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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第47話 騎士団の襲撃#7

 フィラミアとカマセーヌとの戦い。

 フィラミアは動きやすいようにビーストモードへスタイルチェンジさせ戦闘態勢に入る。

 両者ともに武器を構え、第2ラウンドの火蓋が切られた。


 再びカマセーヌから動き出し、目にも止まらぬ速さで眼前へと迫る。

 大振りで振り下ろされた剣に対し、フィラミアはサイドステップで紙一重躱した。

 この大雑把な大振りから来るのは間違いなく振り向き様の切り上げだ。

 そして、相手の方が素早い今、それを躱す術は無い。


「岩昇斬」


 カマセーヌの切り上げに、フィラミアは刹那の時間でチラッと背後を確認する。

 回避は無理。防御はギリ。後ろは民家。超えた先に門と開けた場所がある。

 そう、こんな時こそ主様の言葉を思い出せ。


 ......それはまだフィラミアがユトゥスから訓練を受けている時のこと。

 その時に、ユトゥスから言われた言葉があった。


『フィラミア、もし俺と貴様が離れてた位置にいる時、そして貴様が戦っている相手が自分より強かった時、できるだけ開けた場所に出ろ』


『開けた場所ですか?』


『あぁ、あいにく俺の移動は遅いからな。貴様の援護に行くのに時間がかかる。

 だが、貴様が開けた場所にいるのなら話は別だ。俺には弓がある。援護狙撃が可能だ』


 そして現在、目の前から剣が迫る。それを短剣で受け止めた。

 瞬間、パキッと刃にヒビが入るのを感じる。

 剣の威力に対してこちらの武器が脆弱すぎる。

 下手な打ち合いは避けるべきだろう.....できればの話だが。


「咄嗟に後ろへ跳んで威力を殺したか」


 カマセーヌの一撃でフィラミアは大きく吹き飛び、民家を超えて反対側の通りへと移動した。

 そこからは少し離れた先に門が見え、そこで未だ混戦状態の村人と魔物の姿が確認できる。

 主様(ユトゥス)の姿はまだ確認できない。しかし、この状況、何かが違和感がある。


「よそ見してていいのか!?――数百の剣閃(アサルトブレイブ)


 カマセーヌが肉迫する。一瞬にして間合いを詰められてしまう。

 そして、無数に振り下ろされる太刀筋。

 フィラミアはなんとか精一杯で剣を弾き、致命的な一撃を防いだ。

 キンキンキンと刃がぶつかり合い甲高い音が響き、その度に体は押し込まれ後退させられる。


 危険な攻撃だけを避けた結果、フィラミアの体にはいくつもの細かい切り傷が刻まれた。

 そこから血が流れ、疲労も相まってパフォーマンスはどんどんと低下していく。

 不味い、このままでは押し切られてしまう。

 そして、一分にも満たない時間の中で百以上の剣戟が行われたツケがフィラミアの短剣に回ってきた。


―――パキンッ


 短剣の一本が砕けた。刃の破片が眼前で太陽の光を反射して煌めく。

 直後、その破片の奥にはこの状況を好機とばかりに笑みを浮かべるクズ男(カマセーヌ)が迫る。

 その騎士は頭上に大きく剣を振り被り、そして――


「大裂ざ――っ!?」


 カマセーヌが剣を振り下ろす刹那、丁度二人がいる門の外から一本の矢が奇襲した。

 その矢に対し、カマセーヌは咄嗟に剣の軌道を変え、刃の腹で防御する。

 しかし、その矢の一撃は強力だったのか、よろめきバランスを崩した。

 その隙にフィラミアは距離を取る。


「くっ、何者だ!? 矢が飛んできたのは門の外から。

 だが、あの場所は未だ魔物と畜生どもの争いが続いているはずだ。

 加えて、ここら辺の地形はほぼ平坦。

 まさかあの混戦の隙を縫って攻撃したというのか!?」


 その言葉を聞いてニヤリと笑みが浮かぶ。

 そんな芸当ができる人物は一人しか知らない。

 類稀なる弓の才を持ち、人柄に敬愛でき、支えて落としたいと思う人物。


「それが私の主様ですよ。気づいてますか?

 そろそろある程度ダメージを回復して起き上がってきてもおかしくない騎士達が未だ来ない。

 ましてや、無傷であるはずの弓兵すらも援護射撃をしてこないことに」


「......まさかそれを全てお前の主とやらがやったと言いたいのか?」


「えぇ、その通りです。素人の私から見ても主様の才能には目を見張るものがありますから。

 もうこれであなたは終わりですよ。出来れば主様の手を煩わせず私の手で終わらしたかったですが」


「フィラミア、無駄口を叩くな。貴様は体力回復に専念しろ」


 門の方から声が聞こえた。あの口は悪いけど安心する声が。

 太陽に照らされる銀色の髪、そして女性を惑わす宝石のような深紅の瞳を持つ人物――主様(ユトゥス)だ。

 そして、よく見れば先程まで門の外で行われていた魔物と村人達の戦いが終わっている。

 たった少しの間話していただけ数多の魔物を倒すなんてさすが主様。


「呪いの証である銀髪に、人族では見ない目の色をしているな。それも呪いの影響か。

 まさかお前のような存在がこの地に存在しているとは......畜生どもより度し難い。

 だが、俺は寛大だ。死ぬ前に特別に名前を聞いておいてやろう」


「貴様に名乗る名など無いが......強いて言うなら“弱者の鑑”だ。それも称号付きのな」


「弱者の鑑か。ハッ、言い得て妙だな。

 確かに、貴様から何の脅威も感じない。雑魚のスライムですら存在感を放つのにな。

 貴様のような弱者がよく生きていたものだ。運だけはいいようだ」


「運も実力のうちだ。つまり、それはただの誉め言葉にすぎない。

 それによく見えるだろ? 目の前にいる“弱者の顔が」


「減らず口を。誰からも嫌われるだけあって肝だけは据わっているようだ。

 いいだろう、その首を持って剣王国に帰るとしよう。

 魔族混じりの畜生に加え、まさか呪い子までいるとは.....明日にでも死ぬかのような豪運だな」


 主様とクズ男が煽り合っている。どうしよう、主様がめっちゃカッコいい。

 あの口の悪さがこの場面ではこうにも魅力を引き出してくれるとは。

 くっ、だけど私はまだ負けていない。主様を落とすまではまだ負けられ――


「フィラミア、貴様は他の村人を助けろ。先程狙撃した騎士はまだ動けないはずだ。

 それからここから離れておけ。今からここは戦場になる」


「わかりました。ご武運を!」


 フィラミアはもう少し見ていたい名残惜しさを感じつつ、背を向けて走り出した。


*****


 フィラミアが走り去っていくのを横目に見つつ、ユトゥスは視線を目の前のカマセーヌに戻した。


「随分とあっさり見逃してくれるんだな」


「俺のレベルやスキルを使えば、お前にかける時間など数秒もかからないからな。

 先程の矢の攻撃も所詮まぐれだろう。

 たまたま強い弓を手に入れて強くなったと勘違いしているだけにすぎない」


「ふっ、面白いことを言う。その考えだと思っていると足元をすくわれるぞ?

 弱者が言うのだから聞いておいて損はない。貴様の未来を考えればな」


「弱い犬ほどよく吠えるというが、まさにお前のことを言っているような言葉だな。

 戦いが始まる前からキャンキャンとうるさいものだ。いい加減黙らせるとするか」


「そうだな。俺も貴様との会話に飽きてきた。つまらんからな」


 カマセーヌが武器を構えた。ここからはもう戦いで決着をつけるしかない。

 近接でも戦えるが、相手の出方を見るにはやはり距離を取った方がいいか。

 確か、ポーチの中に作っておいたアレがあったはず。


「それじゃ、始めるか」


「一瞬で終わるがな」


 ユトゥスは左手に隠し持っていた小石をカマセーヌに向かって投げる。

 それは首を傾けるだけで躱されたが、その行動で重要なのは視線の誘導。

 その隙にポーチから取り出したのは煙玉だ。

 すぐさま真下に叩きつけ、周囲に煙幕を張る。


「くっ、煙幕!? 正々堂々と戦え!」


「弓使いが剣士相手にまともに戦り合うわけないだろ。それにこれが弓の間合いだ」


 バックステップして距離を取りながら煙の中にいるカマセーヌを見る。

 あの煙玉は粘着性のあるものを素材にしてるから、多少振り回したところで煙は払えない。

 であれば、こっちからすれば絶好の的だ。


 的が煙に包まれている中、意識を集中させて的の居場所をイメージする。

 風の流れ、振り回した剣による煙の揺らぎ、そして先程の会話で捉えた背丈。

 なら、あの高さぐらいが頭で、あの辺に足があるのか。


「中る」


 弦から手を放す。同時に、放たれた弓は吸い込まれるように煙の中に消えた。

 瞬間、カマセーヌの痛がる声が聞こえてくる。


「ぐあ! 足が!?」


「左太ももに直撃しただろ。鎧の上からも痛いだろうな。

 だが、安心しろ。俺の矢は矢じりが木製で刺さることはない」


 バサッと煙が晴れる。そして、怒りに顔を歪ませたカマセーヌが見えた。


「情けをかけてるつもりか? 先程の攻撃なら矢をばらまいて範囲攻撃する方が得策だ」


「あいにくそのスキルは持ち合わせていない。だが、何も問題ないだろうな」


「口だけは達者だな!」


 カマセーヌが一瞬にして肉薄する。

 速いな、<視力強化>がなければ厳しかったか。

 牽制のために矢を何本か打ってみたが速度低下はなし。

 だけど、今のでどのタイミングで来るか読めた。


「斬鉄!」


 大振りな振り下ろし。サッと横に跳んで避けるよ、地面に剣先がめり込む。

 かなりの一撃だ。レベルも51で伊達にフィラミアが苦戦する相手じゃないだろう。

 しかし、それは結局レベルのごり押しだけだからだろうな。

 で、そこから来るのはきっと薙ぎ払い。


「流岩払い」


 大振りな払い攻撃。連撃による攻撃からして剣の型はあるのだろう。

 だけど、一撃一撃が相手の息の根を止めようとしか考えていない雑な振り。

 うん、もしばらく様子を見るつもりだったけど、もう程度が知れた。


「杭穿ち」


 薙ぎ払いを後ろに下がって避けた先からカマセーヌが突きによる連続攻撃。

 それを弓でガードし直撃を防ぐが、強力な一撃であるため吹き飛ばされ民家の壁を破壊し、内壁に叩きつけられた。


「ふん、所詮は遠距離職業か。他愛ないな」


 あー、うん、あまり大きな言葉を使うつもりはなかったけど......正直、負ける気しないや。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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