当に力任せばっかりだな」


「ぐぁっ!」


 剣を踏んでいた足が顔面に直撃する。なぜだ?

 死に体となったところにさらに飛んでくるは回し蹴り。

 民家から外へ飛び出し、地面の上を転がっていく。

 なぜ俺が地べたを這いつくばってるんだ?


 軋む体を持ち上げれば、唇からポタポタと血が滴る。

 地面にできた赤いシミを見ては、この状況に困惑と動揺が生まれる。

 一体いつぶりの戦闘での血だろうか。ましてや、接戦どころかボロ負け。

 ふざけるな。俺は魔王を殺した勇者が作った国を守る偉大なる騎士様だぞ!?

 どうして俺がこんな風になっている? なんなんだあの男は?


「興ざめだな。威勢が良かったのは口だけのようだ。

 スキル頼りの力押し。単調過ぎてあくびが出る。

 貴様が使うスキルは当たれば強いだろうな、当たればだが」


「ふん、大きな口を叩くのは弱者の証だぞ」


「なら、間違ってないな。まぁ、まさか俺より弱いとは思わなかったが」


 皮肉も通じない。これではまるで自分の方が弱者みたいじゃないか。

 認めない。そんなことは断じて認めてはならない。

 この気持ちを晴らすには一つしかない。

 あの呪い持ちの男をぶっ殺すことだけ!


「うおおおおぉぉぉぉ!」


 殺す殺す殺す殺す! そうしなければこの気持ちが晴れることはない!

 偉大なる人族でありながら、呪い持ちとして生まれ落ちた生まれながらの弱者に負けるわけにはいかないんだ!

 絶対何か姑息な手段を使っているはずだ! そうに決まっている!


数百の剣閃(アサルトブレイブ)!」


 これまで戦ってきた敵はどれも愚鈍だった。

 だから、一撃の強力剣技でどうにかなった。

 その悪癖がこの戦いでたまたま出てしまったに過ぎない。

 でなければ、こうまでして一方的にダメージを受けるなんてはずがない。


「重い一撃がダメなら手数で攻めればいい!

 これは幾重もの刃が同時にお前を襲う!

 これでお前に勝機はない!」


 身体強化した肉体に加え、一振りで十数の剣が振り下ろされる。

 先程のキメラ娘には手加減したが、この男にはもう手加減する必要はない。

 斬り刻まれて原型すら留めない肉塊へと成り果てろ!


―――キンキンキンキン


「っ!?」


 カマセーヌは目の間に起きる事実を受け止めきれない表情をした。

 な、何が起こっている!? なぜ俺の剣が全ていなされ、避けられている!?

 おかしい! こんなもの......こんなもの認めてたまるか!


「うおおおおぉぉぉぉ!」


 しかし、結果は変わらなかった。

 後ろに下がるユトゥスを追いかけながら、カマセーヌは剣を振り続けスタミナがじりじりと削られる。

 それによって疲労がたまっていくカマセーヌ対して、ユトゥスは汗一つかかずに防ぎ、躱し続ける。


 なぜ、なぜだ!? なぜこんな現実がまかり通る!?

 俺は魔王を倒した偉大なる勇者が作り出した国を守る騎士様だぞ!

 剣王国の騎士は偉大で、強大で、誰もが認める最強の人間の一人である証!

 それが......こんな世界の嫌われ者なんかに攻撃を当てられないなんてあってはならない!


「もういい」


 ユトゥスからその言葉が聞こえた瞬間、前に出した右足が地面に足がつかずにすっぽ抜けた。

 正確には、ユトゥスがしゃがみ込み、踏み込もうとした右足を足払いしたのだ。

 それによって、推進力でカマセーヌの体が前方へと持っていかれ、前のめりになる。


「終わらせる」


 ユトゥスは足払いをした足を上げると、カマセーヌの頭にかかと落としを放った。

 瞬間、カマセーヌは後頭部への衝撃とともに、顔面が地面に急速に近づき、やがて激突。

 その勢いで頭が地面にバウンドする。な、何が起きた?


「がはっ」


 今度は顎下からアッパーカットされたようにカマセーヌの頭が跳ね上がり、全身が宙に浮かぶ。

 バウンドした顔をユトゥスが蹴り上げたのだ。

 そして、そのままバク転で距離を取ったユトゥスからカマセーヌの無防備な体に強烈な一撃が突き刺さる。


「逆転」


「ごっはっ!!」


 カマセーヌの腹部にメリメリとめり込むような腹パン。

 腹部の鎧は先程のユトゥスの蹴りで破壊されており、生身の肉体に彼の筋力値を逆転させた一撃で、カマセーヌは口から血を吐きながら膝を崩した。


「ごふっ.......かはっ.......」


 カランとそばに剣が転がる。

 今まで味わったことのない強烈な痛みに両手でおなかを抑えなければ耐えることができない。

 そのせいで剣が持てない。うぅ、腹は貫通していないようだ。


 口の中に血が広がる。その味のせいで口の中が気持ち悪い。

 なぜ......なぜこんなことに? どうして? どこで間違えた?

 俺は選ばれし人間で、だから亜人を排他し、呪い持ちを殺すのは当然で.......。


 しかし、結果はどうだ? 手も足も出ずに目の前で無様を晒している。

 死ぬ、のか? 俺は死ぬのか? このまま惨めに死ぬのか?

 嫌だ。死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない。


「たす......けて......」


 その言葉に目の前の男は冷酷な目をして言い返した。


「貴様はその言葉に耳を傾けたことがあったか?」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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